064 平穏で幸せな朝の光景
2018. 6. 16
朝六時。いつもより少しゆっくりと起き上がった宗徳は、部屋を見回す。
奥の壁際には二段ベッドが二つ。上の段には灰色の狼の獣人である六歳のユウエンと真っ白い猫の獣人の五歳のセッカが寝ている。
ユウエンの下には熊の獣人の五歳の女の子、シュユがおり、セッカの下には狐の獣人の四歳の女の子、セツナが丸まっている。
そして、ベットから距離を空けて床に宗徳、その隣に日本から召喚されたという勇者のレンヤ。その隣に黒い狼の獣人で三歳の女の子、クオンが寝ている。その向こうが寿子だ。
寝室として使っている一番奥の部屋は、二十畳ほどの広さがある。普通に考えて寝室としては広過ぎるが、今はそれほど広いとは思えない。
二人以上子どもがいたら二段ベッドというのが、宗徳と寿子の中にあるよくわからない常識だった。
だから、当たり前のように部屋入れたのが先日。ギルドの仮眠室にある二段ベッドよりもしっかりとしていて、作りも細かかったりするのだが、誰もここまで確かめに来る者はいないので調子に乗ったとも言う。
それぞれの寝顔を確認して、宗徳は静かに布団から出る。すると、それで気付いたのかレンヤが目を覚ました。
「ん……あ……おはようございます……」
「おう、おはよう。起こしたか?」
「いえ……早く寝たので、睡眠は足りてます。寧ろ、こんなに熟睡するの、ここに来るまでなかったので……」
レンヤは口にはしないが、宗徳には想像できた。知らない世界、知らない土地。子どもが全く知らない人たちと一緒に突然寝起きをしなくてはならないというのは怖いことだろう。
わけもわからず召喚されて、試練を与えられて、その後は邪魔だと命を狙われる日々。ゆっくり眠れるはずがない。
今ここで、安らげると思っているのなら、それを充分に感じて欲しい。それくらい甘えてくれていいのだ。
だから宗徳は起き上がったレンヤの頭を撫でて笑った。
「そうか……なら二度寝しろ。後一、二時間だけどな。ほれ、もう一度目を閉じろ」
「え、あ……はい……」
素直なレンヤは、再び頭を枕に乗せて目を閉じた。それを確認して、宗徳は部屋を静かに出た。
身支度を素早く整える頃、善治から連絡が入った。
『昼頃には帰る』
「おっ『なら王子達はどうする?』」
メッセージを送れば、すぐに返信が来る。返信されてきた文字は、相手の声となって頭に響くので、読まなくても良い。
その上、これの良いところは、携帯電話のメールのように指で文字を打たなくて良いところだ。最近は声に出さなくても、この特殊な腕輪に魔力を込めるようにして言葉を念じれば、それが打ち込まれる使い方をマスターしていた。
『そのままで良い。迎えを出させる』
「『わかった。あと、相談したいことがあるんだが、勇者を召喚した国を知らないか?』」
この際だからと、レンヤのことを話す。
日本人で、召喚された少年。帰ることができず、今は宗徳のところで保護していると伝えた。
『帰ったら会う。上にも報告することになる』
「『帰してやれるか?』」
『身内の調査を先に頼んでおく。もしも、いなければそのまま社で引き取ることになる』
「『わかった。詳しいのは本人にも説明してくれ』」
これで気になっていた問題は何とか伝えることができた。そんな様子を、部屋の入り口で寿子が見ていた。
「もし身内がいなけりゃ、俺らで面倒見るんだからな」
それだけで、寿子は何の話かを察したようだ。
「当たり前です。なるべくこっちで過ごしましょう。それで、少しでも寿命を延ばして、あの子が大人になるまで一緒にいます」
「だな。さてと、メシの前に今日の仕事について下で確認してくらぁ」
決意を確認し、宗徳は張り切って部屋を出て行った。
読んでくださりありがとうございます◎
庇護すべき子どもですから。
次回、土曜23日0時です。
よろしくお願いします◎




