059 灯りさえままならないようで
2018. 4. 28
大口を開けて見上げてくる兵士達を横目に、宗徳はバルコニーから城の中へ入った。
気配を探るがこの部屋には幸い、誰もいなかった。けれど、調度品などを見るに、それなりの身分の者が生活する空間であることは予想できる。
この世界で一般的に使われている灯りはランプだ。少々焦げ臭い。広い部屋全てを照らすこともできず、ここで改めて不便だなと感じた。城ですらこの状況なのかと不憫に思う。
「灯りが揺れるな……電気がねぇもんなぁ……魔術があるんだから、それを使えばいいだろうに」
《くふん》
宗徳達が暮らすあの町では、魔術の灯りによって電気と変わらない状態を作り出している。
竜守城内も、深夜の十二時を過ぎるまでは昼間と変わらない明るさを保っており、地球との違和感はほとんど感じなくなっていた。
因みに、十二時以降も、一階の受付ホールは明るくしたままだ。冒険者に時間など関係ない。二十四時間営業だ。
その上階も、個人の部屋はそれぞれで管理。廊下は豆電球程の淡い光に落としている。
地球では、機械を電気で動かすのが当たり前だ。だから、電気の代わりに魔術を使い、道具を作ろうと思うのは自然な流れで、それが画期的過ぎたのは大きな誤算だった。
少々宗徳達は調子に乗りすぎたのだ。
「まぁ、だから今回みたいなことが起こるのかもしれんがな」
灯りに関して言ってしまえば、開発した道具がむき出しにならないように間接照明にしている。だから、他の誰が見ても仕組みが分からなかったりする。
ただ、間接照明にしたのはそれを狙ったわけではない。魔術で作り出される灯りは、白熱灯よりも強い光を放つ。そのままでは使えなかったのだ。
試行錯誤を繰り返し、部屋の中で絶対的に光が届かない場所ができるなんてことがないように計算して設計したことで、灯りの数は増えてしまったが、それを補って余りある便利さを誇っている。
この部屋で分かるように、ランプでは部屋の隅や所々に暗闇がどうしてもできてしまうのだが、それがないというのは安心できる。
「俺らも現代人の感覚に染まってっからな……こんな世界じゃ、人が潜めそうな暗闇とか不安でしょうがねぇよ」
誰もが剣やナイフなど、刃物を持っていてもおかしくない世界で、部屋の一部に影が落ちるのはどうしても不安だ。
高い隠密能力を持つものだっていると聞く。戦闘に長けた者達も多いのだから、そんな心配も杞憂ということにはならない。
だから、宗徳達は少しでも快適にを心がけた結果、この世界では考えも付かなかった技術革新をあの町で起こしてしまったのだ。そのツケが今回の騒動の発端だろうと予想している。
「それにしても……ここは女っぽい部屋だな。部屋の主がいなくて助かったぜ。さてと、行くか」
《くふっ、くくん》
「おう、あっちだな。階段がありそうだ」
徨流が胴体を宗徳の腕に絡ませたまま、頭だけをその方向へ向ける。宗徳もそちらに人の流れがあると感じて、部屋を出ると薄暗い廊下を進んだ。
善治がいるのは、この一つ上の階だ。そこに向かって兵士達が動いていた。
「っ、お前、何者だ!!」
当然だが、その途中で宗徳を見咎める者達はいる。そんな者達には正直に話して押し通った。
「上に来てる人を迎えに来たんだ。どいてくれ、どれだけ束になったって返り討ちに合うだけだぞ」
「なんだっ、へぶふっ……」
「お、悪りぃ。ってか、手ぐらい付けよ」
手を出すのはマズイと思っているので、兵達には足を引っ掛けるくらいにする。だが、暗いこともあって、彼らは面白いくらいにすっ転び、手を付くこともなく床に顔を吸付けていく。
「……こんな奴らばっかで大丈夫か?」
受け身さえ取れない彼らが心配というわけではなく、こんなレベルの兵しかいないのに、善治に喧嘩を売った王が大丈夫だろうかと思ったのだ。
喧嘩を売るということは、勝算が多少なりともあるということ。どの辺りに勝機があったのか理解できなかった。
そして、碌に抵抗されることもなく、難なくその部屋に辿り着いた。
大きな扉は前回で、中には兵達が転がっている。立っているのは当然善治と、その前にいる少年と少女、それと壮年の男性だけだった。
「あれが王か?」
彼らは完全に顔色を無くしていた。
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次回、土曜5日0時です。
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