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057 仕事は堅実に

2018. 4. 14

男が繰り出した拳は、届かない寸止めだと宗徳には分かった。だから身動きせずに、呆れたように男を見る。


鼻先ギリギリに突き付けられた拳。それを満足げに握り、引き戻すと男はニヤニヤと笑った。


「度胸だけは認めてやるよ。あ〜、それともビビって動けねぇだけか」

「……あんま、キレが良くねぇな。どれ……」


宗徳は面倒くさそうに一歩下がる。それから余分な力を抜き、拳を握った。


「動くなよ」

「はぁ?…….っ!? ふべへっ!?」


男の鼻先へ右の拳が向かう。ほんの数ミリ。そこで止めたのだが、男は風圧で吹っ飛んで行った。


列に並んでいる者達が、迷惑そうにこちらの様子を目だけ動かして伺っていたのだが、さすがに驚いて呆然と振り返っていた。


視線の先には、十メートル近く飛ばされ、転がって行った男の姿。


「ぐふっ……」

「あ〜、悪ぃ。寸止めでも飛ぶんだな。けど、寸止めだからな。顔には当たってねぇだろ?」


あれだけ見事に吹っ飛んだのだ。本来、当たっていたら鼻が砕けていただろう。だが、ヨロヨロと座り込んだ男の顔は凹んだり歪んだりすることもなく、転がった時の擦りむけた傷しかなかった。


「大丈夫か?」


口の横に両手を当てて、遠い場所にいる男に聞こえるように声を張り上げる。


「ひっ!?」


しかし、男は答えることなく、そのまま何度も転びながら逃げるように遠ざかっていく。


「なんだよ……」


男がいれば、暇つぶしになると思ったのだが残念だ。


その時。壁の向こうから大きな音が響いた。高い外壁のせいで見えないが、白い煙が上がっている。


「白なら、悪いものは燃えてねぇな」


黒煙は危ないが、白ならばまぁ良いだろうと、そう警戒することもなく列が進むのを待つ。だが、なぜか門が閉まろうとしていた。


「はぁ!? なんで閉まんだよ!」


宗徳は慌てて列から外れて、門へ駆ける。兵達が門を閉めようとして、先頭の人々と揉み合いになっていた。


「おい! 何で閉めるんだ」

「入れろ!」

「まだ時間じゃねぇだろ!」


商人や旅人、冒険者達が迫っている。これに、兵達が怒鳴り声をあげる。


「緊急事態だ! 我々も城に向かわなくてはならん!」

「明日まで待て!」


先ほどの爆発のような音がした場所へ、彼らも向かおうとしているのだろう。そのためには、ここでの業務を終えなくてはならない。そうは言うが、納得できることではないだろう。


「ここまで来て野宿しろと言うのか!」

「せめて中に入れろ!」


門は二重になっているらしい。内門との間に、それなりのスペースがある。そこにせめて入りたいと思うのは当然だ。


見える場所に森がある。そこには獣達がいるのだ。門が近いとはいえ、外で安心して眠ることはできないだろう。


宗徳は門の所から中を覗き込む。中央の高い場所に城があるらしい。そこから煙が見えた。


「ありゃぁ……」


間違いないと思った。だから、兵達に忠告する。


「お前らがここを放棄して向かった所で、役に立たねぇよ。大人しく業務を続けな」

「なんだと!」

「キサマぁ!」


剣を抜いた兵を軽く足を払って転ばせる。


「ぐっ」

「うっ」

「いいか。あそこにいるのは、俺より強く、その上今かなり頭にキてる人だ。死ぬぞ」

「……」


彼らを威圧しながら言えば、大人しくなる。


「さっさと全員中に入れろ。もちろん俺もな。アレを止めるために来たんだからな。とはいえ、審査は慌てんでいい。大丈夫だ。誰かが殺されるとかはねぇよ」


善治がいくらキレていても、人殺しまではしないはずだ。それより、この機に乗じていい加減な審査により、問題のある者を入れることは避けるべきだろう。


「さぁ、仕事をしろ。慌てず、焦らず、いつも通りに頼むぞ」


そうして十分後、宗徳は王都へ入ったのだ。



読んでくださりありがとうございます◎



緊急事態であっても疎かにしてはいけませんよね。



次回、土曜21日0時です。

よろしくお願いします◎


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