054 信用はしていませんが
2018. 3. 17
約束の八時。時間になったこともあり、レンヤとユウエンの二人が後片付けはやっておくと言うので頼むことにした。
「どれだけかかるか分からんからなぁ……風呂入って、十時までには寝てろよ? お化けが出るからな」
「おばけ〜」
「ちゃんとねる!」
宗徳と寿子は、子ども達に十時には布団に入って寝る事という決まりを作った。本当は九時が良いのだが、人数が多いので風呂に入ったりしていると間に合わない。そこで決めた時間だった。
「レンヤ、ユウエン、それと徨流、留守番頼んだぞ」
「なるべく早く帰って来ますからね」
「はい。任せてください」
「いってらっしゃい」
《くふんっ》
レンヤという頼もしい兄が加わったことで、子ども達に安心して留守を任せられそうだ。
「行ってくる」
「行ってきます」
出かけるとはいえ、同じ建物内だ。そう大したことではないのだが、建物自体が広く、個々で確実に守られる部屋があるということで、外出するという大袈裟な認識になってしまう。
「広く作り過ぎたかな」
「あら、楽しいじゃありませんか。なんだか、デパートの中に職場と自宅があるような感じで、とっても新鮮です」
外を歩かなくても良い上に、仕事の途中ですぐに自宅に帰ることができるのも嬉しい。特に、子ども達の事もあるので、これは本当に理想的だ。
「デパートって……確かに銭湯もあって、各種店も詰め込んだからな……」
この場所は、土地だけはある村だった。冒険者ギルドの支部が置けるほどの人口もおらず、町という大層なものでもない。
だが、善治はギルドマスターとなるには、新たな町を作る必要があった。そこで着手したこの村は、数年で良く発展した。
人数が少なかったからこそ、善治一人でも指導が行き渡り、相談しながら徐々に、そうとは見えない様子で変化していった。
そして、この城が建った。ついでに区画整理もし、一気に町へと変貌を遂げた。そうなると、商業ギルドが必要になってくる。ならば、いっそのこと一つに集約してしまえということで、冒険者ギルドとして建てていた建物の中に商業ギルドを入れてしまった。
お陰で、冒険者ギルドと商業ギルドの関係は密接になり、相乗効果でお互いの仕事がやりやすくなったとそれぞれの職員達は喜んでいる。
新しい町ということもあり、模索しあいながら発展できるのだ。王都からも遠いこんな辺境と呼べる場所に派遣されて来るのは、良くも悪くも変わり者が多い。
職員達は中央で煙たがられた者であったお陰で、ここにとても良く馴染んだ。商業ギルドの者達も、冒険者ギルドの者達も、王都に負けない発展を目指していた。とはいえ、もう既に軽く超えている予感はある。
「現代版の城ですね」
「なんだ? それ」
「城は領主の家ですが、いわばお役所じゃないですか。それを近代風にすれば、こうなるのではないかと思ったんです」
「ははっ、なるほど。確かに、お役所ってほど堅くもなく、デパートや保養所ってほど気楽な場所でもない。まさに現代版だな」
色々と緩くなっている現代。それに合った姿ではあるなと思えてならなかった。
「住みやすい町だしなぁ。まぁ、だから、今回みたいなのが来たんだろうけどな」
「そうですね」
今日、入り込もうとしていた者や、やって来た騎士達。その目的は、おそらく偵察と取り込みだろう。
この世界にはない。目立つ珍しい建物であるこの竜守城もそうだが、住民達の住居もしっかりとしたものだ。当然、米を始め、生活に必要となる食べ物も豊富で、王都よりも物価は当然ながら安い。
「レンヤの問題もある。本当に面倒な事になりそうだ」
執務室の前に着くと、先ず宗徳と寿子は、中の気配を探った。部屋には、呼んでいたはずのあの騎士達の気配はないようだ。
「師匠以外はいませんね。何事もなく帰られたのでしょうか?」
「そんなあっさりした感じには見えなかったが……あ、いや……宿泊用の部屋に居るな」
「え? 監視付きですか?」
「ああ。それも多分、指揮官だけだな。他のは町の宿屋に入れたみたいだ」
「そうですか……」
敵となり得るかもしれない者を町に招き入れたのは不安だが、仮にも国の騎士を入れないということは出来なかったのだろう。とはいえ、見張りは置いているようだ。
何かあったら、すぐに駆けつけようと心に決める。
「信用できねぇからな」
「ええ。先ずは師匠の話を聞きましょう」
「おう」
騎士達に意識を向けたまま、宗徳と寿子は善治の執務室の扉を叩いた。
読んでくださりありがとうございます◎
町はちゃんと守りますよ。
次回、24日0時です。
よろしくお願いします◎




