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035 湖底の底の?

2017. 10. 21

湖の上に浮かんでとぐろを巻くリヴァイアサン。宗徳にはどう見ても龍神のイメージにしか見えない。


宗徳は知らないが、本来リヴァイアサンは、トビウオのように尖った頭をしている。更に、背中には何枚もの羽のようなヒレが付いているはずだ。


しかし、今目の前にいるのはリヴァイアサンの変異種。姿形は日本でも馴染みのある龍神と同じ姿をしていた。当然、ヒレもなく、口も尖ってはいないし、短い手足も付いている。ちなみに長いヒゲのようなものも風になびいていた。


「どう見ても龍神だよな? ん〜、けど黒い……のに光沢がない……墨でもぶっかけられたか?」


鱗にあるはずの光沢はないようで、まさに墨か泥を塗りたくられたように見えた。


『……』


リヴァイアサンはジッと宗徳を見つめている。しかし、ついとその目を湖に向ける。


「なんだ?」


釣られて宗徳も湖に視線を落とすと、湖から黒い霧が湧いてきているのが見えた。


「はぁん? 黒いのはこっから出てんのか? なぁ、リーヤ坊。どうなってっか分かるか?」

「え、あ、あ……え? 湖から……? よく分かりません。湖から霧が発生する事はおかしくはありませんが、この黒いものとなると……何かが湖の中にあるのでしょうか?」


リーヤも見た事がない現象だった。この時、リーヤは混乱と思い付きで『何かが湖の中に』と言ったのだが、宗徳はそういう事もあるのかと真剣に考え、湖を覗き込んだ。


今も発生し続けている黒い霧は、宗徳の風の結界のお陰で外へと排出されていっている。これもまた意図してやったわけではなく、たまたま換気まで考えた結果だった。


「どれ……いっちょ潜ってみるか」

「ええっ!?」


宗徳の行動は早かった。リヴァイアサンの目の前だというのに、なんの警戒もなく防具や服を脱ぐと、下着一枚で湖に飛び込んだのだ。


「ちょっ、ムネノリ殿っ!?」


焦ったのはリーヤだ。だが、リーヤは自分も飛び込むなんて度胸はなかった。ただ少しでも宗徳に近付こうと地面に膝と手を突き、湖を覗き込んでいた。


そして、彼はサッと顔を青ざめ、ゆっくりと頭を上げていく。その首の動きはとてもぎこちない。だって、気付いてしまったのだ。


「ひっ!?」


取り残されたリーヤは、リヴァイアサンに睨まれ固まる事になった。


一方、何の躊躇もなく湖に飛び込んだ宗徳は、便利な魔術があるにも関わらず、水の中へは何の対策もなく潜っていた。


子どもの頃はよく海へも行ったし、素潜りは得意だった。素潜りは、自分の限界を最も簡単に知る事ができるものだ。少しずつ息の止め方や、水の中での動き方などを変えていき、だいたい平均一分間は平気になった。


素潜りは、ただ息を止めるのとはわけが違う。当然、動く事になるのだからそれほど続くものではないのだ。


それなのに一分。結構凄い事だと思う。さすがにもう還暦も過ぎ、肉体の衰えが自覚できるようになった今は半分の三十秒も厳しいかもしれないと思っている。


しかし、今この場で宗徳は二十代の体と、異世界という環境によって、子どもの頃の一分という記録を上回る結果を出す事が可能だ。これまで城を造ったりした感覚で、それは確信が持てた。


(まだまだ余裕だな)


現在、三十秒が経った所だが、間違いなく余裕を感じていた。


だから、それに集中する事にする。


宗徳は、湖の底から湧き出す黒い泡を避けながら下を目指していた。


(やっぱ、普通の霧じゃねぇよな)


霧が発生するのは、水温と外気の関係のはず。水温は冷たいくらいだ。凍えるほどではないにしろ、かなり冷えている。その湖の底から霧の元らしい黒い泡が上がっていく。


(水に溶けてるんじゃねぇな……霧がそのまま泡の中に閉じ込められているだと? そんなもん普通、あり得んだろ……)


そうして、底へ底へと潜ると、黒い底が見えた。


(真っ黒だな……霧が下に溜まって……なんだ?)


宗徳は黒い霧の奥に何か違和感を感じた。


(鑑定してみっか)


水の中でどうしようかとも思ったが、呪文を唱えるわけではないのだ。出来るだろうと思った。そうして、ようやくここで魔術を使えば息が出来るかもしれないと思い至る。


(……最初っから魔術を使って潜りゃよかったな……)


今からでも遅くはないかと気持ちを切り替え、風の膜を作り出す。そして、鑑定の能力を発動させながら、思い切って湖底に降りてみる事にした。


「はぁっ。おっしゃ、息出来る。見てみるか」


とは思ったが、どれくらいの深さなのかが不安で、地上で霧を避けたように風で底までの道を作ってみた。


「お? 案外まだ底が深……いっ!?」


唐突に底へ吸い寄せられる。風の道ができた為に起きた事だった。しかし、宗徳には何がなんだかわからない。


「うおっ!?」


そうして、スコッと耳元で音が聞こえたと思った時には、自身の周りに作っていた風の膜はなくなり、えらく堅い地面に転がっていた。


「……はぁっ!?」


大の字に転がっていた宗徳は、天井を見て目を大きく見開く。そこにあるのは『湖の底』。黒い霧が沈殿する天井だった。


「どうなってんだ……」


起き上がり、周りを見回す。全体的に赤っぽい地盤と壁。地面を叩いてみるが、コンクリートのようにつるりとしていた。


言うなればここは洞窟の中のような空間だ。しかし、妙なのは天井だった。


「……え〜っと……よしっ」


宗徳は直感のまま行動する。先ほどもやった風の道を天井に向けて放ってみたのだ。


すると、水が僅かばかり降ってきた。そして、奥に見えたのは鑑定を発動したままであった為に見えた湖の上にいるはずのリヴァイアサンとリーヤの反応だった。


「……ってぇことは……ここは湖の底なんだな。うむ。異世界スゲー……」


この不思議現象に、無理やり納得する宗徳だった。



読んでくださりありがとうございます◎



ビックリしてはいますよ。



次回、また来週土曜28日0時です。

よろしくお願いします◎


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