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197 青くて美しい

宗徳としては、亮司に昔のように笑い合った楽しい気持ちを思い出して欲しいと思っただけ。


病室のドアは、看護師達も開けようと思えないよう、弱く精神干渉を施していた。開けられるのは律紀達や寿子だけ。そういう設定をしていたのだ。


もちろん、開けようとする者が誰か、宗徳には分かるようにもしていたため、関係のない者達がこれを見ることはなかっただろう。


律紀と朱莉、翔利は開けて見ることになった、まるで水族館のドーム型の水槽の下に居るような部屋に、驚いて立ち止まる。


いち早く動いたのは、廉哉だ。これに美希鷹が続き、律紀達三人の背を押して病室内に入り、素早くドアを閉めた。


「ちょと、ノリさん! びっくりするじゃん!」

「すごいんですけど……ここでやることはないですよ……悠遠達にも見せないと」

「レン、そうじゃないよ」

「え? だって、これは綺麗だし、一応、僕達しかドアが開けられないようにはなってるみたいだよ?」

「でもそうじゃないんだよ!」

「ん? ごめんね?」

「はあ……いや、うん、レンがノリさんを信頼してるのは分かるから……」


たまに廉哉はズレる。異世界帰りだからというのもあるし、宗徳や寿子の非常識に慣れてしまっているからとも言う。


「そうだよな……親の常識が子どもの常識だよな……うん。ということで、レンは悪くない。ノリさん! もう少し常識の範囲から離れ過ぎないように気を付けてよ!」


常識から外れるなとは言わない。もう少しその範囲から近い所までにしてくれというのが、美希鷹の意見だ。これに、宗徳は後ろ頭を掻きながら答える。


「お〜。悪い悪い」


全く悪びれていなさそうだが、一応はこうして注意した後は、きちんとマズい事には気を付けてくれるので、良しとする。


「まったく……」


美希鷹は、最近、自分の知っている常識を確かめるようにしている。遊びに行く屋敷も非常識だし、少し前までは宗徳の暴走を止めたり注意する側だった寿子が暴走することもあるのだ。自分だけはとも思っていた。


「で? なんでこうなったのさ」


呆然としたままだった律紀達が、ゆっくりと部屋を見回しはじめたのを確認しながら、美希鷹が宗徳に問う。


「いやあ、亮司は魚が好きだったから」


これにすかさず亮司が告げる。


「……俺は魚釣りが好きだったんだが……」


うんと頷きながら宗徳は亮司を見た。


「いや、だから魚が好きだろ?」


困ったような顔をする亮司。それを見兼ねて、美希鷹が口を挟む。


「ノリさん。釣りが好きだから必ずしも魚好きってわけじゃないと思うんだよ。イヌ、ネコ好きだから全部の動物好きってわけじゃないのと同じでさあ」

「お、そうか。けど、これ良くねえ?」


そう言って、また亮司を見た。すると、亮司は困った表情のままだが、少し笑って答えた。


「めちゃくちゃ綺麗で、このまま見ながら寝たいくらいには気に入ったけどな」

「へへっ。だろ?」


ならやっぱり問題ないなとの結論がでた。


上から陽の光が差し込むように、水の中は青く、明るくて、本当に美しい。


その青さと優雅に泳ぐ魚に見惚れていた律紀がうっとりとしながら呟く。


「水って、なんで青いのかな……」


これに答えたのは廉哉だ。


「光の性質によるものだよ。上から光が来るでしょう?」

「うん」

「光の色……虹は端が赤と青だってのは知ってるよね?」

「うん」

「太陽の光が水に差し込むと赤色やそれに近い色から吸収されて青だけが奥まで届くんだって。だから光の青だけを見ることができるって感じのことだったと思う」

「廉くんすごい……なんで知ってるの?」

「気になって調べたらからね。実際に海の中って、青くて綺麗だったから」

「へえ〜……」


廉哉が思い出していたのは、徨流(こうりゅう)の母親がいた海の中の町。そこで見た海の中は、異世界であることもあり、見たこともない魚が泳いでいた。それをこちらに戻って来てからふと思い出した時に、調べたのだ。


「そうなんだ……」

「知らなかった……」


朱莉と翔利は、この非常識な空間よりも、その美しさに魅了されていた。だから、逆に落ち着いたようだ。


「これが魔法?」


何度か目を瞬いてから、朱莉が美希鷹と廉哉の方を見た。これに二人は笑って頷く。


「そうだよ」

「そうだぜ」

「「っ……すごい」」


翔利と共に、そう呟くと、二人は目を輝かせながら顔を見合わせて頷き会う。そして告げた。


「「遊びに行ってもいい?」」

「「「っ、もちろん!」」」


この三連休、一緒に過ごすことが決定した。子ども達は揃って楽しそうに笑っていた。






読んでくださりありがとうございます◎

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