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195 孫達の交流

廉哉に連れ出された二人の亮司の孫は、青白い顔をしながら、律紀と美希鷹と合流した。自販機のある場所は、休憩所にもなっており、ソファやテーブルがいくつかあった。そこに五人で集まる。


落ち着かない様子で椅子に座った兄妹に律紀が声をかける。


「こんにちは。私は律紀。二人のおじいちゃんのお友達の孫だよ。で、こっちが廉哉くん。廉哉くんは、おじいちゃんとおばあちゃんの養子なの。それで、こっちが美希鷹くん。最初はおじいちゃん達の友達だったんだけど、今は一番の友達かな」

「よろしくな。ってか、見た事あるかも」

「あっ、生徒会の……?」

「あ……」


美希鷹と同じ学校だったようだ。


「お、俺は草間翔利(しょうり)、中三」

「私は、朱莉(あかり)です……中一です」


翔利(しょうり)は、目つきが少し鋭いが、悪い子ではなさそうだ。ヒョロリと背が高い。反対に妹の朱莉(あかり)の方は、気の弱そうな、声も体も小さい子だった。


美希鷹は生徒会に入っているため、生徒をよく見ているようだ。学校の行事の時に、舞台の上からなど見ていたりする。二人ともなんとなく見覚えがあったらしい。美希鷹は、かなり記憶力が良い。特に、人を覚えるのが得意だ。そんな美希鷹は、自販機を見ながら提案する。


「何か飲まない? ヒサちゃんのあのキレ具合だと、時間かかりそうだし、ここのはパックドリンクだからそんな量ないしさ。因みに俺はフルーツ牛乳」

「あ、私も〜」

「僕はカフェオレかな。あ、これ小銭使って。好きに使っていいやつって言われてるから」


廉哉がポケットから、寿子手作りの、和ものの小銭入れを取り出す。そして、自販機の方へ行く美希鷹へと投げ渡した。


「お〜。ヒサちゃんの掴み取りのやつね」

「ああ〜。あの海苔の大きい入れ物に百円玉いっぱい入ってるやつ?」


百円玉貯金というわけではないが、寿子は若い頃から買い物のお釣りでできた百円玉を、帰ってくると入れて貯めていたらしい。その入れ物は、海苔が入っていた、大きなプラスチックの入れ物だ。もう重くて持ち運ぶのも面倒ということで、普段は大きめのハンカチをかけて部屋の隅に置きっぱなしになっている。現在は、屋敷の方の温室から繋がる部屋の入り口に置いてあった。あの屋敷に泥棒など入れるはずはなく、堂々としたものだ。


「そう。出かける時に、一掴み持って行くように言われてるんだ。ゲーセンででも遊んだら良いって。悠遠達がゆいぐるみ好きだから、そこで取って毎回、一つ以上は持って帰るようにしてる」


寿子の買い物に付き合ってついで行って、そのついでにゲーセンで遊ぶというのが、廉哉の日常の一つだ。少しでも子どもらしい遊びをして欲しいと寿子は思っており、廉哉としても楽しんでいる。


「わ〜。レンくんなら凄く取れそう」

「あ〜、うん。取ろうと思ったやつは取れてるかな」

「やっぱり! 今度一緒に行こ!」

「あ、俺も俺もっ。アレだろ? ヒサちゃんのよく行くスーパーのゲーセン。今度はもっと大きいとこ行こうよ」

「大きい所か〜。うん。一緒に行こう」


少しずつそうして、廉哉も同年代の子と遊ぶということを覚えていっている。活動範囲も広がっているようだ。


「あ、それで? 二人は何飲む?」

「え、いや……」

「先輩。遠慮しなくて良いって。ノリさんとヒサちゃんが、がここに居ても、同じことするからさっ」

「……じゃあ、カフェオレで。朱莉は……いちご牛乳で」

「おっ、いいよね、いちご牛乳。俺もハマった時期あった」

「あ〜、私もっ。あかりちゃん、いちご好き?」

「あ、はい……っ」


恥ずかしそうに返事をする朱莉。律紀は、そのまま話を進めた。


「私、おじいちゃんの作った苺を荒く潰して、牛乳とバニラアイスを混ぜたのが好きなんだ〜」

「っ、アイスっ……美味しそう……っ」

「美味しいよ〜。おじいちゃんが作る苺は、甘酸っぱくて、大きいのっ。でね。アイスが溶けやすいように、ちょっとだけ牛乳を入れるんだけど、それが本当に絶妙でねっ。あれは毎日でも食べたい!」


実際に、苺が採れる時期に、毎日食べていた。


これを聞いて、朱莉は少し頬を上気させながら話す。


「っ、わ、私も、小さい頃に、おじいちゃんが作ってた苺、潰して牛乳で食べるの、凄く好きだった……酸っぱいから、お砂糖入れてたけど……アイス入れたら良かったかも……っ」

「うんうんっ。アレは良いよ。あ、でもね? 最高に美味しいのは、レン君の手作りアイス使った時。濃厚なのが最高だったのっ」

「手作り……すごい」


朱莉の緊張は大分ほぐれたようだ。飲みものも飲みながら、好きな食べ物の事や、休みの日の過ごし方など、楽しく話していれば、時間など飛ぶように過ぎた。


「そろそろノリさんの所に行こうぜ」

「そうだね」

「おばあちゃんの方もそろそろ大丈夫かな?」

「う〜ん。ヒサちゃんの方はもう少しかも」

「そっか。まあ、おじいちゃんだけでもいいよね。朱莉ちゃん。行こう」

「う、うん」


すっかり仲良くなった律紀と朱莉は、姉妹のように手を繋いで病室へと向かう。美希鷹達もそれに続いた。








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読んでくださりありがとうございます◎



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