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192 昔から変わらない

2024. 7. 27

亮司の顔に覇気はないが、それでもそれほど重症であるようには見えなかった。だが、慎重に、バレないように注意深く見ると、それなりに視えるものもある。


「亮司……お前……酒飲み過ぎたな」

「ははっ。バレたか。まあな。色々に逃げちまったのよ」

「ったく」

「あら。亮司さんは泣き上戸だったでしょう? 暴れるよりは平和ですわね」

「ヒサちゃん……何で知ってる?」

「俺が話したし」

「それもそうか。相変わらず仲が良さそうだ。ははっ。まあ座れや」

「おう」

「お邪魔しま〜す」


こんなやり取りも懐かしいと三人で笑い合いながら、それからしばらく昔話に花を咲かせた。


「それにしても、二人は変わらねえなあ。はははっ。若返ってねえか?」

「おう。まあな」

「病気なんかはしてねえのか?」

「してないわねえ。数年前に、年甲斐もなく電柱に登って落ちて、この人が骨折したくらいですよ」

「ノリさん……何してんだよ」

「いやあ。台風で飛んでったシートがちょい上に引っかかってたんだよ。電線にじゃねえし、少し登りゃあ、届く所に巻きついてたんでなあ」

「綺麗に折ったものだと、お医者様に笑われていましたよね」

「ヒビ入るよかポッキリいった方が良いってな」

「いや。年考えろ。若い頃よか治すのにも時間かかるだろうが」

「それがなあ。俺、骨年齢若くてさ」

「何食ってんだ?」

「寿子のメシ」

「羨ましいやつめ」


そんな感じで、笑い合った。しかし、やはり弱っているのだろう。疲れが見え始めた。それを察して、宗徳と寿子は目配せあった。


「なあ。亮司。また一緒に昔みたいにバカやろうや」

「……やりてえなあ……」

「できますよ。この人に振り回されていれば自然と」

「そうだなあ……ノリさん変わってねえし……けどなあ……」


ここで宗徳と寿子は頷き合う。


「今痛いとか感じてるとこあるか?」

「……胸の辺がな……」

「なら、少し失礼しますわね」

「え……」


寿子が亮司の胸辺りにそっと添えるように手を触れ、治癒魔法をかける。


「なっ、んだ? これ……っ」

「少し光ってしまうのは仕様ですわ」

「こればっかりはなあ。いくら隠してもちょい光るんだよな〜」


淡く手のひらが光ってしまうのはご愛嬌。まあ、魔法をかけているのが目で見えるのは仕方がない。治癒魔法だけは隠せないらしい。そこを誤魔化すにはスピード勝負だと、魔女達が魔女らしいことを言っていたのを聞いている。何をやってもスピード狂な所が出たりする。


とはいえ、今回はあえて見せることを目的としていた。


「部屋にカメラなくてよかったなあ」

「カメラにも少し映ってしまいますもんねえ」

「いや……これ一体……」


寿子の手から出ている淡い光に手で触れながら、亮司は戸惑っていた。そんなことは気にせず、寿子と宗徳はいつも通りだ。


「さあ。これくらいでしょうね」

「まだ痛みはあるか?」

「は? え? な……っ、ない……」

「よしよし。これは笑いの力だ。笑うと細胞に良い働きがあって、それで治癒力が上がるって研究があってな」

「いやいや。なんだそれ……」

「え? 知らねえの?」

「知らないんですか?」

「その顔……お前ら夫婦のその顔に何度か誤魔化された記憶が……」


揃ってキョトンとし、当たり前のように言ってみせる。これは寿子と宗徳の若い頃からの技だ。そうして色々うやむやにしてきた前科がある。


「心配すんなっ。これホントだから」

「そうですよ? まだまだ検証中ですけど、実際にあっておかしくないものですから、これで誤魔化せます!」

「誤魔化す気満々じゃね?」

「「そんなことは……」」

「そこでわざとらしく目を逸らすんじゃねえよ!」


寿子もついついこれは宗徳と揃ってしまう行動の一つだ。似た者夫婦と言われて嬉しいことでもある。


そこで亮司が噴き出す。


「ぷはっ。あははっ。本当に変わらねえっ。変わらなさ過ぎだろっ」

「ははっ。褒められたなっ」

「やあねっ。亮司さんったら、いつまでも若いよなんてっ」

「言ってねえよ?」

「言ってねえな」

「まあっ。副音声が聞こえないんですか?」

「いや、ねえから。どんな技だよ」

「因みに俺もたまに発現する技だな」


うんうんと宗徳の言葉に得意気に頷く寿子。私にしか分からないんですよと言う様子に、亮司はまた笑った。


「ぶっ! はははっ」

「あははははっ」

「ふふふふふっ」


そうしてしばらく笑い合ったのだ。




読んでくださりありがとうございます◎

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