184 天才的な連携
2024. 2. 10
レインボードラゴンと呼ばれるものまでしっかりと回収し終えた宗徳達は、お弁当を広げていた。
「いや〜あ、狩ったなあ」
「全部で結局、何体居たのかしら? 何匹かは逃しましたけど」
「さすがになあ。絶滅させそうで」
「ある」
「ありそう」
「あると思う」
「ん」
あまりにもサクサクと狩り取って行ったため、最後の方はもう作業だった。いくらでも捌ける気になるほど慣れたものになったのだ。
「慣れてるはずの俺達でも、あんな風にドラゴンをもう食材? 的な感覚では倒せないから」
「結構、いつも命がけだものね……」
「大きさからして、簡単じゃねえもの」
「……いつも真剣……」
倒せるとはいっても、命のやり取りだ。その上に、自分たちの体の何倍もある巨体を相手にするのだ。簡単にやれるものではないし、一体を相手にするのにもかなりの覚悟が要るものだ。
「今回のオーダーもさあ、いつもなら、何日もかけて少しずつ……それこそ、ひと月はかかるやつだよな」
「群れでなんて相手にしないし」
「ドラゴン探すのからだしな」
「ん……」
「「「それが……」」」
「結局、何体狩ったんだろ」
「十はいったわよね?」
「だな。十はあった」
「十二体」
「「「え!?」」」
「……レインボードラゴンも入れて十二体」
「「「十二体……」」」
そんな会話をしながらも、食事は忘れない瑠偉達を、寿子は微笑ましそうに見つめる。
「若いって、やっぱり良いわねえ」
「おいおい。一応は、今の俺らも若いんだぜ?」
「ふふふっ。分かっていますよ。でも、あんな風に、同年の友人達と話ができるというのが……なんだか羨ましくて」
「友人か……そうだな……俺らの友人とは、もうあんな感じにはな……そう集まらんだろうしな」
「病気でもなければ、寝たきりになるような年齢じゃないんですけどね……」
まだまだ動ける年齢ではあるが、段々と日々の活力が見出せなくなってくる頃。久しぶりに会おうなんて言って会える事は稀だ。
「ましてや一緒に狩りは無理か」
「それは何歳でも無理です」
「いや。だって、すげえ連携してて楽しかっただろ」
「楽しかったですねえ。最後の方、受け止め方も天才的でしたよ。ほぼ音がしなかったですもの。その後の解体への流れもスムーズで。思わず映像記録しました。ルルちゃんやイズ様に是非見てもらいたくて」
「おっ、それは俺も見たい!」
「子ども達にもドラゴンを見せてやりたいですしね」
「そうだなっ」
そんな二人の和やかな雰囲気を感じて、瑠偉達が羨ましげにしていた。
「「「本当に仲が良い……」」」
「ん、いい」
そんな昼食を終え、今度は深い森の中に入る。
「さてと、暗黒竜がまだだが、まずはエルダートレントだな」
「エルダートレントはトレントよりも見つけにくいんですよね? それも実を付けたもの……中々の難題ですね」
「美味いんかなあ? ルルちゃん、何に使うんだろうか」
「確か……トレントの付ける実の皮の成分が化粧水に良いって……言っていたから、それも化粧水の研究に使うのかもしれませんよ」
「へえ。実は美味いかは知らないか?」
「知りませんねえ……聞いてみましょうか」
「そうだなっ」
「「「「……」」」」
危険な森歩き中。今現在も、足下から毒蛇の魔物が飛び掛かって来ていたり、木の上からサルのような魔物が降って来ていたりするが、それらは払い除けるようにして気絶させ、先に進んでいく宗徳の寿子。
瑠偉達はその後を静かについていくだけだ。
「これも、もはや作業……」
「的確に一撃で狩るんじゃなく、気絶させるとか……どんだけ器用なんだ……」
「絶対にどっちかしか動かないのも面白いわよね……」
「連携……すごい……」
右から来る者だとか、下からだとか役割を分けていることもなく、より近い方、先に反応した方が倒すというのが、自然に出来ている宗徳と寿子に、唖然としながらも瑠偉達はついていく。
しばらくして、返事があったらしい。寿子が嬉しそうに声を上げた。
「まあっ。固そうに見える黄色や金色の実は美味しいんですって。ソルベにするのがおすすめだそうですよ」
「赤はダメなのか?」
「赤は養分としたものの毒素やえぐみが凝縮されているそうです。匂いは甘くて美味しそうなものだそうですけど」
「へえ。見た目じゃ分からんもんだな」
「本当ですねえ。あっ、赤い方、狩の時の餌に使えるそうですよ」
「おおっ。暗黒竜も釣れるかもしれんなっ」
「「「……」」」
「……釣る……」
宗徳と寿子のようには、楽しそうには出来ない瑠偉達。彼らには言いたい事があった。
「あのさ……トレントの養分って、人とかじゃん?」
「そのえぐみとかが実に出るって……」
「食べない方が良いよ……」
「……美味しいとは……思えない……」
美味しいと言われても美味しいとは思えない。気持ち的にということだろう。
「何言ってんだ。肥料なんて普段食べる野菜でも色々あるだろ。俺らのクソっ……っ、危ねっ」
「あなた〜、汚い言葉はダメですよ」
「お、おうっ。まっ、まあ、あれだ。俺らも土に還れるものなんだ。肥料になったら動物も俺らも一緒だろ」
「それに、ここには人間は居ませんし、養分にはなってませんよ」
「そうだな」
「あ、なら大丈夫かも」
「人が養分になってないなら別に」
「うん。そこないなら別にいいかも」
「……ん」
人間が養分になって出来た実じゃなければ良いらしい。
「けど、逆によお分からん生物が養分になってるかもしれんけどな」
そう言って、宗徳が立ち止まって見つめた先。そこに、いかにも宇宙人っぽい見た目のものを取り込んでいるトレントがあった。
「……アレは私も嫌かもしれません……」
「「「っ……嫌だぁぁぁっ」」」
「っ!!」
「宇宙人って居るんだなあ」
「「「「「ひぃぃっ」」」」」
ちょっと食欲は失せた。収穫するならば、肥料となったものの確認が大事かもしれない。
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