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183/212

183 変わっていくものですから

2024. 1. 20


宗徳は、かなりこうした迷宮に慣れ始めていた。


「要は『解体判定』が出れば良いんだよ」

「……『解体判定』? 初めて聞いた」

「判定? 迷宮のってこと?」

「あっ、どこまでが攻撃で、どこからが解体かってことかっ」

「……倒した後の切り分け方? を、考える?」

「そういうことだ」


真っ二つになって倒せたとする。だが、そのまま五分経つと魔石がドロップして消えてしまうのだ。


一方、その倒したものの皮を剥ぎ、部位ごとに切り分けると、丸っと手に入る素材となる。この区別はどこからなのかということだ。


「この前、首を落として、羽を切り落とした状態だと、ダメだった。なら、そこに尻尾も切り落としたらどうなるか……」


そう言って、宗徳は近付いて来た一体のドラゴンの首を、亜空間から取り出した刀で断ち切った。声を上げる隙さえ見せず、落下してくる間に両翼と尻尾を切り落とす。


すかさず寿子が切断面から血が流れ出ないように結界で塞ぎ、指示を出した。


「受け止めるわよっ。ルイ君、頭お願い! 男の子二人で尻尾よ! 私たちは羽。あなた! 胴体いけるわね?」

「おうよっ。音は最小限になっ」


身体強化も出来る一同は、トサッという音だけで受け止め、それらを地面に置いた。


「とりあえず、これで五分待ってみるぞ」

「「「はい!」」」

「ん」

「成功するといいわねえ」


そうして、五分が経った。


「……消えない……っ」

「ドロップにならない……」

「成功?」

「おおっ。やった!」


こんなんでいいのかと、新しい発見に瑠偉も含めて大喜びする。解体を急がなくて良くなるというのは大きい。


「これっ、他の奴らにも教えても良いっスか!?」

「当然だろ」

「そうよ。普段からお仕事するのはあなた達なんだから」

「「「ありがとうございます!!」」」

「……嬉しい……」


本気で嬉しそうだ。


「さあ、じゃあ、血抜きしましょうか。周りに臭いがいかないように、結界の中に血を溜めて燃やすわ。今回は血は要らないのよね?」

「この前、大量に回収したから要らないって言われました」

「一体でも大量に手に入るから、当分要らないって言われたっス」


それを確認して、寿子は手早く圧縮して血を絞り出す。そして、処理を終えると、安全な場所を確保し、そこで本格的に解体を始める。


「お肉は少し持ち帰るんだったわよね?」

「そうです。食堂の方からの依頼で」

「何体分いるの?」

「一体分で充分ですよ。けど、私たち個人的にも欲しいので、二体分で。ヒサコさん達もいりますよね?」

「ドラゴン肉は美味えからなあ」

「そうねえ。抱えられるくらいの一塊りは欲しいわあ」


半年ほど前まで二人は、あまり肉を食べたいと思うことも無くなっていたが、最近は違う。体が求めているのかもしれない。若返って来ているということなのだろう。


「部位ごとで取ってみるか?」

「良いですねえっ」

「そうなると……とりあえず皮を剥いで……ここと、ここと……ここかっ」


スルスルと皮を剥ぎ、部位で大雑把に分ける宗徳。それを見て、瑠偉達が目を丸くする。


「……俺らより手際が良いんだけど……」

「ドラゴンの部位別って……俺、分からん……」

「考えたこともなかったわ……ドラゴンの肉はドラゴンの肉でしょう? 尻尾か首か胴体かってくらいしか……」

「……細かい……」


牛や豚のように、細かく部位で分けているように見えるのだ。寿子も、なぜ分かるのか気になったらしい。


「あなた……勉強しました?」

「おう。薔薇様がこの前、美味い魔獣五十選って本をくれたんだよ。それが結構面白くてさあ」

「……ゲテモノは嫌ですからね?」

「どこからがゲテモノだ? ドラゴンもそっちに分類する人いねえかな?」

「それもそうですね……虫じゃなければ許します」

「ああ……虫も二つくらいしかなかったし、分かった!」

「危なかったわ……」


寿子は胸を撫で下ろす。宗徳なら、その五十選をコンプリートしたがるだろう。突然、『コレ美味いんだってさっ!』と虫系を持って来られたら、今の寿子には粉砕する自信がある。


「ヒサコさんも大変なんだね……」

「こういう嗜好とかはね。付き合ってる段階では分からなかったりするのよ。人は日々、成長して、時に新しい一面に目覚める生き物ですからね……」

「深いね……」

「最低限、結婚する前にその人が何に、誰に弱いか、どこまでワガママを聞いてくれるかの確認はした方が良いわよ。夫婦も他人ですからね。本当の本当の最低限の身の安全は自分で確保しておくべきです。もちろん、男も女も関係なく」

「「「なるほど……」」」

「……」


嬉々として解体を続ける宗徳を見つめ、夫婦って奥が深いなと若者達はうんうんと頷いた。


そんな一幕もありつつ、宗徳達は、順調にドラゴン狩りを続けたのだ。












読んでくださりありがとうございます◎

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