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177 性格もあるんでしょうが……

2023. 9. 16

息子夫婦を交えたお茶会からふた月。


週末になるとその息子夫婦が泊まりに来るようになっていた。


「おはようございま〜すっ」

「おばあちゃんっ、おじいちゃんっ、来たよ〜」


沙耶と律紀が今日も元気に挨拶しながら家に入って来る。


「今日はまた早いわねえ」


寿子が笑いながら迎え出た。回を重ねる毎に段々と訪問する時間が早くなってきていた。


今日などまだ朝の六時半だった。


「ごめんなさいお義母さん。朝食も食べずに来ました!」

「ふふふっ。構わないわ。けど、徹と征ちゃんは眠そうねえ」

「っ……昨日遅かったから……」

「ずっと勉強してた……」

「あらあら。まあ、あちらで昼寝してもいいものねえ」

「「……っ」」


二人はそのつもりだったりようだ。沙耶や律紀もそれを分かっている。


「あのお外のハンモックで昼寝するの良いものね〜。さすがは、お義父さんだわ」

「雨が降っても大丈夫な結界の屋根付きで、寧ろ雨の日の方が、なんか不思議で楽しいもんね〜。おじいちゃんってば万能っ」

「「っ……」」


宗徳が庭に作ったその場所は、結界で覆われており、熱や通す風の力や量まで調整された快適に外で昼寝が出来るスポットだ。


子ども達が外で星を見ながら寝たいと願ったので、真ん中には屋根のない六角形の東屋のようなものを作り、そこにベッドを並べてある。


その東屋の周りに、ハンモックが用意されており、本を読んだりも出来るようにベンチやソファーも置かれているので、もはや何がなんだか分からないスペースとなっている。


外が好きな白欐や黒欐、徨流や琥翔にとっては憩いの場所で、そこに子ども達がお昼寝場所として加わるため、いつも誰かが使っている。


たまに薔薇もハンモックに揺られて寝ていたりするので、作ったのは正解だったということだろう。


「鳥とかは通過するけど、虫も来ないし、安心して寝れるよね〜」


都会っ子達でも安心できるようにと、宗徳はそう設定したのだ。


「本当に魔法って万能なんですねえ」

「ふふふっ。あそこまで細かい設定が出来るのはあの人くらいみたいですけどね」

「そうなんですかっ!? うわ〜、さすがお義父さん……」


宗徳は、魔法の可能性について色々と考えているらしく、薔薇やイザリ達魔女からしても、宗徳は非常識だという。


「それで、お義父さんは?」

「あの人は、泊まりがけで徨流を連れて仕事に行っているのよ。昼前には屋敷に戻ると言っていましたから、早くても戻るのは十時のおやつの時間かしら?」


沙耶達は、戸締りの確認をして家に上がると、寿子が屋敷に繋がる扉を開けて中へと促す。


それに素直に従いながら、沙耶は寿子とすれ違いざまに尋ねた。


「そうなんですか……お義母さんも同じ職場なんですよね? 今日のお仕事は別だったんですか?」

「ええ。私はあちらで薬の研究をしていたのだけど、あの人は王宮の舞踏会に呼ばれてしまってね」

「へえ……武道会ですか。お義父さんは強いですからね」


普通に脳内変換されたようだ。それに気付き、寿子が後に続きながら訂正する。


「あ、違うわよ? 舞踏会。王宮で、着飾って踊るやつよ」

「……おうきゅう……?」

「「おうきゅう……」」


沙耶だけでなく、徹と征哉まで思考が停止したようだ。


律紀だけが、正常に理解していた。


「うわあ、王宮かあ〜。ユマさんの所ですか?」


ユマとは、東の大陸の王女のことだ。現在も復興作業に追われている。寿子の薬の研究は、土地の作物の育成を助けるものが今は主としていた。彼女を助けるためだ。


寿子にとって、ユマは娘のような存在なのだ。甘えてはいられないと強がる彼女のために、あまり気に病まないよう、少しだけ手を貸しているという状況だ。


しかし今回、宗徳が向かったのはそちらではない。


「あそこは、まだ復興中ですし、そんなこと出来ませんよ。城もまだまだ瓦礫の山になっていますからね」

「え、じゃあ……」

「私たちが作っている町のある国の王宮です。あの人、いつの間にか王様に親友か相談役みたいな扱いを受けているし……王妃様はまるで憧れのヒーローか頼りになる父親を見るような目で見ているのよ……」

「……おじいちゃんって、何気にタラシだよね……」

「男にも女にも人気があるのよね……女だけでないのが救いかしら……」

「確かに……」


寿子としては複雑だと、その顔を顰めていた。


そして、寿子の予想通り、宗徳は十時のおやつの時間にタキシードのようなあちらの世界の正装を身につけて帰ってきたのだ。




読んでくださりありがとうございます◎

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