表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/212

154 正しい時間へ

2022. 5. 21

治季(はるき)の自宅。善治(ぜんじ)の家で、宗徳(むねのり)寿子(ひさこ)が通った道場の上だ。


その上空で滞空し、下を見下ろすと、今まさにこの時間に存在する治季、律紀、美希鷹が裏庭に向かう所だった。


「本当にりっちゃん達が居る……」

「なんか妙な感じだなあ」


宗徳と寿子は、不可視の術が効いていても、少しばかり緊張した様子で見つめる。


同じように律紀達は、それぞれ魔女の箒や杖にに同席させてもらって下を見る。


「……もう一人居るって聞いて、わかってたけど……」

「ええ……言いたいことは、分かります。なんでしょう……この妙な感覚……気持ち悪いというか……恥ずかしいと言いますか……」

「自分の映ってるビデオ観てるみたい」

「それだっ」

「それです!」


得体が知れないという恐怖心や不安は、さすがに事情を聞いていたので、なかった。もしこれを聞いていなかったら、叫び出したくなるほど、怖かっただろう。自分の方が偽物のような、消えてしまうような感覚があったかもしれない。


「私、あんな歩き方なんだ……あ、ちょっと太ったかも……」

「太って見えますよね!? 見えるだけでしょうか? もっと鍛えなくてはっ……」

「鏡で見るのとはまた違うな〜。キュアなんて毛玉……っ、痛いっ」

《失礼なっ》


いつものように美希鷹の頭の上にいるキュリアートが頭皮をつついて抗議していた。


そうして、いよいよ、その時が来た。


「光ってますね……」

「湖のあった範囲だな……っ、あそこに誰か居るっ」


宗徳が、治季達が光に包まれる瞬間、反対側に居る何者かを指差す。


目を凝らして確認し、呆然と呟いたのは、イザリだ。


「っ……イルマン……」

「知り合いですか」


イザリへと問いかける宗徳。イルマンという人の姿は、光に包まれた治季達と共に消えていた。


その場所を見つめながら、イザリが答える。


「……兄弟子だ……」

「……」


その横顔からは、複雑な心情が感じ取れた。


宗徳が何か言おうと口を開く前に、イザリは魔女達へ伝える。


「三人を下ろす」

「「「は〜い」」」


三人はこの時、召喚された時の服をきちんと着ている。召喚された時に汚れたり、破れたりした所もあったが、寿子がしっかり直して整えていた。


よって、三人が居なくなったことは誰にも分からないはずだ。


「これで問題はない。ただ、日にちの感覚はしばらくおかしいはずだ。気を付けるように」

「「「はいっ」」」


向かうの世界で数日過ごした。学生なら特に、曜日の感覚を持っている。七日のサイクルが狂うのだ。単純に夏休みなど、長い休みがあった感覚とは違う妙な感覚があるだろう。


「今日はもう休んだ方が良い。明日は学校だろう。無理せず過ごすように。できれば、次の土日にもう一度、こちらで健康状態を確認する。この……美希鷹と一緒に来てくれ」


イザリは美希鷹へ目を向け、頷いて見せる。


「分かりましたわ」

「はい」

「了解です。ちゃんと連れて行きます」


美希鷹はしっかりしているので、仮に宗徳と寿子がその時に居なくても、きちんと連れて来てくれるだろう。


「うむ……では、宗徳と寿子はどうする。この子ども達のこともあるだろう」

「あ、はい。その……もう少し空から景色を見せてやりたいんです。それから、ライトクエストで部屋を借ります」


いきなり、悠遠達を自宅に連れ帰ったら、近所でどんな噂が流れることになるか分からない。


寿子も同意した。


「家に連れていくにしても、もう少しこちらの世界に慣れてからが良いですからねえ」

「そうだな……よければ、中継地点となる家を貸そう。その家の庭から、飛んで来ればいい。公共の交通機関を利用するのは大変だろう」

「そうですねえ……電車とか、この子達を連れて乗るのは不安です……」


宗徳の寿子で、五人の子ども達を連れ歩くのは難しいかもしれない。


そのため、中継地点に遊びに行ったと対外的に見せ、そこから空を飛んでライトクエストとを往復するのがいいだろう。


「それじゃあ、その中継地点の候補を案内するわ。移動している間も町の様子も見られるでしょうっ」


魔女の一人が提案した。


それに乗ることにする。


ここで、イザリが少し離れる。


「イズ様?」


宗徳が目を向けると、ふむと頷く。


「あの兄弟子のこともある……師匠のことを探してくる……お前たちにも会わさねばならんからな」

「それ、難しいんじゃ……」

「お前たちの存在には気付いているはずだ。上手くいけば、今日、明日にはどこぞの穴蔵から出て来られるだろう……うまく生捕りにしてみせるわ」

「……え……」

「生捕り……?」


なんだかどんな人が来るのか一気に不安になった。




読んでくださりありがとうございます◎

二週空きます。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ