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150 時差

2022. 2. 26

竜守城の最上階の善治の執務室の奥。


プライベート用の空間のドアの一つが、地球と繋がるものとして使っている。そこに、魔女達も合わせて子ども達も全員が集まっていた。


今回は悠遠達五人の獣人の子ども達も一緒だ。


「ほんとうに、いってもいいの?」


悠遠は不安そうに尋ねてくる。人族しか居ないというのを聞いているためだ。


これに答えたのは、魔女達だった。


「確かに、人族しかいないから、見た目で目立っちゃうんだけど、ちゃんと隠せる導具があるから平気よ」

「外れるとかのハプニングもなし! 完璧なやつだから、子どもにも安心なのっ」

「ひと昔前はね〜、写真に写っちゃったりしてたんだけど〜、それの調整もちゃんとできてるから〜」


これに笑って宗徳と寿子が頷いたことで、大丈夫なのだと理解できたようだ。


次に、召喚されてこちらに来てしまった律紀達だ。これには、イザリが説明をしてくれた。


「お前達が召喚された時とは時間軸がズレていてな。今まで待ってもらったのは、それを合わせるためだ。現在は召喚される二時間ほど前になっている」


彼らは治季の家に遊びに行っていた。そして、庭に出ている時に召喚が起こったのだ。


「この世界はまだ調整が出来ていない。よって、宗徳達も大体、こちらで二日滞在しても、三日ほど経っている状態だ。だが、門番の力によって、そのズレを調整していた」


これを聞いて宗徳は、なるほどと思った。少しだけ、感覚がズレる時があった。


「体内時計が狂ったんだと思っていたんだが……なるほど、そういうことか」


そうかそうかと納得する宗徳。これに、イザリや魔女達が思わず顔を見合わせた。


「宗徳……お前、違和感を感じていたのか?」

「いやあ、若くなったから腹減るのが早いんだと思ってたんですけどね」

「そんな深刻なことなのですか? この人は感覚で生きてきた人なので、当てになりませんよ?」


寿子の意見に、宗徳も頷く。


「まあ、たった十分や十五分の違いなんで、誤差ですよ」


カラカラと笑う宗徳。だが、イザリ達にしてみれば、それは異常な鋭さだった。


「イズさま〜、間違いないですよ。来る前にチェルシャーノに聞きましたもん。調整が難しくて、十分から十五分は誤差出てるって。まあ、それでもチェルシャーノだからそれだけの誤差で済んでるんだろうけど」


この誤差を修正するのは、とても大変なことらしい。バランスの取れていない世界では特に、どれだけ調整しても誤差が出る。それでも、チェルシャーノは優秀で、他の門番ではニ、三時間まで詰めるのが限界な所でも、三十分まで詰められるらしい。


本人が面倒くさがりというか、余裕を持って生きるがポリシーとしているため、今は問題のある門や、新しい門の調整役しかやらないが、彼ならば多くの世界の門を一度に管理出来るだろう。


「そういえばこの人、昔から時間当てが正確なんですよ。三十秒や一分を当てるゲーム。ピッタリ過ぎて怖いので、やらなくなりましたけど」

「……なるほど……」


寿子が思い出した宗徳の得意技に、イザリは考え込む様子を見せた。そして、一度頷いて口を開く。


「宗徳。師匠に会ってみるか」

「へ?」


イザリの師匠とは、薔薇(そうび)様と呼ばれる音信不通の人のことではないかと首を傾げる。


「宗徳の話を聞けば、恐らく出て来られるだろう。こちらとしても、所在が知れるので助かる」

「探しても見つからないですもんね」

「お会いしたいと言っても、あちらが興味を持たれないと会えないですもんね」

「ヒサちゃんの飛び方も見てもらいましょうよ。きっと気に入っていただけるわっ」

「うむ……帰ったら、すぐに噂を流すとしよう」

「はあ……」


なんだかよく分からないが、イザリの師匠を紹介してくれることになったようだ。


「さて、お前達も行くのだったな。姿を消す導具を貸そう。存分に楽しむがよいよ」

《くすぅ》

《くるるっ》

《ぐるっ》

《みゅうっ》


徨流と白欐、黒欐、そして、新しく仲間になった琥翔(こと)も連れて行く。


《みゅっ、みゅっ、みゅ〜》


琥翔は好奇心旺盛だ。そして、宙を翔ぶ。


《みゅ〜っ》

「琥翔、向こうでは勝手に飛んでいくんじゃないぞ?」

《みゅっ》


賢く、可愛く返事をして、宗徳の胸に飛び込む。抱っこも大好きだ。


落ち着いたところで、いよいよ、扉を開いたのだ。




読んでくださりありがとうございます◎

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