120 着きました
2020. 5. 16
徨流に乗って宗徳と廉哉は王都よりも内陸の方へと進んでいた。
「レン、良かったな」
「っ……僕は……」
後ろに乗っている廉哉が、飛び出してからずっとぐるぐると考えているのには気付いていた。
「お前のこと。覚えてるってよ。心配してたぞ」
「……」
「まあ、今頃かって感じはするがなあ」
「……」
軽く笑えば、廉哉がふぅと長く息を吐いた。
「すみません。色々考えてしまって……」
「いや、心配すんのは親の務めってなっ。で? ちょっとは心が晴れたか?」
「……どうでしょう……でも、少しだけ……あの頃の僕が救われたように……思いました」
誰も助けてはくれない。大陸中が敵で、逃げ続けた数年前のこと。それは、廉哉の中の一番の傷だった。それが、少しだけ癒えた気がするといったのだ。
「全部許すこたあねえよ。まったく、あいつらときたら、あれだけ言ってようやっと気付くとか、呆けるのが早くなるぞ」
「ふふっ。この世界では寿命が短いんですよ?」
「あ、なら呆けるまで生きてねえんだな。よし、現実を教えるためにも、寿命を延ばさんとなっ」
「ははっ。そんなすぐには無理ですよ〜」
もう落ち込んだ様子も、苦しそうな様子も、悩んでいる様子も感じられない。吹っ切れたようだ。
「さて、そろそろみたいだぞ。さっさと神さまに許してもらって、この大陸を救ってやろうぜ」
「はい」
宗徳が腰に穿いている刀。それに付いている玉が熱を持つのが分かった。そして、宗徳には神の居る場所が不思議と感じられたのだ。
「徨流、あそこの洞窟の前に降りてくれ」
《グルル》
そして、降り立った洞窟の前。その洞窟の入り口を見て戸惑った。
「……なあ……上から見た時は洞窟だと思ったが……違うのか?」
「……いえ……僕が前に来た時は確かに洞窟だったはずです……えっと、洞窟に追い詰めたというのが本当ですけど……」
封印するにしても、狭い場所でなければ無理だと思ったのだという。
「いや、だってよ……これ、立派な扉だぞ?」
「……扉ですね……王城にあるのより立派です」
《くきゅ……》
宗徳と廉哉が降りてから、徨流はすぐに小さくなった。だが、恐らく本来の大きさの徨流でも十分に通り抜けられるだろう。
「巨人でも居るんか?」
「……居ないはずですけど……」
居るように見えるほどの多く立派な扉だった。
「……入るか」
「……大丈夫でしょうか……」
《きゅぅ……》
「ってか、開けられるんか?」
「……」
明らかに人の手で開けられるような重さではないように見える。
「まあ、やってみるか」
今の宗徳ならば、これくらいの扉も腕力でどうにかなるかもしれない。そんな期待をしながら、とりあえず手をかけた。
だが、触れるとすぐに自動ドアのように開いたのだ。
「んあ?」
奥に向かって開いた扉。中は薄暗い明かりの灯る通路になっていた。
「んん? えらく親切な洞窟だなあ」
「……こんなの知りませんけど……」
「あ? 違う場所なのか?」
「いえ……でも……まさか……」
「どうした?」
廉哉が信じられないという表情で中を見つめる。そして、呟いた。
「ダンジョン……?」
「なんだそれ」
コテンと首を傾げるしかできなかった。
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