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104 やられました

2019. 7. 20

宗徳と廉哉は次の日、徨流に乗って町を出発した。


「先ずはケー……なんたら国に行くんだよな」

「ケーリア国です。そうですね。今回の仕事は、召喚の儀式をする場所の確認と国の内情調査でした」


廉哉はきちんとやる事を覚えていてくれたらしい。頼りになる息子だ。


因みに宗徳は国の名前さえ忘れた上に、廉哉の封印した神に会うということの方に意識が行っていた。


「そうだった、そうだった。そんじゃあ、それをちゃちゃとっと済ませて、この刀を持って神さまとやらに挨拶せんとな」

「はい!」


真っ直ぐケーリア国へと飛んだ宗徳達。すぐに王城が見えた。しかし、そこで何か妙な感覚がしたのだ。


「ん? な、なんだ?」

「っ、ゾクッとしましたね……何か……っ!」

「どうし……っ!? これ、何が起きてんだ?」


突然だった。地上の景色が歪んだと思った途端、王城がくしゃんと潰れたように崩壊した。


そこを中心にして、ただでさえ枯れていた木々が砂のように脆く崩れ去っていく。地面は急激に乾燥するように細かな地割れが起きていた。


宗徳はその光景を呆然と見つめていたのだが、廉哉が、何かに気付いたように声を上げる。


「っ……こ、これっ! 美希鷹君と律紀さんです!」

「はあ!?」


何がこれなんだと大混乱の中、その気配を微かに感じ取った。


「なっ……ほ、本当に鷹と律紀だ……それとこれは……治季……っ」


まさかと思った。同じことを廉哉も思ったらしい。


「……召喚された……っ、でも、まさかっ、美希鷹君達はあちらでっ……」

「っ!?」


そうだとここで思い出した。


廉哉が召喚されたのは、あちらで事故にあったからだ。廉哉は一度死を垣間見たのだ。


「あいつらっ、今日はっ、今日……っ、今日は学校のはずだろ……っ、それも、あいつらは学校が違う」


混乱しながらも、心臓が煩いほど鳴り響く。


すると、後ろにいた廉哉が宗徳の服を強く引っ張った。


「宗徳さん! 行きましょう! 儀式の部屋は地下です!」

「お、おうっ」


廉哉に言われてやるべきことを認識した宗徳は、徨流に降下の指示を出す。


「徨流、降りるぞ。そんで……地下……地下か……っ、通路があるぞ!」

「っ、えっ、あっ、本当ですね!」


宗徳は魔術によるナビ機能を思い出したのだ。お陰で、その地下へと繋がる通路を見つけることができた。


「行くぞ」

「はい!」


そこは、墓地だった。城への通路はいくつかあるようだが、使えそうなのはここに繋がる道しかなかった。


「本来なら、あちら側からしか開けられないんでしょうね。でもここは……」

「ああ。違うみたいだ」


地面に扉があった。それを開けると階段があり、中は真っ暗だ。


「灯りをつけます」


廉哉が魔術で淡い光の小さな玉を五つ出した。野球のボールくらいだろうか。廉哉と宗徳を中心にして三つが腰の高さの辺りでゆっくりと回転する。これで足元は問題ない。


残りの二つは天井近くの前方と後方に浮いている。これにより、かなり先の方までしっかり見えるようになった。


「宗徳さん、美希鷹君にメッセージを送ってみます。警戒をお願いできますか?」

「任せろ。足下だけ気い付けろよ?」

「はい」


現代っ子ならばこんな時、歩きながらでも平気で『ながら打ち』が出来るのだろう。だが、廉哉も宗徳もこれには慣れていない。


気配を読めるのなら平気ではあるのだが、こればっかりは不安で出来なかった。


半分くらい進んだところで、廉哉が気付く。


「あっ、返信来ました! 『キュアが結界を張ってるから大丈夫』だそうです。それで、こちらに来たのは治季さんのお宅の裏の湖が突然光って、気付いたらということらしいです」


その話を聞いて、先ずはホッとする。


「あの、湖ってこちらと繋がっていた所ですか?」

「ああ。徨流が行き来出来る場所だった」

《くふ?》


宗徳の腕に巻き付いた徨流が不思議そうに首を傾げる。それを見つめながら廉哉が考えを口にした。


「もしかしたら、繋がりやすい場所だったのかもしれません」

「そうか……ならあいつら、怪我とかしてねえんだな」


確実に、というわけではないことは分かっている。だが、それでも安心して良い要素があれば落ち着ける。


「恐らく大丈夫です」


その思いが分かるからそこ、廉哉は頷いた。


「よっしゃ! そんなら、こんなことをやらかした奴らにキツめの灸を据えてやんぞ!」

「もちろんです!」


宗徳は拳を握って打ち鳴らし、気合いを入れて目の前に迫った扉の前に立った。

読んでくださりありがとうございます◎

今回は都合により二週空きます。

よろしくお願いします◎

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