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改善しろ!

 地下遺跡の調査隊メンバー11名は新たに発見した隠し通路を突き進んで行く。ここからは全く事前情報の無い通路とあってか、心なしか探索職(シーカー)であるカッツリーノの目は真剣だ。


「・・・もしかしたら、元大臣がここに潜伏してるかもな」


「ええ、その可能性はあるわね」


「・・・奴は必ずフレイア様の前に引きずり出してやります!」


 未だに発見されていないクーデターのもう1人の主犯格である元大臣がここに隠れているかもと聞いて、親衛隊員のタッフルは剣を力強く握りしめそう告げた。


 通路はカッツリーノが予想した通り地上へと通じているのか、緩やかな上り坂や階段が続いていた。だがここまで罠らしき物は一切無い。


「・・・もし逃走経路なら罠なんてないんじゃないでしょうか?」


「・・・分からん。だが絶対に無いと言い切れない限りは慎重に行動すべきだ」


 政務官の意見にカッツリーノはあくまでも冷静に行動するよう伝えた。


 暫く歩き続けた調査隊は、多少開けた広場に到着し歩みを止めた。奥にはまだ道が続いていたが、どうしても気になる物が目に入ったからだ。


「おいおい、こいつは・・・」


「台座、ですね・・・」


 その広場には、先程の祭壇のような場所に設置されていたのと同じような台座があった。その台座の上には―――――


「―――何も無いな・・・」


 やはりその台座の上には何も置いてはいなかった。これが何を意味するのか。


「最悪、例の<古代遺物(アーティファクト)>がもう一つ存在する可能性がある。そしてさらに最悪な可能性として元大臣がそれを持って行った・・・」


「た、大変だ!早く追わないと!」


「待て!あくまで可能性の話だ。万が一があるといけねえから、ここは俺の後ろを付いて来てくれ!」


「そんな悠長な事していられませんよ!」


 カッツリーノが説得するも、タッフルは早く大臣の後を追おうと先を急がせる。


「ケージ。あんたの魔力探索(マジックサーチ)なら―――」


「―――ああ。俺も今丁度そう考えていた」


「そうか!ケージの索敵範囲なら・・・!」

「隠し通路の先まで調べられる!」


 そう考えたカッツリーノとタッフルは一旦歩みを止め恵二の報告を待った。


 すかさず恵二は自身の与えられたスキル<超強化(ハイブースト)>を使用し、魔力探索(マジックサーチ)の索敵範囲を大幅強化する。強化された恵二の索敵範囲は800Mくらいはカバーできる。


「・・・残念だが、反応は無いな。・・・いや、待ってくれ!」


 そう思ったが微かな魔力反応を感知した。しかも割と近くでだ。


「どうした?誰か潜んでいたのか?」


「いや・・・人じゃない。というか生き物じゃなさそうな・・・。本当に僅かだけど魔力が籠った何かが近くにある。・・・あっちだ!」


 恵二が指差した方角は只の壁であった。そこは発行石が使われておらず、薄暗い石垣が積まれた壁であった。恵二が指差した方向を見つめた一行は怪訝な顔をする。


「・・・ただの壁のようですね」


「カッツリーノさん、何か仕掛けでもあるのでしょうか?」


「いや、見たところ普通の石垣にしか見えないが・・・」


 それは本当に何でもない石垣であった。さっきの仕掛け扉のような文字や動かせそうなブロックもない。


 だが、恵二は自分が元いた青の世界<アース>での情報が脳裏に浮かんだ。


(確か、どっかの遺跡で石垣の奥に隠し扉が見つかったってニュースがあったような・・・)


 それは別に何か仕掛けがあった訳でも、ましてや魔術的な要素があった訳ではなく、本当にただの石垣だった筈だ。


(―――それならば可能性はある!)


 そう考えた恵二は石垣を手で持ち上げ抜き始めた。かなり重たいので筋力を僅かに強化(ブースト)しながら作業を始める。


「お、おい。それを手でどかすつもりか?」


「ええ。もし何にも仕掛けが施されていないようなら、こうするしかないですから・・・」


「俺も手伝うぜ!」


「私は・・・無理ね。持てそうにないわ」


 一番付き合いの長いセオッツとサミの二人は恵二の言葉を疑う素振りすらしなかった。


「・・・まぁ、確かにこのまま進んでも大臣がいないんじゃあな。俺も手伝うぜ!」


「ぼ、僕も手伝います!」


 こうして力のある男達は次々と石垣を取り除いていった。奥には更に石が積まれており一向に先が見えないが黙々と作業が続けられた。石の除去作業に入ってから一刻後、ついに奥の道が見えた。


「おお!」

「まさか本当に道があるとは・・・」


 そうと分かれば作業をしている男達も俄然やる気が出てきた。更に半刻後完全に人が通れる道が出来上がった。


「・・・ふぅ」

「流石に疲れちまったぜ・・・」

「も、もう駄目・・・」


 先を急ぎたい気持ちもあったが、大臣がここにはいないと分かった今、無理して進む理由も無い。調査隊は一旦休憩を挟んだ後で調査を続行することにした。




(・・・よし!スキルも完全回復したし、もう大丈夫だろう)


 20分ほど休憩を挟んだ一行は調査を再開した。


 通路は更に狭く暗かったが、ここでも発光石は少しだけ使われており光源には困らなかった。


 相変わらずカッツリーノが先行する形であったが罠らしき物はやはり見当たらない。そして調査隊はすぐに終着点へと辿り着いた。


「・・・今度はあるな」


 その執着地点にはやはり台座が存在した。流石に三度目ともなると想像できたので驚きはしない。だが今までと違う点があるとすれば、台座の上には報告にあった<古代遺物(アーティファクト)>のメダルがちゃんと置かれていたのだ。


「流石にこの場所は将軍や大臣達も気が付かなかったようですね」


「“嘘か真か”か・・・」


「え?」


 カッツリーノが突然そう呟き思わず聞き返してしまった。その言葉は最初の隠し通路を塞いでいた壁に記されていた古代語で書かれていた一文だ。


「いや、最初は隠し通路の事を指示しているのかと思って、次は道中見かけた台座に置かれていたであろう<古代遺物(アーティファクト)>の事かと思ったんだけどなぁ」


「ああ、そういうことですか」


 これで台座は三つ目。普通に考えるなら<古代遺物(アーティファクト)>のメダルは3つも存在する事となる。果たしてそれらはどれが本物でどれが偽物なのだろうかとカッツリーノは言いたいのだろう。


「・・・あのゴーレムの脅威度で偽物だって言うのなら、本物はどんだけだよって話だけどな」


「そうですね。でも、こいつが一番入手困難だったと思いますよ?」


「これが本物かもしれないから安心ってか?そんな物騒な物を持ち帰って王女様が喜ぶかねえ・・・」


「と、兎に角!一刻も早く残りの道も調べてからフレイア様にご報告しましょう!あまりにも帰りが遅いとご心配をおかけしてしまいます」


 それもそうだなと調査隊は来た道を戻り、再び外で通じていると思われる坂道を上り進む。すると最初の隠し扉と同じ様なブロックの仕掛けが施された行き止まりへと辿り着いた。


「・・・よし、これにも危険な罠はなさそうだ。だが念の為、離れていてくれ」


 そう忠告したカッツリーノは仕掛けを施されたブロックを押し込むと、先程と同じ様に壁はみるみると開いていき、そこは王城のすぐそばにある森へと通じていた。


 時刻は既に夕方に差し迫っており、暗闇に慣れ切っていた調査隊にとっては夕日の光でも若干眩しく目を細めた。


「もうこんな時間か・・・」

「まさか、こんな場所に抜け道があるとは・・・」

「しかし、これで確定ですね。元大臣は恐らくこの抜け道から逃亡した。メダルを持って行ったかどうかはすぐガラードに問いただしてみましょう!」


 意見をまとめた調査隊は、そのまま北門から王都内へと入り急ぎ王女の下へと報告をしに戻った。




 その日の夜、食事を済ませた恵二はフレイア王女に呼び出されていた。


「ケージさん、今日はお疲れ様でした。どうぞお掛け下さい」


 夜に王女の私室に呼び出されるという事態に少年は緊張していたが、中にメイドの格好をしたリアがいるのを確認すると、安心した様ながっかりしたような何とも言えない複雑な感情が渦巻いた。恵二は自身の感情を隠すようにリアに軽口を叩いた。


「・・・なんだよその格好。まるでメイドさんだな」


「見た通り今の私は侍女っすよ。私室に呼び出されたからといい気になって王女様におかしな真似をしたら、この侍女見習いの私が叩き出すっすよ!」


「・・・本当にしかねないから怖い」


 これほどおっかない侍女もいないだろう。何せ規格外のSランク冒険者である。既に彼女の事を良く知らない兵士が新米メイドに声を掛けたら痛い目に会ったという話を恵二はまだ知らなかった。


「ふふ、彼女には暫く私の侍女見習いとして働いて貰う事になりました」


「これも何かの縁っす。情勢が落ち着くまでは面倒見てあげるっすよ」


 どうやら完全に餌付けに成功したようだ。


 恵二は知っていた。フレイアが忙しい王女の仕事の合間を見ては趣味の料理作りに励んでおり、それをリアは片っ端から腹の中に納めていることを。


 以前リアは王女の料理を食べられるなら侍女になってもかまわないと豪語していた事を思い出した。


(こいつ、本当に侍女の分際で王女様に料理を作らせる気か!?)


 流石Sランクはぶっ飛んでるなと恵二は冷たい視線をリアに送った。


「さて、今日ケージさんをお呼びしましたのは夜這いのお誘いではありません。残念ですが・・・」


「いや、ちょっと待てい!」


「ふふ、本当に残念ですがまたの機会に。実はこれの事でご相談があるのです」


 そう冗談から切り出した王女は先程調査隊が持ち帰ったメダルをテーブルの上に取り出した。


「ご存知でしょうが、ガラード元将軍がゴーレムを操る際に使役していた古代遺物(アーティファクト)と同型と思われる遺物です。研究者の見解では恐らく同じ機能が備わっていると考えられます」


「同じ機能?」


 恵二は余り詳しい話は聞いていなかったが、確か将軍が持っていた古代遺物(アーティファクト)の性能は―――


「正確にはゴーレムの生成とその使役です。この古代遺物(アーティファクト)には魔力を吸収する働きがあります。そして魔力がある程度溜まった段階で起動させると魔力相応の忠実なゴーレムを作り出すらしいのです。ケージさんが対峙した黄金のゴーレムはガラード元将軍の魔力を元に生み出されたそうです。銀のゴーレムの方はただそれを守護していた存在に過ぎなかったようですね」


 道理で強さが別次元だと思った。あの銀鎧のゴーレム達でさえ単なる警備兵でしかないとすると、このメダルから生れ落ちるゴーレムは相当のポテンシャルを秘めているのだろう。


「ガラード元将軍の話では、生み出されたゴーレムは制作者の命令を遵守するそうです。残念ながらもう一つのメダルの行方については分からないようですが・・・。そもそも隠し扉の存在さえ彼は知らなかったそうです」


 となると増々元大臣がメダルを持って逃げ去った可能性が高まった。王城は更に警備体制を見直すようだ。


「そこでケージさんにご相談があります。このメダルを持って行ってはくれませんか?」


「え?俺が?いや、しかし・・・」


 こんな危ないメダルを一冒険者に過ぎない俺が持っていてもいいのだろうかと疑問に思う。それこそ国が防衛に使えばいいのではと意見を述べたが、その提案は却下された。


「もうクーデターは御免です。父はある意味このメダルの所為で命を落としたのですから・・・。それに今はリアさんがいてくれますし、国防の方はもう暫く平気でしょう」


「うーん、でもなぁ・・・」


「危険物を押し付ける様で大変心苦しいのですが、国外に持って行ってもらえる信用のおける方は、もうケージさんくらいなのです」


「・・・分かった。何かの役には立つだろうし、最悪処分してしまうかもしれないけど構わないか?」


「はい。押し付けた身なので文句は言いません。一旦国外に持ち出してもらった後ならどうとでも処理していただいて構いません」


 そう告げたフレイアは懸念事項が一つ減った為か安堵の吐息を吐いた。


「用件はそれだけか?」


「そうですね。後は調査隊の方ですが、いかがされますか?危険は無いものと分かったので、護衛の方は結構です。依頼報酬は明日にでもお支払致しますが・・・」


 結局あの遺跡は罠や守護者(ガーディアン)は存在しなかった。親衛隊員は念の為護衛に当たるようだが、冒険者であるセオッツ達やカッツリーノは任務終了となる。恐らく報酬を受け取ったセオッツ達も早々にセレネトへと戻るだろう。


「・・・明日ここを発つよ。エイルーンへ向かう事にする」


「そ、それは!・・・また急ですね」

「寂しくなるっすね」


「思い立ったが吉日って言うからな。それに今回の遺跡調査でエイルーンへ行きたい理由も増えた」


 遺跡やダンジョン探索で必須な探索職(シーカー)の技術を少しでも早く身に着けたい。これ以上この国に残っても寄り道だろう。偶にはそれも悪くは無いが、今は夢へと一直線に向かって進みたかった。


「分かりました。でも、せめて明日の出発はお昼以降にしてくださいね?ささやかながらお見送りの宴をご用意したいと思います」


「うーん、まぁ分かったよ。でも程々にな」


 余り派手なのは勘弁してほしい恵二であたっが折角の好意を無碍にするのも悪いだろうと了承した。


「料理はとびきりゴージャスでお願いするっすよ!」


「お前の為の宴じゃねえよ!」


 この国の備蓄が本気で心配になってきた恵二であった。




 翌日、いよいよ出発の時間となった。

 

「すまないが、頼んだぞ」


「ええ、確かに受け取ったわ」


 恵二はサミに一通の手紙を渡した。それは彼女の義妹であるユリィに宛てた手紙であった。彼女は自分の何が良かったのか恵二に惚れてしまったようで、現在は恵二と行動を共にするべく冒険者を目指し活動中?らしい。


 冒険家を目指す恵二は、将来的には危険の付きまとう僻地へと赴く事が多いだろう。そんな所に何の戦闘能力を持たない14才の少女を連れて行く訳にはいかない。そう断ったのだが、ならば強くなればいいのかと尋ねられ、半ば彼女は押し切る形で冒険者を目指すと宣言したのだ。


 それが蓋を開けてみれば現在彼女はどうやらアルバイトに勤しんでいるようだ。何か別の目標でも出来たのかなと恵二は考えたのだが、それがとんでもない思い違いだと気が付くのは当分先の話であった。


「ケージ!今度は一緒にダンジョン行こうぜ!その時には俺もAランクにはなっておくからよ」


「ああ。俺もその時には立派な探索職(シーカー)になっておくさ。暫くはエイルーンに滞在していると思うから何かあったら連絡くれよな」


「ケージ先輩、どうかお元気で!」


「テラードもな!・・・後、なるべく二人のブレーキになってくれ。このパーティ最後の良心はお前だからな!」


「・・・善処します」


 まぁ、なんだかんだでバランスの良いパーティだから杞憂かなとも思ったが一応念は押しておく。


「おー、いたいた。ケージ!」

「あんた、出て行くならちゃんと挨拶していきなさいよ!」


 こちらへ駆けつけるなりそう切り出したのはロキとトリニスの<濃霧の衛士>ツートップコンビであった。


「いや、忙しいって聞いてたからさ・・・」


「馬鹿野郎!こういう時は遠慮するな!」


「ま、仕事を抜ける言い訳にもなったしね」


「トリニス!そーいうことは黙ってろよ!」


「・・・」


 どうやら仕事に嫌気が差してこれ幸いと抜け出してきたようであった。



 レアオール支部のギルドはもはや壊滅的で信用もガタ落ちであった。最初は本当に取り潰しも検討されていたようだが、<濃霧の衛士>の活躍によりクーデターを阻止できた事が評価され最悪の事態は免れた。


 だがギルド職員の現状はもっとひどかった。メルシア元ギルド長の息のかかった職員は無理やり首にされたか、酷い場合には事故死扱いになっていた。残った職員は汚職に不正だけは長けたラッセン配下の者ばかりでその殆どが首か御用となった。


 そして更に忙しさに拍車を掛けたのが後任のギルド長であった。ギルド長と同等の権限を持つリアネールの指名で、なんとあのラードがギルド長に代理就任したのだ。これには周りだけでなく本人も驚いていた。


「無茶言うな!俺に事務作業なんて務まる訳ねえだろう!?」


「あー、はいはい。そういうのは部下に任せればいいっす。貴方は優秀な職員さんの意見にうんうん頷いて、言う事聞かない冒険者を取っちめていればOKっす」


「・・・それ、別にギルド長じゃなくてもいいんじゃねえ?」


 そんなやりとりがあったものの、現在ラードは渋々ギルド長代理を請け負っている。新たな職員は後日余所から派遣されるか、<濃霧の衛士>の冒険者から何人かが推薦された。



「直接剣を交えた俺としては少し複雑な気分だが、あれで面倒見は良いらしく荒くれ者共にはそこそこ評判だ。暫くは俺達が付いていないと危なっかしいがな」


「そっか。まぁ大変だと思うけど二人とも頑張ってな」


「あんたも頑張りなさいよ。私が折角水属性の魔術を教えたんだから魔術学校では主席くらい軽く取ってみなさい」


「ああ、努力はしてみるさ」


 二人は挨拶を澄ませると、後から来たロイドとエイワスに連れて行かれた。どうやら本当に忙しいようだ。


 すると今度は近々女王に敬称を変えるフレイア王女自ら挨拶に来てくれた。


「ケージさん。今回は本当に助けられました。ヴィシュトルテは貴方への御恩を決して忘れません」


「いいさ。約束の遺跡は見せて貰ったし、それに友達が困っていたら助けるものだ」


「ふふ、今度結婚相手に困った時は助けて下さいね」


「・・・なるべく自分で努力する事も大切だと思うぞ」


 最後までからかっているだけなのか本気なのかがいまいち分からない。彼女も最初に出会った頃と比べると随分逞しくなったものだ。


「ケージさん。私から一つ餞別があるっす」


 すると横からリアの声がした。そちらへ振り返った瞬間―――――


 ―――――彼女の剣は恵二の喉元へと突きつけられていた。


『―――な!?』


 恵二は勿論の事、その場にいた全員が固まってしまった。それを行ったリア本人はどこ吹く風と気にも留めず剣を引っ込めると、恵二にだけ聞こえるよう小声でこう告げた。


「ケージさんはとってもお強いっす。それこそ瞬間的になら私以上かもしれないっす。・・・ですが、普段の貴方はとても脆すぎるっす。余り深くは追求しないっすが、その力に頼らず何かしら改善されることを強くお勧めするっすよ」


 どうやら彼女にはスキルのことを大まかにだが見抜かれているようだ。流石はSランクと言うべきか。


「・・・ああ。今回の件で充分身にしみているよ。リアこそあんまり無茶してフレイアを困らせるなよ?」


「私?控えめな上に思慮深い性格なのでどうか安心するっすよ。」


「・・・お前こそ、その性格を改善しろ!」



 この後一通り挨拶を済ませた恵二は、西にある魔術都市エイルーンを目指し旅を再開するのであった。

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