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青の世界の冒険者 ~八人目の勇者~  作者: つばめ男爵
1章 新米冒険者ケージ編
87/244

さっきのお返しだ

(・・・何だ、この反応?)


 それは王城近くで一旦大勢を整え、これから将軍の下へ突撃をしようと準備をしていた時のことであった。


 城の周辺を強化した魔力探索(マジックサーチ)で探っていた恵二だったが、突如おかしな反応を2つ捕捉した。


 片方は魔力量こそ一般人並であったが凄まじい速度で動いている反応と、もう一つは人とは異なった毛色の魔力反応であった。どちらかというとゴーレムに類似していた。


 その二つの反応はどうもお互い争っている動きをみせていた。目まぐるしく動き王城から段々と市街地の方に移動しながら激しい戦闘を行っているようだ。そちらの方角から何度も激しい爆音がここまで鳴り響いている。


「ちょっと様子見てくる」


 流石にこのまま無視するのはどうかと考えた恵二はそう告げると、王女派を指揮していたロキはそれを了承した。彼らも先程から響き渡る謎の戦闘音が気になって仕方が無かった。最悪不測の事態をもたらす可能性も捨てきれないので恵二に深入りするなと伝えつつも調査をお願いした。




 魔力探索(マジックサーチ)を頼りに謎の二つの反応の下へと駆けて行った恵二だが、丁度片方の反応がこちらの方へと向かって来るのを感じとっていた。


(―――こちらに来る?いや、追われてるのか?)


 どうやら片方がこちらの方へと逃げているようで、もう片方のゴーレムと類似の反応をした何かが追ってきているようだ。


 追われている方はこちらの味方ではないのかと、なんとなくだがそう思えた恵二は追われている方を助けるべくそちらへと向かった。


 そして二人は再開した。


「「―――見つけた!」」


 恵二は追われている何者かの反応を視認したことにより、リアは探し求めていた少年の姿が見えた事に安堵し、お互い声を重ねた。


(―――リア!?何でこいつが?ってかあの両手に持った剣は何だ?)


 普段の様子からは信じられない速さで駆けてくるのにも驚いたが、それより目が移ったのは後ろから迫ってくる金色の追撃者であった。


「お、おいリア。これは―――」


「―――詳しい説明は後っす。あのしつこいゴーレムを何とかして欲しいっすよ!」


 説明を求めた少年の言葉を遮って彼女はそう捲し立てた。確かに後ろから迫ってきている金色はゴーレムのようだ。今まで対峙してきた銀鎧と比べると小柄でスマートだが恐ろしい程の速さでこちらへと迫っていた。


 リアが恵二の横を駆け抜けるのと同時に彼女は更に言葉を放った。


「あれ超強いっす。頑丈っす。ケージさん、くれぐれも本気でいくっすよ?いいっすね?」


「お、おう?」


 彼女は猛スピードで恵二の横を通過すると身体を翻し、少年の後方で剣を構えた。すると追ってきていたゴーレムは新たな乱入者である恵二を警戒してかその動きを停止させた。


 恵二は何が何だか分からない状態で、将軍の配下であろう金色のゴーレムと対峙させられる。距離はまだ十分あるが先程の脚力を見るに決して侮れない。ここは忠告通りにスキル全開で当たるか、それとも後に控えている将軍との戦いに備え、若干抑え気味に行くか思案していたところに―――――


 ぐうううううううう


 と、間抜けな音が鳴り響いた。


「・・・リア。お前は相変わらずのようだな・・・」


「め、面目な―――ケージさん!!」


 こんな時にも背後で腹の虫を盛大に鳴らしたリアに一つ文句を言ってやろうと恵二が振り返った瞬間、リアは悲鳴にも似た声を上げた。


「―――あ」


 咄嗟に前方を見た恵二の視界には、金色のゴーレムがもう目と鼻の先にまで迫っていた。すぐに動こうとするもゴーレムは全身に謎の模様を発光させながら既にショルダータックルの構えに入っていた。


 結果、恵二はそれを諸に受ける事となる。


「―――――――っ!」


 それは正に嵐を纏ったダンプカーのようであった。黄金のゴーレムが通過したその地面は激しく抉れ、周囲の建物は衝撃で破壊されていく。リアは堪らず後方へ大きく跳躍し回避した。その真下を吹き飛ばされた少年の体が通過していく。


 そして更に止めだと言わんばかりに黄金のゴーレムは右手を吹き飛んで行った少年の方へと向けた。


「―――ケージさん、防御するっす!!」


 その意図を察したリアは大声で少年に告げるも、果たして未だに意識はあるものか。


 否、果たして生きているのか彼女には分からなかった。


 そんな少年の身へ無慈悲にもゴーレムはノータイムで魔術で追撃を放つ。散々リアへと放っていた空気の大砲とも呼べる攻撃だ。吹き飛んで行った少年は魔術を直撃され、更に勢いを増し後方にあった建物へと突っ込んで行った。


「~~~っ!!」


 それを見届けたリアは激しい後悔の念に駆られた。先程まで少年に助けを求めて逃げ回っていた愚かな自分をぶん殴りたい気分であった。リアはあれが危険な相手だと十分認識しており、彼にも忠告をしたのだが考えが甘かった。まずは自分が前に出て戦うべきであったと悔やんでも悔やみきれなかった。


 一方邪魔者を一人片づけた黄金のゴーレムはリアへと再び1対1で対峙する。彼女もこれ以上逃げ回るのは被害を大きくさせると考え、覚悟を決めて構えを取る。


 だが、次の瞬間ゴーレムは突如その場から離れた。


「・・・え?」


 とんだ肩すかしについ気が緩んでしまいそうになるが、すぐに敵の行動目的を理解すると彼女は慌てて今度は自分がゴーレムを追いだした。


「しまった!あっちは王女派の方角っす!」


 ゴーレムは確かに主に彼女の抹殺を命令された。だが、それはあくまでも将軍の邪魔者であった故に命令されたに過ぎない。


 では、城から離れた今ではどうだろうか。


 王城の近くには王女派が待機している筈である。先程王城へと忍び込む前にそれは確認していた。であれば将軍は逃げ出した自分よりもゴーレムに王女抹殺を優先させるのではないだろうか。


 そう考えたリアは王女の下へと急ぎ向かった。幸いにもスピードはこちらの方が上で、なんとか王女派一行が待機しているすぐ手前でゴーレムに追い付く事ができた。


「あんたの相手は私っすよ!」


 ゴーレムも後ろから厄介者が迫っていることを感知したのか身体を反転させ拳を振るった。それをリアは読んでいたかのように回避すると、お返しだとばかりに連撃を加えた。


「―――うお、何だ!?」

「ご、ゴーレムだ!見た事ない奴だぞ!?」

「あ、あれは・・・リアの嬢ちゃん!?」


 決戦に備え待機していた王女派達の目の前で、突如金のゴーレムとリアの二人は目にも止まらぬ攻防を繰り広げた。ゴーレムは先の戦闘で学習でもしたのか若干手強くなっていた。そう簡単にリアの攻撃を受けなくなったものの、彼女の底力も凄まじく二刀流での高速攻撃は鬼気迫るものがあった。


 何とか先程の焼き回しのように両手を斬りおとしたリアであったが、ゴーレムの身体が光り出すと彼女は慌てて距離を取った。直後ゴーレムの周囲に嵐が吹き荒れた。それは先程恵二を吹き飛ばしたタックルの際に魔法陣から発動させた魔術のようであった。


 巧く距離を取ったゴーレムは今度は別の魔法陣を発動させると自己修復に勤しんだ。


「くぅ、これじゃあジリ貧っすよぉ・・・!」


「くくく、流石の≪双剣≫も手を焼いているようだな」


 リアが泣き言を呟いていると、王城の正門から将軍が二体のゴーレムと大勢の兵士を引き連れリアと王女派達の目の前に姿を現した。


「お、おい。双剣って・・・。≪双剣≫のリアネール!あの嬢ちゃんが!?」

「何なんだよ、あのゴーレム・・・!」


 ロキ達冒険者は突然の事態に多少困惑していた。一方目の前に憎き仇が現れたフレイア王女や親衛隊員達は表情を険しくさせ、将軍を睨みつけた。


「―――ガラード将軍!」


「・・・フレイア王女。お久しぶりですね」


「黙りなさい!よくものうのうと・・・!」


 先程まで敵兵達に慈悲を持って投降を呼びかけていたフレイアであったが、目の前の男は父親である王の敵である。自然とその言葉には憎悪が込められていた。


「・・・将軍、あんた達の負けだ。大人しく投降した方が身の為なんじゃねえのかい?」


 リアには色々尋ねたいこともあったロキだが、今は目の前の敵に集中する。クーデターの首謀者である将軍がおめおめと姿を現しているのだ。先ずは挨拶代わりにと投降を呼びかけるもそれは一蹴された。


「はて、Aランク冒険者らしからぬ浅はかな状況判断だな。これでも我々が窮地だと?」


 将軍はロキの呼びかけを笑い飛ばすと右腕を掲げ合図を送る。すると何時の間にか王女派の周囲には大勢の兵が取り囲んでいた。


「―――っな!?」

「何時の間に・・・!」


「簡単な話だ。戦力が分断されるのなら始めから分けて置けば良い。お前たちは意気揚々と撃退し進んできたかのように思ったであろうが、予め主力は城の周囲に潜ませていた」


 将軍は王都で一番高い建築物である城の最上階から常に戦況を見守っていた。逐一伝令に指示を送り兵の消耗を避けつつも王女派を取り囲めるように兵を動かしていたのだ。


「確かにお前たちは腕が立つのだろうが所詮寄せ集め。こと戦術で私の軍と張り合おうなど烏滸がましいわ!」


「―――くっ!」


「そしてお前たちの頼みの綱であるそこの女も、我がゴーレムの前には無力よ!」


「・・・上等っすよ。この脳筋ショーグン!」


 将軍にそう吐き捨てたリアは構えを取ると、再び黄金のゴーレムに向かって行った。



『諸君、これでお終いだ。そして新たなヴィシュトルテ国の始まりだ!反逆者共を始末しろ!』


 ガラード将軍が高らかに演説し、兵を鼓舞させ王女派殲滅の命令を下す。


『皆さん、これで不毛な血を流すのは最後です!将軍の凶行を止め、この戦いに終止符を打つのです!』


 フレイア王女が悲劇の連鎖を断ち切るよう支持者に訴えかける。


 戦士はそれぞれの思いを抱いて剣を取る。自らの主君の為、仲間や家族の為、そして己自身の為に。



「あの金色のゴーレムはやべえ!迂闊に手を出すなよ、テメエら!」


「了解!」


 ロキは謎のゴーレムとリアの戦闘を一目見てそう判断を下した。それは二人の戦闘を一目見れば誰もが同じ事を悟ったであろう。何せ離れていても二人の戦いの余波が周りに被害をもたらしている。目にも止まらない攻防のやり取りで、辺りは逸れたゴーレムの攻撃で吹き飛ばされている。凡人では割って入る事など到底できまい。


(あれじゃぁ援護は難しいぜ)


 そう判断したロキは、まず周りに目を向けた。将軍の奸計で王女派の周囲には敵兵が所狭しといたのだ。左右後方と多数の敵兵で塞がれており、前方では人外の戦いが繰り広げられいる為、余り近づきたいとは思えない。


「後方だ!後の連中を片付けてから攻めに転じるぞ!」


 ロキの判断は至極真っ当なものであった。只でさえ人数で押されているのに包囲戦を強いられては話にならないからだ。一旦下がって背後の敵を排除し改めて全面に戦力を集中させる。誰もがその判断を間違いだとは思わなかった。


 ただ一つ問題があるとすれば、ゴーレムと激戦を繰り広げているリアが孤立してしまう事であった。


(あの嵐のような戦いには割っては入れまい!)


 そう判断したロキは決して間違いではなかった。相手が血の通っていないゴーレムである事と、非情な采配を取る将軍相手でなければ。


「両翼歩兵隊はそのまま王女派を押し込め!後方の弓兵に魔術師は半数を援護に当たらせろ。もう半数はゴーレムを支援しろ」


「え?し、しかしあの戦いに割って入るのは・・・」


 将軍たちの目の前ではリアとゴーレムによる一騎打ちがヒートアップしていた。最早その動きは視認する事が出来ず、近づく事さえできない。これでどうやって支援しろと言うのだろうかと命令を受けた兵は狼狽した。


「阿呆が。いくらでもやりようがあるであろう。何もあの中に突撃しろなぞ言っておらん。遠くから魔術や矢を射ればそれで良い」


「し、しかし狙いをつけるなど・・・」


「・・・一から説明せねば分からぬか?ゴーレムごと巻き込んでも構わん。狙いをつけずにひたすら攻撃を放て。なぁに、それくらいであのゴーレムはびくともせんよ。・・・だが、あの女はどうかな?」


 ニヤリと将軍は冷酷な笑みを浮かべた。ようやく将軍の意図を理解した兵は直ちに行動に移した。魔術師は詠唱を開始し弓兵は矢を番えリアの方へと鏃を向けた。


 そこで標的にされたリアと遠くから見ていたロキは将軍の企みに気が付いた。


「あの野郎、マジか!」


「ちょっと、流石にあれって不味くない?援護した方が・・・」


 ロキの隣でトリニスが心配そうに提案するも、目の前には敵兵がわんさかといる。敵の圧倒的物量を前に流石の腕自慢の王女派一行も押され気味だ。そんな状態では遠くで孤立している彼女の援護など出来そうにも無かった。


「・・・仕方ない。ナイフを使う」


「了解だボス。まず俺が使うぜ」


 そう進言してきたのは前回危険物(ナイフ)を手放し損ねたロイドであった。


「ああ。だが、一応使う前に投降の呼びかけと周囲の確認は怠るなよ?」


「ラジャー!」


 ロイドは元気良く返事をすると、何重にもナイフに巻き付いた布を解き前線に赴き大声を張り上げた。


「おい、王女様に仇名す野郎ども!大人しく投降しろ!でねえと大魔術が火を噴くぞ!」


 突然の呼びかけに前線で斬り結んでいた敵兵士達は、剣を置くどころか戦いを継続しながら笑い飛ばした。


「おい、臆病者がなんか大ぼら吹き出したぞ?」

「ははは、テメエが魔術師って面か?おい、相手の虚言なんかに惑わされるな!」


「・・・一応呼びかけはしたからな」


 馬鹿にされた相手にもかかわらず憐みの視線を送ったロイドは周囲をよく確認すると、覚悟を決めてエンチャントナイフをなるべく遠くに投合した。


 瞬間――――――


 ナイフの着弾地点を中心に氷の世界が広がった。


「―――んな!?」

「ぎゃああああああ!お、俺の腕がッ!足がああァッ!!」


 ロイドの投合したエンチャントナイフに込められていたのは水属性の魔術である<氷の風(アイスウインド)>であった。本来初級魔術であるこの魔術は精々が冷たい風を送り、相手の手足の一部を一時的に凍らせる程度の阻害魔術であった。


 それが恵二が強化スキルを使って込めると大魔術へと変貌を遂げた。魔術が発動された半径5メートル内にいた兵士達は全員が氷漬けにされ、運が良いのか悪いのか直撃を避けた者も半身凍ってしまった者もいた。


「げぇ!あの魔術はおっかねえぜ・・・」


「そうね、嫌な記憶が蘇るようだわ・・・」


 セオッツとサミの二人はその光景を見ると、どうしてもヘタルスの町で遭遇したあの異常者(レッド)を思い出してしまい、思わずげんなりとした表情を浮かべた。


「よし、次だ!ナイフを投げる前にはちゃんと投降を呼びかけろよ!」


「承知した!」


 こうして虎の子のエンチャントナイフを解き放つことによって王女派は徐々に劣勢を盛り返していくことになった。




「ちっ、あの魔術は一体なんだ!?ええい、まだ≪双剣≫は倒せないのか!」


「はっ!なにぶん動きが全く捉えられず、どうやって凌いでいるのやら・・・。恐らく何発かは被弾していると思われるのですが・・・」


「どんどん続けろ!アイツさえ落とせば後はゴーレムが片をつけてくれる!」


「はっ!攻撃を継続致します!」


 ゴーレムごとリアを片付けるべく、弓兵と魔術師は更に遠方から横槍を入れ続けた。




(―――無茶してくれやがるっすね、本当に・・・!)


 軽い気持ちで“手助けしてやるか”と考えていた数刻前の自分を呪い殺したいと心の中で呪詛を唱えながらもリアは四方を囲まれた敵地で化物相手によく奮闘していた。


 最初はジリ貧ながらゴーレムにダメージを与え続けていた彼女であったが、将軍の糞ったれの命令で行われた横槍が入ってからは防戦一方であった。ゴーレムの猛攻を潜り抜け、背面から無造作に飛んでくる魔術や矢の雨をなんとか弾き避けながらもまたゴーレムを相手取りと過労でお腹の虫が泣き叫んでいた。


 これだけの悪条件ではいくらSランクといえども無傷な訳が無かった。既に何本か矢は刺さり、魔術も幾つか貰っている。それでも持ち前の<幸運>スキルの恩恵かどうかは分からないが、彼女は未だに致命傷は避けていた。


 だが、力尽きるのも時間の問題であろう。


(ここまでは何とか持ったっすが、これって本当に幸運なんすかねぇ?やっぱし私<凶運>スキル持ちなんじゃぁ・・・)


 そう悪態をつくも今の彼女に出来る事は只ひたすら時間を稼ぐ事であった。その先に待つのが例え嬲り殺しであってもだ。


(あのナイフなら・・・!エンチャントナイフならこのゴーレムを倒せる筈っす!)


 さっきは少年の火力を宛てにしたのだが、自分のミスで死なせてしまった。だが、まだこちらには少年が残してくれたナイフがある。既に何本か使ってしまっているようだが、1本でも残っていれば突破口を見い出す事が出来る。それ程の威力があのナイフには秘められていた。


 だが、それには彼らが敵兵の群れを突破しリアの下へと来てくれなければならない。勿論エンチャントナイフを温存してだ。


(分が悪すぎるっす!でも、私は幸運の女神。ベットする価値はある筈っすよ!)


 いまいち信用出来ない自身のスキルに淡い期待を持ちながらもリアは耐え忍んだ。矢に魔術を受けながらもゴーレムと激戦を繰り広げた。その激しい戦闘は最早凡人には近づく事さえ敵わない領域へと近づきつつあった。



 だが、その人外同士の戦闘領域に何者かが割って入った。



 その者は臆することなくその領域に踏み込むと、狙い違わず黄金のゴーレムの頭部を拳で豪打した。



 誰もが呆気にとられた。その満身創痍の少年は金色のゴーレムを城壁に吹き飛ばすと、更に追打ちとばかりに無詠唱の魔術をゴーレムに浴びせ冷たくこう告げた。


「・・・さっきのお返しだ」


 それは死んだとばかり思った少年の声であった。リアは見事賭けに勝ったのだ。

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