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強すぎるんだもん

「Sランク冒険者……俺が?」


 何を言っているのだ、このおっさんは


 そんな表情をフルーバーへと向けた。


 恵二の訝しげな視線をフルーバーは気にも留めず話を続けた。


「Sランクへの昇格にはギルドマスター、つまり俺の承認さえあればいい。腕の方も問題ないだろう。何しろ聖騎士の一部隊を単騎で撃退したんだからな!」


 フルーバーはうんうんと何度も頷きながら嬉しそうに語りかけた。だが今の言葉に恵二は色々とつっこみたいところがあった。


「ちょっと待ってください!俺一人で戦った訳じゃないですよ!?ダン先輩とリアがいてこそです!」


 確かに自分自身でも戦いにかなり貢献できたと自負してはいるが、では一人で勝てたかというと、それには首を横に振らざるを得ない。


「無論分かっている。だが君は聖騎士の副団長を一人で倒したと聞いているぞ?要はインパクトの問題だ。Sランクに推すとなれば、それくらいの箔は欲しいところだからな」


 つまりフルーバーはSランクになる気なら、恵二を今回の立役者にすると言っているのだ。確かにリアネールとダンが口裏を合わせてさえくれれば、たった一人で聖騎士団を退けた少年冒険者の誕生だ。周りは納得をするし世間は大いに沸くであろう。


「いや、そもそも俺はSランクになりたくはありません」


 恵二はきっぱりと断った。だが相手も事情があるのか、そう簡単には引き下がらなかった。


「む、それは勿体ない。いいか、よく考えてみてくれ。Sランクだぞ?Sランク。若手冒険者の憧れだし、かなりモテるぞ?勿論給金もAランク以下とは大違いだ。子供たちの将来なりたい職業No.3の人気職トップランクだぞ?」


 何だか妙な勧誘文句であったが、どうやらフルーバーはどうしても恵二にSランク冒険者になって欲しいようだ。


「いや、遠慮します。他にやりたいこともありますし、お金もそこそこ稼げているので平気です。モテるのは少し惹かれますけど……。というかNo.3って微妙な順位じゃないですか?ちなみに一位と二位は?」


「……勇者に聖騎士」


 フルーバーは何とも言えない表情でぼそりとそう呟いた。


 またそれを聞いた恵二もどう返していいか言葉に詰まった。何しろ自分は元勇者で、その上聖騎士はつい先日ぶっ倒してしまったばかりだからだ。


(ちなみに冒険家って何位なんだろう?)


 そんな関係ないことを考えて黙り込んでいた恵二へ、フル―バーは更に畳みかけるようにして勧誘を続けた。


「Sランクともなれば、通常の冒険者たちとは扱いが一線を画す。今回の様に魔導飛行船を度々利用することができるし、各国のお偉方ともお近づきになれる。現役を引退してもギルド長以上にはまず就ける。将来安泰だぞ?」


 どうだと言わんばかりにフル―バーは捲し立てるも、恵二は今の誘いに何一つメリットを感じなかった。


(飛行船なんか冗談じゃない!二度と乗りたくない!各国のお偉方?既に王様や女王様と知り合いだしなぁ……。ギルド長なんて面倒な立場は御免だよ。老後?生涯ずっと冒険活動をするさ)


 あれこれと言葉を並べても全くなびかない恵二にフル―バーはついに泣き言を交えつつ懇願をしてきた。


「頼む!現時点でSランクの適任者は君しかいないんだ!どいつもこいつも命令を無視するわ、まともに依頼を達成できない奴ばかりでもううんざりなんだ。この前も≪魔帝≫に賊を討てと依頼を出せば森ごと吹き飛ばすわ、≪咆哮≫に護衛を頼めば余計な事に首を突っ込んで貴族まで斬りつけるし……」


「うわぁ。それってもう犯罪者なんじゃぁ……」


 Sランク冒険者の暴走っぷりに恵二はどん引きし、思わず素直な感想をこぼした。


「う、いや……森を吹き飛ばしたのは多勢の賊と交戦する際に止む無くと聞いてはいるし、≪咆哮≫が斬った貴族というのも罪人だったため、先方からはこれといっておとがめは無かったのだが……。しかし如何せん、あいつらは加減というものを知らん」


 流石に言い過ぎたと思ったフル―バーは一旦フォローを入れるものの、その後は恵二への勧誘からいつの間にかSランク冒険者への愚痴へと変わってしまった。


「何時も連中の尻拭いをするのは俺の役目だ。≪双剣≫なんか年中トラブルを引き起こすし、≪隠者≫は引きこもってばかりでろくに顔を見せやしない。挙句の果てに≪背教者≫の奴、ハーデアルト王国に仕えるから冒険者を引退しますだぁ!?振り回されるこっちの身にもなれってんだ!」


「……ハーデアルト?」


 半分聞き流しながらもフル―バーの愚痴に付き合っていた恵二であったが、そこに意外な国の名前が上がり、つい聞き返してしまう。しかしフル―バーは“少し話しすぎたか”と呟くだけで、その件についてはそれ以上語らなかった。


「……おほん。とにかく現状Sランクでまともなのは≪天剣≫と≪鎧龍≫だけでね。その点、君は常識人なようだ。それにリアからは相当な実力者だと聞いてもいる。あんなポンコツより、是非ともケージ君にSランク冒険者になって欲しいんだ!」


「―――誰がポンコツっすか。頑固じじい」


 突如声のした背後を振り返ると、何時の間にかリアネールが入室していた。


「誰がじじいだ!俺はまだ47歳だ!初孫も当分先だ!」


 フル―バーは暴言を吐いたリアネールへ反射的にそう言い返した。もっと若いかと思っていたが、50近くであの体型とは驚きだ。フル―バーは現役冒険者に引けを取らないほど筋肉質な体つきであった。


「嫌な予感がして早々に食事を切り上げて戻ってみれば……何ケージさんを無理やり勧誘しているっすか?」


(え?早々に?)


 恵二が覚えている限りでは相当の量を食べていた筈で、彼女の言葉が正しいのならここに来る直前まで食べ続けていたことになる。それのどこが“早々に切り上げて”だと叫びたい衝動に駆られた。


「誤解を招く言い方をするな!決して無理やり勧誘をしていた訳ではない。だが彼には素質がある。それにお前らと違って良識もな。当然声もかけるってものだ」


「む、失礼な。私だって良識くらい持ってるっす」


 胸を張ってそう言い返すリアネールをフル―バーは鼻で笑った後にこう続けた。


「もうギルド会議で苦情を言われるのは御免だ!前回も“ギルドマスターの選んだ方々は確かに優秀ですが、せめて話の通じる者に限定して頂けませんか?”って言われたんだぞ!?毎回会議でSランク冒険者の引き起こした被害額を聞かされるこちらの身にもなれ!」


「う、こっちだって色々と大変なんすよ!?過密なスケジュールに思わぬ横槍。それを私は臨機応変に対応しているだけっす」


「それでは侍女見習いになったのも臨機応変な対応だとでも言うつもりか!?」


 二人はすっかりヒートアップして言葉の応酬を繰り返している。それを恵二は“一体何時になったらこの茶番は終わるのだろう”とうんざりしていたが、よくよく考えてみれば別に付き合う必要もないことに思い至り、お互い批難しあっている二人を尻目にそっと部屋を退出した。


(よし、明日にはここを発とう!)


 夏休みもあと僅か。せめて残りの日だけでも旅行気分を満喫したい恵二であった。





 ギルドマスターであるフル―バーとの話し合いを終えたシリウス団長率いる聖教国騎士団は、その会談内容を伝えるべく直ぐに聖都セントレイクへと帰還した。


 教皇へと謁見の許可を得るとシリウスはフル―バーが出した条件や今後の話し合いの日程についての報告を済ませた。だがそこでまた一悶着あった。


 穏健派である教皇派閥と、過激派とも呼べる反教皇派の者による言い争いである。


 今回の騒動は完全にこちらに非があり、冒険者ギルドと穏便に話し合いをしていこうという一派と、冒険者ギルドと敵対してでも例の少年から情報を引き出そうと目論む者たちとの口論であった。


 最初こそ後者である過激派を擁護する者が多かったが、その件の少年は既に国外へと逃れており、その身柄を押さえることは最早困難を極めていた。故に現在では教皇派の意見が大多数を占めており、このままであれば間違いなく今回の騒動はギルドとの和解という形で幕を閉じるであろう。


 だが過激派の中心人物とも呼べるカムール・アスラ枢機卿にとっては、どっちに転ぼうとも全く構わなかった。


(これで教皇の面子を潰す事が出来た。それにダンジョン内のアンデッドの件もある上に<神堕とし>が治まったわけでもない。何一つ問題を解決できず決断も遅い教皇。シディアムを教皇の座から引き落とすにはこれで十分だ)


 内心ほくそ笑みながらもカムールは、未だに議論が続いている会議の様子を静かに伺っていた。




(ふん、政争なぞくだらん。教皇も枢機卿もよく飽きずに囀るものだ……)


 簡潔に報告をし終えたシリウスは早々に大教会から姿を消すと、今回の騒動の発端とも呼べる≪蠱毒の迷宮≫を目指した。



「―――っ!お疲れ様です!」


 欠伸を噛み殺しながらダンジョンの入口へと続く通路の扉を見張っていた兵士は、聖騎士団長であるシリウスの姿を見ると直ぐに姿勢を正し敬礼をした。


「うむ。中の現状はどうなっているか?」


「は!迷宮内は現在、聖騎士様10名が調査中でございます。黄金衣聖騎士団の方たちも調査の同伴や物資の搬入及び出入り口の封鎖を支援されているとのことです」


「そうか、ご苦労」


「は!」


 兵士は憧れの聖騎士団、それも団長自ら労いの言葉を掛けられ、心底嬉しそうに敬礼をした。それをシリウスは気にも留めず迷宮の入口を目指して進んで行く。恵二たちとは違う正規ルートである正面通路から進むと、すぐに迷宮入口へと到着をした。


「シリウス団長!」

「お疲れ様です!」


 そこには見知った顔の聖騎士団員が二名いた。


「ダンジョンに変化はないか?アンデッド共の様子はどうか?」


 ≪蠱毒の迷宮≫からは突如アンデッドが大量発生したと報告を受けている。聖都に駐留していた聖騎士たちは副団長ミグゥーズ指揮の下、その半数がダンジョンへと送り込まれていた。アンデッドやそれを発生させ従えていると思われる警告する者(アドゥマナターズ)を牽制する為である。


「は!今のところは異常の報告は受けておりません!」


「ですが相変わらず<回廊石碑>での転移は不可、また神聖魔術で起動していた転移魔法陣もその効力を失い、現在使用できません!」


「……そうか」


 どういった理由かは不明だが、つい先日から<回廊石碑>が反応しなくなったのだ。少年が神聖魔術で起動させた魔法陣はただの時間切れだが、<回廊石碑>はそもそも<神堕とし>の影響下でも問題なく使えていたのだ。これには先行して迷宮を調査していた聖騎士たちも揃って首を捻っていた。


「他の連中は中か?今どの階層辺りだ?」


「つい先程の報告では、30階層まで到達したとのことです」


「遅いな。分かった、私も合流しよう」


 この短い期間で30階層も進めたことは素晴らしい進行速度だと言えるのだが、それでも聖騎士団団長からすると不十分ではあるようだ。


「は!お供を致します」

「露払いはお任せください!」


 二人の聖騎士が同行すると申し出るも、それをシリウスは首を振って断った。


「貴様らの任務は出入り口の封鎖であろう?我々が万が一アンデッド共を取りこぼした場合、貴様たち二人が最後の砦となる。しっかりと見張っておけよ?」


「―――了解です!」

「朗報をお待ちしております!」


 二人の聖騎士に見送られたシリウスはたった一人で≪蠱毒の迷宮≫へと踏み入った。



 ダンジョンに入るとまず目に入るのが<回廊石碑>であった。シリウスや他の聖騎士たち全員は少なくとも47階層より下へと潜った経験がある。普段なら40階層まで転移できるのだが、今は<回廊石碑>が使い物にならない。よって現在は迷宮内をいちいち徒歩で降りていかなくてはならないのだ。


 <回廊石碑>を無視して地下2階層に降りたシリウスは一人黙々と進むと、とある分岐点で右へと進路を変えた。その道は地下3階層へと続く最短ルートから外れていた。それどころかそこは行き止まりの通路であった。既に視線の先には行き止まりの壁が見えている。にも拘わらずシリウスは真っ直ぐに突き進むと、道を塞いでいる壁へと手を当てた。


「……私だ。開けろ」


 たったそれだけで行き止まりであった壁は、まるで幻であったかのように開いていき、先へと進む道を露わにした。その道をシリウスは躊躇う事無く進んでいく。すると今度は扉が現れた。その扉もシリウスは躊躇せず開くと、その先の室内には<回廊石碑>が光り輝いてそびえ立っていた。


 その石碑へとシリウスは近づいていくと、石版には様々な数字が光り輝いており、その数字全てが転移可能な階層を指していた。その中でシリウスは一番多い数字“63”を選択する。すると使えない筈であった転移装置はとくに問題なく起動をし、あっという間にシリウスを迷宮の真の最深部まで転移させた。


『思ったよりも遅かったな。地上でトラブルでもあったかね?』


 転移直後、シリウスの頭に念話が響いた。


「……お蔭さまでな。貴様らのくだらないミスの所為で余計な手間が増えた」


 シリウスは視線の先にいる黒い影を睨みつけながらそう呟いた。


『そう責めるな。こちらとしても想定外だったのだ。まさかあれ程の猛者が集まろうとは……。それに邪魔者を迷宮から遠ざけるのは貴公の仕事であろう?』


 嫌味を口にしたにも関わらず、あまり気にした様子の無い念話が返ってくる。それが一層シリウスの神経を逆なでする。


「私とて立場というものがある。常に聖都にいるわけではない。その為のダンジョンマスターであろう?トントンの奴はどうした?」


 シリウスがそう尋ねると、黒い影の更に奥にある壁の横からこちらを覗き込むようにして顔を出す何者かの姿があった。


「お、おいらちゃんと仕事をしたよ!?転移だって使えなくしたし、朱王鬼(ブラッドオーガ)だって出して冒険者を追い返したんだから……!」


 そう言い訳を始めたのは、小人族よりも小さい男の子であった。彼こそこのダンジョンの創造主にして箱庭の精霊(ダンジョンマスター)でもあるトントンであった。そんな彼は自分がシリウスに責められるのではと怯え壁に隠れながら弁明をした。


 だがその努力も空しく念話の声の持ち主が余計なことを暴露した。


『そもそもお主が勝手に骸骨の戦士(スケルトンファイター)を持ち出さねば、奴らは大人しく引き下がっていったのだ……』


「だ、だって!あいつら強すぎるんだもん!それでおいら……」


 そこまで語るとトントンは俯いてしまった。二人の会話を察するに、どうやらトントンの迂闊な対応で冒険者たちにアンデッドの存在を勘付かれてしまったようだ。それを知ったシリウスは苦々しい表情を浮かべながらも今後どうするか頭を巡らせる。



 聖教国騎士団を率いる団長にして、四大使徒の一人。これがシリウスの表向きの顔であったが、その実彼は大陸に住む全ての人族に弓を引く裏切り者であった。彼は全て知っていた。<神堕とし>とは何なのか、誰が引き起こしているのか、そしてこれから何が起きるのかを。


(トントンめ、臆病風に吹かされ臆したか……。いや、まさかSランクの冒険者を二名も呼び寄せるとは……。教皇の動きを掴めなかった私の落ち度か)


 ダンジョン内にアンデッドたちが潜伏していることは現時点ではまだ知られたくなかった。その為ダンジョンマスターであるトントンには、アンデッドたちがいる下層部分には人を踏み入れさせないよう防衛を徹底させていたつもりだが、それでも甘かったようだ。



「こ、今度こそしっかりと守るよ!おいらを助けてくれたシリウス様の頼みだ!約束するよ!」


 約束事を尤も大事にする精霊種であるトントンがそう口にするも、シリウスはそれを全く信用していなかった。この精霊は約束を命を懸けて守ろうとはするだろうが、それが果たされるかは全くの別問題であったからだ。


「……こうなれば、些か不自然でも構わん。下層へと続く道を全て封鎖しろ。アンデッド共は決行日まで温存をしておけ」


 シリウスの命令にトントンは目を見開くと、恐る恐る返答をした。


「け、けどシリウス様。女王様は道を完全に塞ぐのは駄目だって……約束をやぶっちゃうよ?」


「それを言うなら貴様は既に毒を使っているではないか。気にするな。一度は死んでアンデッドとして蘇った身だろう?その時点で誓約も絶たれた。貴様は主である私の命令に従っていればそれでよい」


「わ、わかったよ……」


 元気なくそう返答をするとトントンはダンジョンマスターの権限を行使してダンジョンを創り変え始めた。



 精霊の女王自らが生み出した箱庭の精霊(ダンジョンマスター)たちは、基本女王の命令(やくそく)には絶対服従であった。


 だが、何事にも例外はある。


 箱庭の精霊(ダンジョンマスター)は通常の精霊種とは少し違った生き物だ。人を理解するという名目の為、その身もまた人に近い生態となっている。寿命こそ不死身に近い箱庭の精霊たちであったが、食事も好むし睡眠もとる。そして何かの拍子でうっかり怪我や病気、そして死んでしまう精霊もいた。


 このトントンもその例外ではなく、興味本位で自らのダンジョン内を散策していた時、偶々遭遇した者に殺されてしまったのだ。死んだはずのトントンが次に目を覚ますと、そこにはシリウスが立っていた。彼こそ一度は死んだはずのトントンを禁断の死霊魔術で蘇らせた本人であった。


 それ以降トントンは恩人であり主でもあるシリウスの言葉には基本服従をしていた。今も彼の命令で王女との約束を反故にし、ダンジョン最深部に続く道を全て封鎖しようとしていた。それは生前の彼であったのならば絶対にしない行為であった。



 すぐに道を変えるのは不可能であったが、聖騎士たちは未だに30階層辺りを彷徨っている様子。下層部へ到達する前にはアンデッドたちを壁の向こうへと匿うことができるであろう。


「それで?貴様は何時まで迷宮に引きこもっているつもりだ?王の守りには就かなくてもよいのか?」


 トントンとの話にケリをつけたシリウスは、今度は警告する者(アドゥマナターズ)の長、深淵の杖(スカルロッド)へと話を振った。


『問題ない。あそこは高位の魔物すら踏み入れることを躊躇う魔境。それに私には他にやることがある。その準備が整うまでは今しばらくここに居座らせてもらうぞ?』


「……好きにしろ。私はそろそろ騎士団へと戻る。トントン、連中が来る前に壁できちんと塞いでおけ」


「わかったよ、シリウス様」


 頼りない返事ではあるが、しっかり言質をとったシリウスは<回廊石碑>で再び地下2階の隠し部屋へと戻った。今度は表の顔、聖騎士団長シリウスとして行動をする。


「ふん、神の使徒というのも存外楽ではないな」


 独り言をつぶやいたシリウスはそのまま何食わぬ顔で聖騎士団へと合流するべく迷宮内を歩み始めた。

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