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ルームシェアと一輪の花。  作者: 松田葉子
3/4

男子会。

夜、台所で料理を作っているひろや。

玄関の方から鍵を開け、誰かが入ってきた物音がする。

リビングに現れたのはけんとだった。

両手にはお酒が入ったビニール袋を提げている。

彼と同世代くらいの男も一緒だ。

「ただいまー。ひろやさん、ゆうじ連れてきたよ。」

そう声を掛けてからお酒をテーブルの上に置いたけんと。

「お邪魔します。」

ゆうじと呼ばれた男はひろやにぺこりと頭を下げた。

ひろやは手を止め、ゆうじの方を見た。

「いらっしゃい。初めまして、ひろやです。よろしく。」

「初めまして、ゆうじです。ひろやさんのご飯、メッチャ美味しいってけんとから聞いてたんで、今日食べるの楽しみにしてたんです!!」

「けんと、そんな風に言ってたの?嬉しいねぇ。ゆうじくん来るって聞いたから、いつも以上に張り切って作ったよ。けんとの好きな唐揚げもあるから。」

「マジ?!やった!!ご飯も酒も進むな!!」

そんなやり取りをしていると、背の高い男も帰って来た。

「ただいまー。酒とつまみ買ってきたよー・・・って、もしかして、酒、既にある?」

テーブルの上にあるお酒に目が留まった男。

「あ、買ってきちゃった。連絡しておけば良かった。でも、余ったら余ったで後日飲みましょ。あ、まささん、ゆうじ。」

「どうも、初めまして、ゆうじです。今日はお世話になります。」

ゆうじは男にぺこりと頭を下げた。

男は頭を掻きながら

「うん、まさひろです、よろしく。」

と言った。

漸く背の高い男の名前が判明した。

「ちょっと着替えてくるわ。」

そう言って、まさひろは二階の自室へと向かった。

「とりあえず、今飲むやつ以外の酒、しまっちゃうね。」

けんとは500mlの缶ビール四本袋から取り出し、残りを冷蔵庫へとしまった。

ゆうじは

「ひろやさん、何か手伝いましょうか?」

と声を掛ける。

「じゃあ、出来てる料理、運んでもらおうかな。」

分かりました、とゆうじ、料理をテーブルに運び出す。

酒をしまい終えたけんとは、トイレと洗面所へ。

それからちょっとすると、まさひろが二階から降りてきて席に着いた。

続いてけんと、ゆうじ、ひろや。


「じゃ、乾杯しよっか。」

と、ひろやが言うと、各々缶ビールのプルタブを開けた。

プシュッと音が聞こえる。

「かんぱーい!」

とひろやがビールを掲げると、あとの三人も

「「かんぱーい!」」

とビールを掲げてから、皆一口飲んだ。

「あー!!やっぱ仕事から帰ったあとのビールは、美味いなぁ。」

まさひろが嬉しそうに言うと、けんとが

「まささん、一本は絶対飲むよね。あと風呂上がりにも一本。」

と言った。

「風呂上がりのビールも美味いんだよ。」

それを聞いてうんうんと頷いてから、ゆうじはまさひろに質問した。

「まささんって、何でルームシェアしようと思ったんですか?」

「俺は誰かと一緒にいないとダメだから。」

「え、どういうことですか?寂しくて死んじゃう~ってことですか?」

するとひろやが会話に入ってきた。

「違う違う。まささんねぇ、一人暮らしするスキルがないのよ。家事が一切出来ないの、この人。」

手をヒラヒラさせるひろや。

「え、そうなんですか。じゃあここに住むまでどうしてたんですか?まささん、歳30・・・」

「5。」

とだけ答えるまさひろ。

「35。35歳ですから、実家暮らしだったわけでもないですよね?」

「うん、彼女と暮らしてた。彼女に色々世話してもらってた。けど、フラれた。」

「えっと、確か「まーくん、何で私と付き合ってるのか分かんないよ!」「家事やってくれるから。」って答えたんだっけ?」

けんとが声真似しながら言った。

まぁ、真似と言っても、彼女については会ったこともないので、勝手な想像なのだが。

それを聞いたまさひろはコクンと頷く。

「うわ、ひどっ!!まささん、それはないっすよ~。」

ゆうじはゲッとした表情になる。

「あとは、「まさは私といるとダメになる。甘えるから。自立しなきゃ。まさの為に別れる。」とか。」

けんと、再び声真似。

さっきのはブリブリな感じだったが、今度はクールな彼女をイメージしているらしい。

「お・・・っ、何か良い女っぽいけど、まささんの為って言うなら、家事を教えてから別れてほしかった・・・。」

と項垂れるゆうじ。

「本当にそう。」

ひろや、ゆうじをビシッと指を指す。

「あとあと!!これが凄いんだけどさ!!「あんたは家政婦とデリヘルがいれば、それで良いんでしょ?!」って言われたんだって!!」

けんとのテンションが高くなる。

「うん。そうだなって納得したよ。」

腕組みするまさひろ。

「いやいやいや!納得しないでくださいよ!!」

と突っ込むゆうじ。

けんとは遠い目をしながら、

「三人で住み始めた頃はさ、家事を当番制にしようってことになってさ。」

とゆうじに言った。

「まささん、その段階で何か言わなかったんですか?」

「言ったさ。出来ないけどそれでも良いのかって、二人に訊いたよ。」

「でもさ、出来ないって言われてもさ、それがどの程度か分からないじゃん?会って間もないしさ。もしかしたら謙遜してるだけかもしれないし。」

とひろや。

「俺さぁ、米研ぐときに洗剤入れる人がいるって話は聞いたことあるんだけどさ、研ぎ石で米研ぐ人は初めて聞いたし、見た。」

またしても遠い目をするけんと。

「は?!研ぎ石?!研ぎ石って、あの・・・?」

「そう、包丁を研ぐ、あの研ぎ石。」

ひろやは無表情で言った。

「米が米粉になってた。」

棒読みで言うけんと。

「だってさ、「米を洗う」って言われたらさ、俺も出来たよ?でも、「米を研ぐ」って言うからさ、研ぐものが必要なんだって思ったわけよ。」

「いや、思わないです。」

バッサリと否定するゆうじ。

「台所用品で研ぐものと言えば、研ぎ石しかないよな!って思ってさ。」

「何でそういう知識はあるのに、米の研ぎ方は知らないんですか!」

ゆうじの言うことは全くだ。

「思い返すとさぁ、俺、小・中のときの家庭科の調理実習、休んでるか皿運んでるかのどっちかだったんだよね・・・。」

「マジかよ・・・。」

ゆうじは絶望的になる。

「掃除やってもらっても掃除前より散らかるし、洗濯も色移りとか、タオルと洋服一緒に洗うから、洋服にタオルの繊維メッチャ付いたりとかしてさ・・・。」

フッと投げやりに笑うけんと。

「だから、家事が一番うまいひろやに頼んでる。時々けんとも。」

「まあ、俺はひろやさんが忙しいときとか、気が向いたときとか。基本的にはひろやさんの料理が食べたいし。特に唐揚げ。」

そう言われてゆうじは唐揚げを一口食べる。

「確かにすんげぇー美味い!!ジューシーだし!!」

「最初に鶏肉を水に漬けておくのがコツなんだよ。」

とひろや。

「へぇー!あとで詳しく教えてください!」

分かったと頷くひろや。


「おぉ~い、邪魔するぞー!」

玄関から声が聞こえてきた。

「大家さん。」

とまさひろ。

「ほら、お前も上がれよ。」

と言う大家の声が。

「ん?他にも誰かいるのか?」

と玄関の方を見るけんと。

「本当に良いんですか?お邪魔して・・・。」

もう一人の男の声も聞こえた。

「大家が良いって言ってるんだから、良いんだよ。」

と言いながら、リビングに現れる大家。

「いくら何でも、横暴じゃないですか・・・?」

ともう一人の男がそのあとに続く。

「あの、大家さん、この方は・・・。」

ひろやがおずおずと訊く。

「俺の飲み仲間のよしおか。と言っても、正確にはいつも顔合わせるだけで、話すのは今日が初めてだよな。」

と、よしおかと言う男の背中をバシッと叩く。

「ちょっ!痛いですよ・・・。」

迷惑そうな顔をするよしおか。

「で、大家さん、このよしおかさん連れてどうしたんですか?」

とまさひろ。

「まぁ、座れや、よしおか。」

と、大家が空いてる席によしおかを促す。

「大家さんが言うかな・・・。」

とボソッと呟くけんと。


大家は全員の顔を見渡してから言った。

「お前ら、今からここで、ゆいと見合いしてくれ。」

(つづく)

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