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「……一つ質問だ」 エイフラムは、前髪の影で目線を隠した。
「何だ」
炎の魔術師が微笑む。そして左の瞼から転がった血粒をペロりと舐める。 「この、ここにいる補給班の人々を焼いたのは貴様か……」
「そうだ。あくまで“鎮圧”せねばなるまい。」
エイフラムは暫く俯いた。
「……わかった。」
肘を怒らせ、エイフラムの顔面が青筋が幾重にもはしっていた。眼が血走る。犬歯が知らず知らず自らの唇を突き刺した。
「そうそう、そこに、寝転がっているガキが悪いんだがな」
炎の魔術師が、顎でパプキンの方を示す。
顔面が血と、土にまみれ、身動きをしていない。
エイフラムは、その言葉をきくやいなや、地面をつま先で蹴り上げて土埃を舞い上げた。 炎の魔術師と間合いが腕の届く長さに詰まった。そして、青白い閃光が一筋、扇状に拡げる。
「ほぅ……貴様、本物だな」
魔術師はますます嬉々とした口調になった。と、同時に厚い鉄に覆われた靴で、エイフラムの前のめりの身体を蹴り上げようとした。 が、エイフラムは燕のように身軽に蹴りを躱す。 エイフラムは、コマのようにクルクルと動かし、同時に回転する体の周りを剣先で円を描く。
「……くっ!」
魔術師はたまらず高熱の炎で障壁をつくる。そして、大蛇のような火炎をのばしてエイフラムに襲いかかる。
「……クズめ。」
短く吐き捨て、エイフラムは剣の円を幾つも重なり炎の異形を切り裂いた。エイフラムの茶色い毛先に火の粉が舞う。
(す、すごい……。)
真希は目を見張って二人の戦闘を見ていた。
数千位の規模で同等と言われた魔術師相手に、たった一人が優勢に立っている。 いや、それだけではない。今のエイフラムには確かに勝たねばならない理由がある……同胞が殺された。仲間が傷つけられた。
……無意識のうちに、胸元で両手を握っていた。 無表情の仮面をかぶっていたのは、本当は大事に考える人が多ければそれだけ傷つくのだと、だから敢えて関わらないのではないか……と、真希は類推した。
(きっと、だれより、彼は優しんだ)
佇んでいる真希は、人々の燃やし尽くされる中、この異邦人としてこの場にいることの意味が、いやどうするべきなのか、理解できた気がした。
なおもエイフラムの剣は大気を奔り、あるいは敵の肉を断つため、炎の隙間に滑り込む。 (おいおい、一体、どういうことだ!) 魔術師は冷や汗をかいた。 魔術師はもちろん、近接戦闘でも負けなしの己が、たかだか小童一人に押されている。
「ありえない、ありえない、ありえない」
彼の全ての毛穴から、まるで糸のようにワラワラと炎が垂れだした。
「……チッ」
エイフラムは踵で踏みとどまり、様子を静観した。




