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真希は、壮一にたしなめられ、砦の中央に帰ることにした。

(どうしてなにもできないのに、あんなに勇ましい言葉を吐いたんだろ。)

真希の右手には、ナイフを掴んでいる。岩肌を滑るように降りて、沈鬱な森の影の隙間を縫うように歩く。空気が冷え切っている。土は戦争の前の匂いと変わらず、湿っている。食べ物の香りがした。

ようやくテントの頭がみえた。補給班の人々が、いまだにコマみたいにクルクルと回るように働いていた。ああ、この人たちも戦っているんだ、と、真希は、メガネをかけ直す。

「はぁ」出るのは、ため息ばかりであった。

「あっ、真希さん。」

ナターシャは、腕をまくり、傷ついた者の対応と、調理と、それぞれ上手く立ち働いていた

「あ、うん」

「どうしたんですか?」

ちょっとね、と苦笑いで誤魔化す。眉を八の字にしたナターシャ。先ほど、多くの死傷者を眺めた彼女は、まるで何かに駆り立てられたような使命感でここから走り去った。が、また戻ってきた。

「もしかして、なにか言われたのですか?」

うっ、と短く呻き、アハハと真希はお茶を濁す。すると、ナターシャの後ろから、綺麗なハゲ頭がきた。

「あっ、真希さん。どうしたんですか、さっき。」

「うるさい! あ~もう、ごめんなさい。すいませんでした!」

「へ?」パプキンは、測り兼ねたように、ナターシャに助け舟を求める。

「たぶん、真希さんは、門の守備で追い返されたのだと。」「あ! そうなんですか。なんだ、ひどいですよ! この男パプキンをおいて抜けがけするなんて。」

「あーあー聞こえないー!」

真希は耳を塞ぎ、しゃがんだ。

「コラ! あんたたち。もう、そんなとこで遊んでないで、手伝っておくれ」

おかみが、怒りながら、三人に注意する。

「はい」と、応じた――その時である。巨大な爆発がテントや、森、黒馬の人々を揺らした。「な、何っ!」砂埃を服の袖で払いつつ、真希は、片膝をつきながら、辺りを見回す。調理器具がバラバラと地面に叩きつけられ、湯種が散らばる。それから、息苦しい程の熱が頬を撫でる。上空から膨大な熱量が感じられた。

「やあ、黒馬の諸君。」

朗々とした調子の男の声がした。

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