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そこから、彼は一方的に黒馬の民に心を寄せている。

 「しかし、あんな奴、古い甲冑に身を固めた白痴だろう。」

 グリアは真剣な顔で言う。

 「まるで、ドンキ・ホーテみたいな男ですね。」

 壮一が、口を挟んだ。 

「……とにかく、兵は一人でも多い方がいい。」 

「まあ、そうだ。期待はしていない。交渉はお前に任せた。」

 エイフラムは頷く。 

「だが、俺だって考えはある。いいか?」 

グリアが一気にまくしたてる。 

まず、このあたりに散らばる盗賊団に支援を要請する。しかし、そのうちでも勢力の多い《土の盗賊》と、《森の盗賊》の二つに交渉すること。

 「ばっ、馬鹿な! そんなことしたら、中原諸国を刺激しかねんぞ、いいか? 今は各国が盗賊団を討伐することに躍起だ。この時期、そんなことしたら、どうなる?」 

パプキンは唾を飛ばす。

 「何、奴らの足並みを揃えておらんぞ。それにな、盗賊連中にバザールの武器を仲介することで双方に利益をもたらす。悪くないだろ?」

 「……兄貴、それにしても時間が必要だ。」

 「だから、まず近場の盗賊団をかき集める。それでこの砦一帯で攻防戦をやる。しかる後、二つの盗賊団に声をかけて支援を受けつつ、俺らはバザールに向かう。どうだ?」 

一座の男どもは、苦虫を噛み潰したような顔だった。 

「あっ、あの!」

 壮一が挙手した。 

「ああ、どうしたソウイチ」

 グリアが口元をほころばせる。 

「通信、つまり連絡が緻密かつ早ければいいのでしょう?」 

「あ、ああ。そうだ。」

 「でしたら、娘と私には一つ、秘策がございます。」 

「ふむ、それは?」

 壮一は頭を横に振る。 

この場を固めた男達は訝しげな顔で壮一と真希を見る。

 金色の縮れた毛をかきあげ、

 「ま、いい。ではなにか証明していただこう。」

 グリアは眉間に皺寄せる。 壮一の袖を真希は引っ張った。 

(ねぇ、どうするつもり?)

 耳元で語る。 

彼女は不満な瞳で彼を睨む。

 (ん、まあトランシーバーを使おう。)

 (ハァ? そんな電力とかないじゃん。)

 壮一は真希の肩に手のひらをおく。 

(俺らが支給されたのは、使い捨てばかりのものだ。それにあと数日で補給が日本からくる。幸い、ポイントは近い。だから、オレとお前でトランシーバー使ってこの人たちを助けんるんだよ。いいな?)

 真希は口元を噛み締める。 

(……わかった。) 

「ああ、すいません。では今からちょっと、やってみます。」

 そう言うと、真希をその場に残し、自らは遠く姿が見えなくなくなるまで離れた。 

「あ、えっと、いまから父になにか私が単語をいいます。えーとグリアさん、なにかありますか?」 

「ん? ではそうだな。《黒馬の砦》と伝えてくれ」

 この場の男どもがいよいよ奇妙がっている。

 「あっ、はい。では《黒馬の砦、聞こえますか?》うん、大丈夫」

 壮一が、かけ戻ってくる。 

ぜぇ、と息をつきつつ、 

「ええと、《黒馬の砦》でよろしいでしょうか?」

 皆に問うた。 

「ばっ、馬鹿な! そんな、そんなことが!」

 「面白い、どうやった!」

 グリアや男達が沸き立つ。 

「ですから、言えません。しかし、大丈夫、我々は決してあなた方の敵にはなりません。」

 その答えに渋々ながらグリアは承服した。

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