13
螺旋のようにのびる山道を馬で越す。重く垂れこめた雲が、峡谷の間に流れようとしていた。 幅が狭い悪路の為に、馬上は大きく揺れた。
「……しっかり腰を掴んでください。」
エイフラムに促された真希は、肩から腰に手をうつした。
「あの、あとどれくらいで到着しますかね?」
壮一がハゲと呼ばれた男に問うた。
「まあすぐですよ。しかし、運が良かったですね。ワシらが丁度あのあたりを通過せなんだら危うかったですな。」
「もしかして、村の煙から?」
「ああ、そうそう。狼煙かなにかかと思って打って出たんだ。」
谷間に徐々に暗雲が沈殿する。
「それ、あの向こう、今は見えづらいが、そろそろ村が見えるんだ。」
ハゲは後ろの壮一に説明しつつ、駒を進めた。
「ははぁ、なるほど。」
道も頂きまで来るとポタリと、雨が降る。 遠雷の閃光が山袖で鳴る。 一行が山道を下降する頃、雨足が早くなった。
「それ、もうありますよ。あれです。」
ハゲは指さした方に、丘があり、その深い緑に覆われた内から、建物が見え隠れした。
「あれは? アジトですか?」
「……フム、そうだ。」
丘の根元まできた。
幾重にも張られた棘の柵を馬脚が巧妙に跨いでゆく。頭上の巨木より生ずる枝たちが、雨粒を払いのける。
土の蒸れた特有の香りがした。
「おい、開けてくれ。ワシだ。ワシだ。」
ハゲは太い鋲の穿たれた鉄門の前で、叫ぶ。
すると門に設置された物見櫓から人影が揺らめく。
「おお、帰ったか。」
重厚な音色で門が緩やかにひらく。 所々の赤錆が妙な古めかしさを連想させた。 「どうぞ。ようこそ我らがアジトへ。」
ハゲは右腕をピンとのばす。
「はは、まるで梁山泊ですな。」
りょうざん? とハゲが疑問を持ちながらも微笑する。
「普通の村っぽいけど……。」
真希がエイフラムの背中から呟く。
一行の後ろ姿が地平線までゆくと門がまた緩やかに閉じた。




