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1 「1~10改訂中」

――随分と長い間、雲層の厚い部分が太陽を隠していたように思われた。そのおかげで、陽光の暈が淡い円形をつくり、うっすらと雲の中に黄金と滲んだ。 



 とき、昼の頃である。 


 その薄暗くなった地上には、数十万にもなる人間の呼吸と、鎧甲冑の金属が擦れる音が聞こえた。北の風は生憎烈しく、それに従うように、軍旗や帳が翻る。


  と、平地の草々を踏む一つの小さな黒い動点があった。

 

  連絡にきた武将である。騎馬は馬脚を回転させ、大地を太鼓のように叩く。

 やがて、目前に幾重にも厚手の布地の覆われた簡易テントと共に、傍で真紅の旗に刺繍された一角獣の紋章が鷹揚に棚引たなびくのが捉えられた。


 彼は安堵する気持ちと焦燥を抱え、転がるように鞍から降りる。


 逼迫した様子の武将が、本営の幕を潜るやいなや、口早に喚いた。

 「将軍、敵勢の様子が……あれは、報告のとおり2万程度ではございませんぞ。すくなく見積もっても、6万以上で……。」


カンブラ軍が平原にたどり着いた時、いくつも放った斥候はみな口々に敵勢は我が軍を下回っている、というような旨の報告をした。

 今から思うと、それは敵の情報攪乱のための計略であったのか? でなければ、なぜ、今になって数万の兵士がこの平原にたち現れるのだろうか。

 疑念を拭い切ることができないカンブラの将軍は、しかし、ゆっくりと床机から離れると、本営を離れ、自軍の見渡せる高い位置の丘を歩いた。


 

(……なに、我が軍は、強靭な鐵で精錬された武具と、勇敢な男子で構成されておるのだ。心配はない。)


 約4万の軍勢を手中におさめている将軍は、鎧に付属したマントを、ひら、と翻すと、そのまま本営に戻った。


 将軍の自信は、あるいは、もっともであったかもしれない。

 カンブラ国……そこは古来より良質の鉄が採掘される鉱山をいくつも有し、かつ狭隘で峻険な山岳地帯に囲繞された土地であるため伝統的にかの国は兵士に向いた男児が生まれやすい都市。


 農作物が育ちにくい土壌では、幾度も侵略を行い、近隣から物資を接収した。


 自然、軍事強国として名を馳せた。


 近隣諸国とはもう、建国草創期より数百年ほども小競り合いや大合戦などを繰り返してきた。

 

 ――そして、大陸歴1300年代半ば。



 今回もまた、相変わらずの戦闘であるかに思われた。そして後世、人々はこの戦いを《約束の草原》の戦いと名づけた。







 我々と住むところを異にした地《黄金郷エルドラド

  そこは超大陸の存在した世界。その大陸に存在する都市国家群は《中原》と呼ばれる平地で文明を開花させていた。

 

 それと同時に危うい均衡を保ちながらも、その平和を享受しているかに見えた……しかし、このカンブラという都市国家一つの征伐が、この大陸の歴史を大きく変えていくことになる。



この会戦の結果は、一冊の本を紐解けばわかる。 

「カンブラの軍勢、約四万、敵軍と平原にて大規模な会戦をす、結果、大敗を喫する――。」

 と、後世の歴史書に記された。

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