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後悔先に立たず

 さて、転校早々のHRでとんでもない発言をぶちかました松山武であるが、担任により出席簿の角で殴られるという制裁を受けてその場は収まった。

 ゴリ子は、「きっと勘違いをしたんだよ。大丈夫、気にしてないよ」と、心配する周りの人間に悠然と微笑んでいた。番長呼ばわりを気にもとめていない。花奈は、ゴリ子のその聖人のような人柄に、感動した。

 感動する一方で、花奈は怯えていた。先ほどの松山のゴリ子への発言は、紛れもなく自分へのものだ。内容から鑑みるに、花奈に復讐をしたいらしい。

 確かに、小学生時代の花奈は非常に横暴だった。だがしかし、そんな7年越しの復讐するほどか。自分の横を素通りしていった松山を視界に入れないようにして、花奈は頭を抱えた。


「ねえねえ、松山くん、ちょっとイケメンじゃない?」


 後ろから、潮崎史音が興奮気味の声でそう言った。それに反応したのは花奈ではなく花奈の隣の橘である。

 イケメン。イケメンだろうか。花奈は教室の窓際の後ろの席に座っているであろう松山の顔を思い浮かべて、首を傾げた。

 小学生時代の松山は、泣き虫でどちらかというと可愛らしい風貌をしていた。けっして、あんなふうに髪を赤く染めたり、人に凄んだりするような人物ではなかった。一体この変化はなんだ。まさか、自分に復讐するために…。

 途中まで考えて、やめた。このまま考えていたら、とてつもない罪悪感に襲われるような気がしたからだ。

 ……ところで、復讐とは何をするつもりだろうか。

 松山のことから思考を変えようとした花奈だったが、気づけばやっぱり松山のことを考えていた。

 虐げられた恨みを晴らすだなんて、いかにも暴力的な復讐をしてきそうなセリフだ。殴られたり、無理矢理言うことを聞かされたりするのだろうか。花奈は想像して顔を青くした。

 番長と呼ばれた小学生時代、花奈は喧嘩が強かった。女だてらに、上級生の男子と喧嘩したりして、ボロボロになりながらも勝っていた。松山にも、力の加減ができなかった幼さに、だいぶ暴力的なことをしてしまった気がする。記憶に残る松山は、笑ってるか号泣しているかのどちらかだ。ただそれは、小学生の域を出ない。高校生の今、男女の体格差は大きくなり、きっと松山に喧嘩をふっかけられても花奈は速攻で負けるだろう。パンチひとつでKOされる未来が想像できた。

 どうしようもない絶望感に打ちひしがれて机に突っ伏したら、「五十嵐ー、堂々と居眠りするなー」と担任に注意された。担任のその言葉に、松山の目が鋭くなったのに、花奈が気付くはずもなかった。

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