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復讐者

 五十嵐花奈は現在非常に困惑していた。

 原因はHRに担任と共にやってきた転校生である。

 まず、日本人としては到底ありえない赤髪、自己主張強目な片耳のピアス、ネクタイをせずざっくりとワイシャツを開きそこから見える黄色いTシャツ、今時の若者らしい腰パン、転校初日から校則違反のオンパレードの転校生に、花奈は困惑した。こいつ不良だな、と第一印象で転校生を決め付けてしまったのも無理はない。

 次に花奈が困惑したのは、その名前を聞いたときだった。


「えー、こいつは松山武。見た目はこんなんだが意外といい奴っぽいぞ」


 担任の転校生の紹介に、花奈は「あれ? なんか聞いたことある名前だな」と首をかしげる。たいして長いことその引っ掛かりについて考える間もなく、転校生は度肝を抜くような行動に出た。

 担任の「松山、みんなに挨拶してくれ」というセリフをまるっとスルーして、転校生もとい松山は、花奈の二つ前の席に座るゴリ子――本名麻生姫子――の所まで行くと、仁王立ちした。教室中がざわつく中、松山はそれを気にした風もなく言い放った。


「やっと見つけたぜ、番長。ここが年貢の納め時だ。どれだけ俺が苦しんだか、お前には分かりもしないだろう。長年虐げられた恨み、ここで晴らしてやるぜ」


 非常に芝居がかったセリフだった。が、教室中では、なんのことだ?とみなが首をかしげていた。

 松山のセリフから考えれば昔いじめられていた松山がゴリ子に復讐してやるという宣言であるという解釈ができるのだが、ゴリ子はとうてい誰かをいじめられる人間ではないのだ。見た目こそ、あだ名通りのゴリラ似であるが、その内面は姫子の名にふさわしい優しく上品でちょっと抜けているお姫様然とした人間なのである。

 クラスメイトが非常に困惑している中、冷や汗を流している人物がいた。


「花奈、どうしたの?」

「………なんでもない…」


 小刻みに震える花奈を心配して、隣の橘恵が顔を覗き込んできたがそう答えるだけで精一杯だった。

 原因は松山の放った「番長」という単語。それに、記憶の奥底に封印した過去が否応なしに解き放たれた。要するに黒歴史を思い出したのである。何を隠そう、番長とは花奈の小学生時代の通り名である。

 それをきっかけに、数珠つなぎに松山武の存在も思い出した。松山は、番長時代の花奈の手下である。

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