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後にも先にもこれ1度きり

おじさんの怖い顔を見たら、思い出しちゃった。昔のこと……

「落ち着いたかい?……ごめんよ、急に怒ったりして。でも君に対して怒ったわけじゃないんだ。本当にごめんね。」

何度も謝る警察官のおじさんは、泣いてしまった少年が自分の娘と重ねて見えていた。だから本当に申し訳なさそうな顔をし、少年に謝罪していた。

「……僕も、ごめんなさい。急に泣いちゃったりして。怒鳴り声を聞くと、どうしても泣いちゃうんです。」

少年も、涙を手で拭き目を真っ赤に充血させながら警察官のおじさんに謝罪した。どうやら、少年にはトラウマがあるようだ。少年の場合は、怒鳴り声が引き金となって精神が不安定になってしまう。

「いや、君が謝る事は無いよ。……今日はもう遅いし、このくらいにしようか。」

そう言うと、警察官のおじさんは奥の方へと行ってしまった。少年は、少し寂しさを覚えながらおじさんが戻ってくるのを待っていた。それから15分程時間が経過した頃に、警察官のおじさんが戻ってきた。と思ったらおじさんは、警察官のおじさんではなくどこにでもいるような普通のおじさんになって戻ってきた。

「よし、準備完了。……後は、見回りに行ってるもう1人の警察官が戻ってくるまで遊ぶかっ。」

何の準備が完了したのか、と少年は疑問に思いながらも元警察官のおじさんの遊ぶという言葉に惹かれて、最初に思った疑問は彼方へと消えていった。

「本当!何して遊ぶの、おじさんっ。」

やっと、子どもらしい表情を見せる少年に元警察官のおじさんは安堵していた。が、どうしても1つだけ訂正したい事があった、最優先事項として。

「遊ぶ前に約束してほしい事があるんだ。おじさんは、こう見えて20代なんだ。子どもの知亜君から見ればおじさんかもしれないけど。……えっとね、おじさんの事は今度からお兄さんって呼んでほしいんだ。約束出来るかい?」

元警察官のおじさんは、思っていた以上に自分の容姿を気にしていたらしく、少年にそう約束を迫った。

「うん。お兄さんって呼べばいいんだね。早く遊ぼうよ、お兄さん。」

少年は、早く遊んでほしいのか、すばやくそう答えた。よほど遊んでほしいのだろう。嬉々とした表情を浮かべる少年を、お兄さんは父親の気持ちで見守っていた。

(何して遊ぶのかな、遊んだことは1度も無いけど楽しみだな。)

少年が、そんな悲しい事を思いながら遊ぼうとしているとは露程にも思っていないお兄さんの手には、花札があった。

……花札?

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