嘘から出た真
嘘をついてでもあの家には戻りたくないんだ。だから僕は……
「?……おじさんどうしたの?」
一向に動く気配のない警察官のおじさんが心配になり、少年はおじさんの肩を揺らしながら心配そうに尋ねていた。
「……はっ!あぁ、ごめんごめん。ちょっと目の前が真っ白になっちゃってね。えっと、悪いんだけどもう一回住んでるところ教えてくれるかな?」
意識を取り戻した警察官のおじさんは、少年の先ほどの言葉が信じられずにもう一度同じことを聞いた。
「……さっきまで居た公園です。」
少年は、同じことをもう一度聞かれたので先ほどと同じ回答をした。
「……そっか。うん、わかった。じゃあ、いつからあの公園に住んでるのかな?」
警察官のおじさんはやっと現実を受け入れたのか、今度は違う質問をした。
「っ……えっと、うんと……」
少年はここにきて初めて、うろたえていた。なんと答えていいのか分からずに焦るその少年の姿に、警察官のおじさんは違和感を覚えながらも少年の回答を待っていた。
「えっと、よく覚えてません。」
結局少年は、そう答えると顔をうつむかせてしょんぼりとしていた。内心ドキドキしながら少年は、警察官のおじさんの言葉を息をのんで待った。
「……ということは、おじさんがこの地域に配属される前からあの公園に住んでいたってことか。全く、ここの警察官は今まで何をしてきていたんだ。見回りで見つけることも出来ただろうに……」
警察官のおじさんは、怒りをぶつけるように木製の机を力強く叩きつけていた。何事かと思い少年は顔を上げると、警察官のおじさんの怖い顔が見えた。
「ひっ!ごめんなさい、ごめんなさいっ。」
少年は自分が怒られると勘違いして、泣きながら必死に謝り続けた。
「あぁっ、違う違う。君に怒ってるんじゃないんだ。だから泣かないでくれ。」
警察官のおじさんは、泣いている少年を前におろおろしながら少年に泣き止むよう促した。それでも少年は、何かに脅えるように泣き続けていた。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、もうしないから、言う通りにするから……」
相手は警察官のおじさんだという事を忘れて、少年は泣きじゃくる。