大人は勝手に理解する
目が覚めたら綺麗な女の人と、特徴のないおじさんが居たんだ。
「ご協力ありがとうございました。」
シワが一つも無い深い青色と金の装飾が施され衣服を身に付けた警察官の中年男性は、女性に向かって敬礼をしながら感謝の言葉を伝えた。
「いえいえ、私も久しぶりに母親に戻れた気がしましたし、こちらがお礼を言いたいくらいです。」
右手を頬に添えながら、女性はどこか哀愁を帯びた顔で言葉を返した。
「…………」
少年は、女性を恨めしそうに無言で睨みつけていた。
「?……っ!こら、ちゃんとお礼を言いなさい。」
一瞬、何を言っているんだと思ったが深入りはよそうと考え、一向に一言も話そうともせず助けてくれた女性に対する少年の態度を正そうと、警察官はなるべく優しい口調になるように少年に言い聞かせた。
「…………」
それでも少年は何も話そうとはしない、と思ったら今度は警察官を睨みつけ始めた。
「いいんですよ、きっと親御さんとケンカしちゃて家出しちゃっただけだと思いますから。このぐらいの年の男の子は、意地になっちゃて反抗したがりますから。」
女性は、微笑みながら少年の頭を優しく撫でて話していた。まるで、体験したことがあるかのように。
「……違うもん。」
少年の小さな声は、女性の笑い声と警察官のつられ笑いにかき消された。
「やっぱり大人は……」
少年は、何かを我慢するかのように両手に力を入れていた。