見方を変えても見つからない
……んー。あれ、ここどこだろう?あれ、僕のベッドじゃない。……夢かな。
「……んっ。寒い。」
知亜は、朝の新聞配達のバイクのエンジン音で目を覚ました。ポストに新聞が投函される音を聞いて、何だろうと不思議に思いながら意識をはっきりさせようと布団から出て立ち上がり、大きく腕を上に伸ばし背伸びした。
「なんか久しぶりに気持ち良く眠れたな。こんな薄っぺらい布団なのに、すごいふわふわしてる。……トイレどこかな?」
羽毛布団のふかふかを気に入ったのか、何度も掛け布団を叩いていた。そのうちに、トイレに行きたくなった知亜はトイレを探そうと客間から出た。客間を出てすぐにリビングがあり、リビングを通って玄関に繋がるドアを開いた。すると右手側に玄関があり、その近くには2、3個のドアがあった。知亜は、玄関から近い順にドアを開けていこうと思った。普通に考えれば、お風呂場の近くにトイレが設置されているので、昨日連れて行かれたお風呂場の近くのドアを目指せばいいものを、まだ完全には目覚めていない知亜はそこまで思考を働かせられずにいた。
「トイレは……ここかな?」
まずは、玄関に1番近いドア。開けてみると、そこは収納スペースだった。中には、ダンボールが山積みになっていた。よく見ると、ダンボールには黒いマジックペンで文字が書かれていた。きっと、種類毎に仕分けしてどこになにが仕舞ってあるのかを記しておくために書いたのだろう。
「ここじゃ無かった。……次はここ。」
次に開けたのは2番目に近いドア。ちょっと楽しくなってきた知亜は、ちょっとした探検気分になっていた。そして、開けたドアから見えてきたものは真っ白い洋式の便器だった。2番目で見つけてしまったが、知亜は本来の目的を済ますことにした。
「……ふぃー。手を洗わなくちゃ。」
知亜は、近くに位置している洗面所で手を洗った。客室に戻ろうとした知亜は、ふと3番目のドアが気になった。ここまできたんだし、ちょっとくらい見てもいいよねと思い3番目のドアに手をかけた、その時……
「知亜君、何してるの?」
春子は、誰かがリビングから出ていく音に気付いて目を覚ました。
「んー、ぐっすり眠れたわ。昨日、疲れてたからかな。」
そう言って、いびきをかいて寝ている優の方を見ていた。
「このいびきが無ければ毎日ぐっすりなんだけどな。」
苦笑いをしながらツインベッドから降り、リビングに行って朝ごはんの支度をしようとしていた。
「知亜君、もう起きたのかな?……リビングの方から音もしてたし。」
階段を降りながら、そんな独り言を言っていた。そして、ふとトイレの方に目をやると、そこには桃香にも見せた事のない部屋のドアに手をかけ、今にもドアを開けようとしている知亜が居た。そんな知亜を見るなり春子は、目を濁らせながら言った。
「知亜君、何してるの?」
3番目の部屋には何があるのか?よし、開け……て……あれ、春子さんだ。起きてたんだ。おはようございますって言わなきゃ。