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探せど探せど夢は見つからない

だるま落としも楽しいけど、やっぱりこいこいの方が楽しいな。

「さてと、もう時間も遅いし寝るとしますか。」

気付けば、時計の短針は10の数字と11の数字の間を進んでいた。小学生の居る新井家では、いつもに比べればだいぶ夜更かしをしている。いつもなら、9時くらいには桃香を寝かせているが、桃香も知亜が居るからなのか、眠そうにしながらも知亜と楽しそうに遊んでいた。

「そうね、もう桃香も限界みたいだしね。」

春子はそう言って、完全に寝てしまっている桃香を抱っこして、桃香の部屋がある2階へと登っていった。

「それじゃ、知亜君は客間で寝かせておこう。」

優は慣れた手つきで、知亜を客間まで抱っこしてあらかじめ敷いておいた羽毛布団に知亜を寝かせた。知亜の寝顔は、どことなく幸せそうに微笑んで見えた。



「で、優さん。これからどうするつもりなの?」

春子は今後の知亜の在り方を優に聞いていた。確かに、このままずっと新井家に住まわせるわけにもいかない。もちろん、金銭的な理由もあるが春子のお腹には第2子となる生命が宿っているのだ。

「……とりあえず、明日もう一度知亜君と話してみるよ。それで、もし帰る場所が無いのなら酷な事だが早めに児童養護施設に連れていくよ。」

優は、保護したい、桃香やお腹にいる赤ちゃんと同じように自分の子どもとして育てたいと思ってはいる。しかし、思う事は簡単だが実際にはとてつもなく大変な作業になる。春子にも負担をかけてしまう。それに、自分だけがこの家では異質の存在だとすでに理解している知亜の精神的負担にもなる。だから、優はなるべく早く事を決めようと明日、せめて1週間後をリミットとして知亜の問題に取り組もうと考えていた。

「……そうね。本当に申し訳ないとは思うけど、家には家の事情があるから……」

そう言いながら春子は、若干大きくなっている自分のお腹を優しくさすりながらそう言った。それに春子には自信が無かった。もし、知亜を引き取ったとして自分がお腹を痛めて産んだ子どもたちと同様に愛せるのかと。きっとどこかで、この子は私たちの子じゃないと思ってしまう自分が想像出来てしまう。もし一度でもそう思ってしまったら、知亜の居場所は新井家には無くなってしまう。子どもを引き取るというのは本当に大変なことなのだ。

「君が心配する必要はないよ。今日だって無理して頑張ってくれたんだろう?君はどちらかというと寡黙な人だからね。」

優は、春子の苦労を知っていた。普段あまり話さない人間が、急に来た子どもに対して饒舌に話しかけるなんて事は無理をしてでなければ出来ない。

「うん、ちょっと頑張り過ぎちゃったからかな、もう寝むくて。」

目をこすり、あくびをしながら春子は寝室のダブルベッドに入って行った。

「優さん、おやすみなさい。」

「あぁ、おやすみ。」

優も疲れていたのだろう。ツインベッドに入って、自分がいつ寝てしまったかも気付かないほどすぐに寝入ってしまった。

こうして2人の長い夜は終わり、明日へと備えるのだった。

……あれ、どうしたのお兄さん。やめて、そんなにひじきは食べられないよぉ……

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