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見えるもの、見えないもの

これ、肩車って言うらしいよ。ちょっと揺れすぎて怖いんだけど、安心するな。

「さて、これからお兄さんがどこに行こうとしてるか分かるかい?」

お兄さんは、少年を肩車しながら話しかけた。少年は、びくっと体を震わせて少し強い力でお兄さんの頭を掴む。

「……分かりません。」

少年は心の中では、理解しているつもりだった。きっとこのままあの公園まで僕を連れていくために、途中で逃げられないよう肩車をしているんだと少年は思っていた。

「まぁ、それは着いてからのお楽しみにしとこう。」

そう言ってお兄さんは、住宅街を進んで行く。それからは、少年もお兄さんも会話することなく目的地を目指して歩いて行った。



少年は、先ほどから疑問を抱いていた。なぜなら、一向に公園が現れてこないからだ。公園に連れていかれると考えていたので、少し心配になった。

「……ねぇお兄さん。僕たち迷子なの?」

少年は、1つの可能性をお兄さんに提示した。もし、迷子ならば来た道を戻れば良いと少年は考えていた。そうすれば、少しはお兄さんの負担にならないで済むと思っていた。

「いやいや、僕はこの辺りに住んでいるから迷子になんてならないよ。あと少しで到着するから、ちょっと待っててね。」

お兄さんはそう言うと、少し歩くスピードを上げた。少年を少しでも早くあの場所に連れていって、休ませてあげようと考えたからだ。



交番を出てから、およそ10分くらい歩いてお兄さんは一軒の家の前で歩みを止めた。目的地に着いたのだろう。見たところ普通の2階建ての家で、外観は玄関と1階部分を赤茶色やこげ茶色のタイルで装飾されており、2階部分はクリーム色で統一してある。屋根は深緑色をしていて、窓も所々に設置されている。この地区の景観を損なわない程度の、よくある家づくりになっていた。

「……お兄さん、ここはお家だよ。やっぱり迷子になっちゃったんだよ。」

少年は予想が的中したと思い、お兄さんに来た道を戻ろうと頭をぺちぺちと叩きながら促した。しかし、お兄さんはそこから動くどころか少年を肩から降ろしてしまった。この時少年は、まさかここに置き去りにしてお前はここから公園まで歩いて帰れなどと言い出すのではないかとどきどきながら、お兄さんの言葉を待っていた。

「さぁ着いたぞ。ここがお兄さんのお家だ。とりあえず今日は……まぁ今日だけとは言わないが君の今後の在り方が決まるまでここに住むんだよ。」

お兄さんは両手を広げて、ここがお兄さんのお家と言った。この言葉に少年は、混乱していた。どういう事なのか全く理解できず脳内ではパニックを起こしていた。そんな少年を、お兄さんは不思議そうに見ていた。2人が、家の前で固まっていると、その家の玄関の扉が開いた。

「あー!やっぱりパパだ。パパーっ。」

明るく幼い声が、お兄さんをパパと呼んでいる。その声にお兄さんは嬉しそうな顔をして、こちらに向かってくるその声の持ち主を抱き上げ、ただいまと言った。状況が全く飲み込めない少年の目には、その家の表札が映っていた。

あれ?ここは公園じゃない、公園に向かってるんじゃなかったのかなぁ。ここに住む?ここは知らない人のお家なのに、お兄さんは何を言ってるんだろう。

……そういえば、お兄さんの名前はなんて言うのかなぁ。もしかして、ここに書いてある漢字の名前なのかなぁ。……なんて読むか分かんないや。

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