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5-1 *少年視点

どうしてこうなったんだろう?


人気のRCOを昨日始めたのだけど、キャラクター作成で間違えて生体情報を反映としてしまったら

現実の自分の身体になってしまった。

この女みたいで可愛いと言われる顔がキライで、ゲーム中なら男らしくなれるとおもってたのに。

キャラクターを作成し直そうとしてログアウトしようとしたら、できなかった。

GMに通報しようとしたら、例のアナウンス。

思わず泣きたくなってしまった。


初心者保護機能で泊まれる無料の宿屋で一晩寝て

朝からポーションや足りない防具を買おうと思って街を走りまわった。

けど、どこの店も高いし、仕入れ技能を持っていない僕は個人購入の最低数保証もないので、NPCから購入できなかった。

プレイヤーの露店は殆ど無くて、あっても高級品や相場より高い物ばかり。

プレイヤーの店も同じような状況で、ログアウトしてしまった人の安い商品なんかは全部買い占められていた。

酷い店では初心者に売る物は無いと追い出された。


「このままレベル上げに行くしか無いかな?」


チュートリアルでは、きちんとプレイヤーの店で安い物を探して準備をしようと書いてあった。

だから、探したんだけど、見つからない。

ふぅっとため息を吐いて顔をあげる。

…………窓から見える光景に思わず息を飲んでしまう。

綺麗な女性が本を読んでおり、その側に控える騎士かな?NPCと書いてあるステータスが見える。

そのまま見惚れていた、ふっと気づいて確認すると

「雑貨屋 白と黒」と書かれていた看板が眼に入る。

初心者の僕でも知っている。RCOのCMにもでてくる凄く綺麗なプレイヤーさんが店主をしている店だ。

けど、エルフとダークエルフだったはずだけど……、有名な店だし、初心者用品売ってないよね?

けれど、入れば綺麗なおねーさんと話ができるかもしれないし……もしかしたら売ってるかも!


そっと店のドアを開けるとちりんっと小さな鈴の音がなる。


「いらっしゃい」


本を読んだままのおねーさんが綺麗な声で一言、そういってくれる。


「す、すいません。その。しょ、初心者用の道具とかって……売ってません……よね?」


緊張して言葉が震える。

恥ずかしくて頬が真っ赤になっているのかな、ほっぺたがものすごく熱い。


「あるよ、商品の見方は分かる?」


顔をあげたお姉さんと目が合う、恥ずかして慌ててそむけてしまう。

そっけない台詞、表情もあまり変わってなかったけれど、一瞬あった目は優しそうだった。

微笑んでくれてるように見えた。


「ぁ、は、はい!チュートリアルでちゃんと習いました!」


元気よく答える、思わず声が大きくなってしまったが、怒られなかった。

きちんと昨日チュートリアルを終わらせた、内容も覚えている。

SKIPすることもできたのだが、細かい所まで丁寧に作られていて

楽しかったので最後までうけてしまった。


商品棚のほうへと歩いていき、ちいさなプレートに触れる。

ホログラムに初級ポーションや、武器や防具が表示される、


「ぁ、あの……ほんとにこの値段なんですか?」


「ん?そうだよ。小細工とか出来ないのは習ったでしょ?」


綺麗で、優しげな声。ずっと聞いていたい。

こくこくとうなづく。

けど、違うんです。性能++で最高の出来ですよ?

しかも、相場より安いです、こんな事になる前の相場だってゲーム前に調べたから知ってます。

なのに、それより安いです。


「ちがうんです、その、どの店もすごい値段で……あと普通の値段でも初心者には売れないって言われて」


不思議そうな顔で尋ね返してくるお姉さんに、必死に弁解する。

詐欺とかそういう意味で言ったんじゃないって伝えたくて。


「うちは初心者限定。今はね」


顎に指をあて、少し考えるようにしてからそういうお姉さん。

綺麗だけど、すごく可愛い動作。たぶん僕が心配したから、今決めてくれたのかな?

自意識過剰だよね、こんな女みたいな奴だし……。


「あの、これでお願いします」


商品棚からでたカード、商品明細書を持ってカウンターへと近づく。

凄く緊張してしまう。近づくと甘いすごくいい匂いがする。

柔らかそうな金色の髪がふわりと目の前で揺れる。


「お買い上げありがとう。はい、オマケ」


と笑顔で小さな袋を手のひらに乗せてくれる。

意味がわからずに思わず、お姉さんを見上げる。にこりと微笑まれる。

間近で見たお姉さんは綺麗だった、こう、なんていうんだろう?儚いお姫様みたいで、守ってあげたい。

けど、こんな有名な店にいるぐらいだし、強いんだろうなぁ。

いつか、強くなって、このお姉さんを守っている自分を思わず想像してしまう。


「あ、ありがとうございます、これは?」


ふっと思い出したように聞く。危ない、別世界に旅立ってたよ!

手渡された小さな袋を見る、開けてもいいのかな?


「お守り。開けないで本当に危ない時に開けなさい。こっそり開けてもばれちゃうからね?」


にこっと微笑まれる。

どくんっと心臓がはねるのが自分でわかった。

赤くなるのがわかって、俯いてしまう


「ぁ、ありがとうございます。お姉さんもプレイヤーですよね?僕ルードヴィッヒって言います。お名前聞いてもいいですか?」


「ぷっ、あはは……まさかナンパされるとは思わなかった」


笑い出すお姉さん。

ぁ……小さく声を漏らしてしまう。

そうなのだ、言われるまで気付かなかったが、これではナンパしているのと変わらない。

こんな綺麗なお姉さんだから彼氏もいるかもしれないし、ゲーム内で結婚は……結婚指輪なかったし大丈夫。

けれど、恥ずかしくって真っ赤になるのがわかって俯いてしまう。


「ぁーおかし。ティセリア。何かあったらまた来るといいよ、店にいるのは気まぐれだけど。ナンパ成功かな?」


ちらっと目を上げるとそう言って微笑んでいるティセリアさん。

ナンパ成功?と言われて恥ずかしくってどうしていいのかわからない。


「ぅ……、ま、またきます」


それだけ言ってドアの方へ急いで向かう。

うぅ、早く店からでて狩りにいこう!


「チュートリアルとちがって、南の平原でレベル1のスライムかミニウサギにしとくんだよ」


「はい、失礼します」


チュートリアルより弱い狩場を教えてくれるティセリアさん。

お礼を言って、きちんとお辞儀をしてからドアを閉める。

うぅっ、初心者だっていうのもバレてるよっ?!

恥ずかしくて街中をおもいっきり走ってしまった。


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