表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/49

5

工房と書かれた金属プレートがかけられた扉を開ける。

部屋の奥には鍛冶用の炉、細工机等々あらゆる生産スキル用の道具が置かれている。

RCOでは、スキル発動による自動合成と手動合成がある。

スキル発動による生産は、関連生産道具の周辺でスキルを発動させると、

補正が受けられ、目の前に白い球体が現れてその中で加工される。

その間頭の中で設計図等が浮かぶ、簡単にいえば工程等を妄想して体感する。

手動生産は、そのままである。目の前の道具を使って作る。この際熟練度によって完成品に補正がかかる。

出来としては、同じ。個人の相性というので手法が別れるところである。



ん~~、無難に初級ポーションあたりかな?

さすがに初級はあんまり在庫持っていないし。

銀行倉庫を開いて、雑草と変りないありふれた素材を取り出す。

初級ポーションに必要なのは、レテ草、水だけである。

数は100ぐらいでいいかな?


錬金術テーブルの前に腰かけて、両手をあわせるようにする。

完全には合わせない。手のひらの間にぽぅっと光の球体が現れる。

材料を吸込み、光の粒子をこぼしながら球体が煌く。

ティセリアの頭の中で生産工程や細かい匙加減、薬草をすりつぶす加減などの工程を考える。

小さな音と共にインベントリー内に初級ポーション++が100個生成されて、格納される。


「はぁ………少し疲れた」


小さくため息をつく。ステータスでスタミナを見れば少し減少している。

MP(マジックポイント)とは違い、スキルの発動にはスタミナを消費する。


「疲れる感覚がある……?」


実際に手動でもスキルでもゲーム設定では疲れる、スタミナ、すなわち体力や気力に当たる物を使う。

スタミナを使うだけで体調には影響しないはずだが、今はちがう。影響している。


そういや現実と夢の境などは曖昧で、リアルな夢は現実と変わらないだっけか?

そんな事を言ってた学者だっけ?ネットでのヨタ話だっけ?あったな。

ここまでリアルに再現?いや体感できると仮想現実ではなくて現実とかわらないな………。

これはちょっと不味いな……というか、性的な規制やらはどうなった等と疑問はつきないけども。

まぁ掲示板に書き込んでる連中が調べ上げるよね………。

さて、ちょっとだけ店開けてみるかな?


店の方へと移動する、会計カウンターの椅子に腰かける。

別に商品陳列などはする必要はない。商店倉庫ウィンドウを開いて、そこに商品を入れる。

そして販売用のスロットに移動させて値段をつけるだけ。

あとは店内の商品棚にホログラムで商品が浮かび、商品データを見ることができる。

販売用のスロットは店舗の内装家具で変わる、販売棚6スロット、陳列ケース1スロット等である。


初級ポーション各種、初級ポーションより多少マシなポーションを少量、初心者用の武器、防具程度を並べる。

ん?在庫いっぱいあるならなんで出さない?レア物はって?

元々は1stと2ndが所属してるギルドメンバーやフレンドからの委託商品、狩りの戦利品で換金する物等も預かっておいていたので

レア物から一流職人の武器防具もある、まだ在庫にもドロップの武器や防具なんかはかなりの数がある。

だからと言って、出したらどーなるか、予想できるだろ?だから、出さない。メンドクサイ。

別に売れなくても良いし、いいじゃないか、食料の心配もお金の心配も無いなら部屋に引きこもって自堕落生活してても。

マッセに怒られたけどさ……… orz


カウンターに肘をついて、物思いに耽るティセリア。

中身はともかく、儚げに見える金髪の美少女と美女の境界線、どちらになるだろう?

横に控えるヘルアーマーが姫に付き従う近衛騎士のようにも見える。

頭の中ではどのようなくだらない事を考えていても、見た目にはどこかの絵画のようである。


しかし、暇だな、外部サイトには繋がらないから小説は読めないな。

ダウンロードしたのは展開できるか?

ハードカバーの本が目の前に現れる。

何も無い中空にウィンドウを出すのも世界観がおかしく、脳内ビューでは疲れるとか、違和感があるという意見もあり

脳内ビューか、この本形式で外部サイトや、ダウンロードした映像や小説を表示する事ができる。

本の見た目もカスタマイズ可能である。

毒々しい外見からフリフリのピンクのまでユーザーによって様々だ。

ん?俺のか?革で一部に布が使われて錦糸で刺繍が入っている。


小さな鈴の音と共にドアが開く。

普段着といって差し支えない格好に、小さな皮胸当て、ショートソードをもった男の子が入ってくる。

金色のショートカットにほっそりとした身体、戦士というよりは魔法使いのほうが適性にみえてしまう。

男の子というには可愛らしい顔つきで、女装が似合いそうにも見える。


「いらっしゃい」


本に目を落としたまま、そういうと少年が驚いたようにティセリアを凝視している。

しばらく見つめたまま固まっている、本から顔をあげてティセリアが少年のほうを見ると

はっと気づいたように吐息を漏らす。


「す、すいません。その。しょ、初心者用の道具とかって……売ってません……よね?」


頬を少し赤く染めて、おどおどとした様子で聞いてくる。

小動物のようだ、マッセがココにいれば間違いなく抱きついてるだろうなぁ。


「あるよ、商品の見方は分かる?」


客商売なのだが、色々とありすぎたので愛想笑いも浮かべることはしなくなってしまったので

ただそれだけ言う。


「ぁ、は、はい!チュートリアルでちゃんと習いました!」


元気よく答える少年、なんというか初々しい。

文字通りの初心者なのだろう、しかし、ちゃんとチュートリアル受けたのか。

最近チュートリアルなんて報酬目当てで受ける以外SKIPとかが多いので

チュートリアルを作成した俺としては嬉しい。


なんというか、とてとてという擬音が一番あいそうな歩き方で少年が商品棚のほうへと歩いて行く。

おぼつかない手つきで商品の詳細を表示させて、購入する品を選んでいる。


「ぁ、あの……ほんとにこの値段なんですか?」


「ん?そうだよ。小細工とか出来ないのは習ったでしょ?」


こくこくと何度もうなづく少年、そんなに安くも高くも無い値段設定にしてあるのだけど。

確認しなきゃいけないほどの価格になってるかな?


「ちがうんです、その、どの店もすごい値段で……あと普通の値段でも初心者には売れないって言われて」


疑問が顔に出ていたのか、慌てて弁解してくる少年。

この状況だから、値段がぼったくりになるのは理解できるし

初心者に売るよりもベテラン等に売って恩を売るほうが利益は変わらないが「得」になる。

心情理解はできるが、実行するなよ……屑ばかりかよ。


「うちは初心者限定。今はね」


うん、いま決めた。そういうことにする。

消費アイテムにレベル制限を付けて売ってやろうかな。

そうすればアイテムの威力もあがるし……、よし、それで。


「あの、これでお願いします」


商品棚からでたカード、商品明細書を持ってカウンターに来る少年。

商品棚でホログラムで商品を選び、個数を入れるとそのカードがでてくる。

カウンターにある差込口にカードを差すと料金が支払われて、インベントリーに商品が収められるというシステムだ。

なので無人であっても営業できるが、代理店主としてゴーレムやテイムしたペット、魔物等を置いておく店主が多い。

横にいるヘルアーマーもインテリジェンスアーマーの上位種である。


―インテリジェンスアーマー

知能を持った鎧、一般的なのは剣で武器扱い。

一般的なインテリジェンスアーマーは知能をもった防具であって、この店のように自力可動しない。

この場合は、プレイヤー制作のゴーレムという扱いで、自力可動もする。

使われた鎧、魔力媒介、作った作者の力量などで強さが変わる。

製作後のカスタマイズや、魔力を注ぎこんでの強化も可能。

鎧として着る事もできる。


「お買い上げありがとう。はい、オマケ」


インベントリーから小さな袋を取り出して渡す。

ぽかんとした表情で見上げてくる少年、いかん、思わず可愛いと思ってしまった。

いや、可愛いは正義だから良いはずです。いえ、そういう趣味じゃないです。


「あ、ありがとうございます、これは?」


渡された袋をじっと見つめて、開けていいのか?という意味だろう。

こちらを見上げて聞いてくる少年。


「お守り。開けないで本当に危ない時に開けなさい。こっそり開けてもばれちゃうからね?」


にこっと笑いながら返してやると真っ赤になってうつむいてしまった。

うん?なんか変な事したか?


「ぁ、ありがとうございます。お姉さんもプレイヤーですよね?僕ルードヴィッヒって言います。お名前聞いてもいいですか?」


「ぷっ、あはは……まさかナンパされるとは思わなかった」


露骨な視線も目付きも普通で、おとなしそうな少年から飛び出した言葉に思わず吹き出して笑ってしまう。

ぁっと小さく声を漏らした少年、そういう意味はまったく考えなかったのだろう。

耳まで真っ赤にして俯いてしまっている。思わず抱きしめそうになってしまう。

いやいや、ちゃんと女好きでショタ好きだったり両刀じゃない!と必死に理性で止める。


「ぁーおかし。ティセリア。何かあったらまた来るといいよ、店にいるのは気まぐれだけど。ナンパ成功かな?」


誂うように笑いながら答えると、ますます真っ赤になって震えている。

なんというか弄りがいがありそうというか、可愛らしいというか。可愛いは正義とはよくいったものだなぁ。


「ぅ……、ま、またきます」


恥ずかしさに耐えかねて走りだす少年。


「チュートリアルとちがって、南の平原でレベル1のスライムかミニウサギにしとくんだよ」


「はい、失礼します」


きちんと返事をして、ドアを閉める前に丁寧にこちらにお辞儀をしてから、また走っていくルードヴィッヒ君。

やーー、なんか微笑ましいなぁ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ