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遅くなりました。

ショタタグが新しく着きました。今更ですけども。

 どんよりとした雨雲が空を覆い尽くし、冷たい北風が草原を走り、魔防壁へとあたる。壁添に上がった風は魔防壁の向こう側へとふわりとした冷気だけを落としていく。

目の前で上機嫌でニコニコとしながら、鎧の上にコートを羽織るルードヴィッヒ。

その視線の先には、少し頬を染めて顔を逸らしているティセリア。

準備できましたとルードヴィッヒが声をかけると、視線が合い。また慌てて逸らしそれをごまかすように、道を歩き始める。


 おかしい、どうしてこうなった。

そもそも、どうして、なぜ? 私が余裕がないのに、ルー君が余裕なんだろう?

目が合うと、恥ずかしくて………それなのにルー君はもう慣れたのか、目が合うとにこりっと微笑まれる。

微笑まれると、恥ずかしくて真っ赤になって視線を逸らしてしまう。

いや………えっと………どうすればいいんだろう。

ちょっと前まで反応が可愛くてからかいがいのある、小動物みたいなそんな感じだったはずなのに

なんで私がいま遊ばれて………いやいや、気のせい気のせい、きっとそう。


 ふるふるっと真っ赤になって首をふるティセリア。くすりっと小さく笑ってそれを見上げるルードヴィッヒ。

魔防壁の見張り台に立つ男達から爆発しろと怨嗟の声が響く。


 ちらりとルー君の首筋を覗くと見える、小さな2つの傷跡。

ほとんど飛んでしまっているが、落ち着いてみると、断片的にだが思い出せる夜の淫夢。確かにヴァンパイアって精とか血を吸収するけど………。

血を吸った? あとは、少し意識がはっきりしたのかより鮮明におもいだせ………。

ふるふるっと首を振る。


「ルー君?」


「はい、なんですか?」


 少し前を鼻歌を歌いながら歩いていたルー君がくるりっと振り返る。

髪の毛がさらりと流れて、お伽話の王子様のように見えなくもない。ちっちゃいけどね。

くすりっと思わず漏れた笑みに小さく首を傾げるルー君。


「ぁ………いや……ええとだね、その………ぁ~~……うん! その昨日の夜なんだ…けど」


 もごもごと口を動かし、声に鳴らない声が漏れる。気合を入れるように小さく頷いて聞きたかった事を聞く。

昨日といった時点で、照れて頬が染まる。夜という単語を聞いたルー君が少し照れるように真っ赤になっていくのを見て

声が小さくすぼみ、肌が粟立ってゾクゾクっと身体が震える。

手を伸ばしてルー君の頬にそっと触れる。温かい。

くすぐるように撫で、なぞる。小さく震えるルー君をそのまま腕を伸ばして抱きしめるように抱き寄せる。

至近距離でふぅっと吐息をルー君の頬に吹きかけ、そのまま唇を近づけていく。

白い肌、美味しそうな首筋。

可愛い声を聞かせてくれるんだろうか。


 雲の切れ目からところどころ差し込む日光が幻想的な景色を作り出している。

遠目にはゆっくりと近づいてくる陽の光が、ティセリアとルードヴィッヒを照らし、浮かび上がらせる。

びくりっと小さくティセリアの身体が震える。

ティセリアの手が軋む音が聞こえそうなほどに、ゆっくりと震えるような手つきでルードヴィッヒの頭を撫でて、顔を身体を離していく。

怪訝そうな表情でルードヴィッヒがティセリアを見上げる。


「ティセさん?」


 見上げてくるルー君を見つめながら身体の熱が、波が引いていくように収まっていくのが感じられる。

何をしようとしてた? 血を吸う。 なぜ? 欲しいから。 

何が? 彼が。 どうして? 愛しい。

わけがわからない………。

可愛いとは思っていた、小動物のような感じだったはず。

愛しいとかいう感情はない、なかったはず。 少なくとも”今は”男として自覚がある。

なんだろう、気持ちが悪い。 まるで催眠や洗脳ってこういうものなのだろうか?

この意識と感情はなんなんだろうか、本来とこの空間の性別の違い?

ここまで長くログインはしてなかったので、わからないけれど思考が感情が書き換わるという事はないはず。

そもそも、なぜ血が欲しい?

ステータスを見ても、魔力も血も血中魔力も下がってはいない。なら、どうしてだろう。

そもそも血を吸うという行為には抵抗がある、だから輸血パックがアセロラなどの味で売られているわけだし。

クエストで必要があったときに、マッセに何度か飲ませてもらったぐらいで、男のはイヤだったはず。


 ぎゅっと手が握られ、はっとして意識を戻すと心配そうな表情のルー君と目が合う。


「大丈夫ですか?」


 撫で撫でと届かないからなのか、手を両手で抱きしめるようにして撫でられる。

大丈夫というように小さく頷くとにこりと微笑まれる。

くすぐったくて、照れくさくて逃げるように手を引こうとして、ぎゅっとそのまま手を捕まえられる。


「ちょっとだけですけどお陽様が気持ちいいですよ、ね? あの丘にいくんですよね?」


 手をつないだまま、遠くに見える丘を指さしそのまま歩き始めるルー君。

結構恥ずかしいものがあるけど……ぎゅっと握られて振りほどくのも違う気がするし、まぁいいかなぁ。

太陽? 太陽があたったから戻った? ヴァンパイア、種族………これか?


――血への渇望――


ヴァンパイアとしての本能が強くなり血などへの渇望を生み出し、種族としての本能が日中での活動を容易にする。


日中ステータスペナルティ軽減 夜中ステータスボーナス+5% 再生速度+30%

種族固有系統使用時における血の消費量+10%

種族固有系統使用時の威力+5%


 特定レベルで選べる種族特性の1つだけど……、これのせい?

本能が女吸血鬼としてなら辻褄もあるけど、HALがどこをどう変えたのかわからないっていうのはちょっと怖い。

あっ、だとしたら、他の特性とかも影響が出る??

他に不味そうな特性とかを選んだ……


「ぁっ……ルー君?」


「大丈夫です、せっかくデートなんですからそんな顔してちゃダメですよ?」


 ぎゅっと握られた手が引かれる。

引かれるままにかがむようにして身体を下げると耳元で囁かれる。

ちゅっと頬にナニカがあたる感触。

離れていくルー君の顔。 え? あれ?

手が自分の頬に触れる。 えっとキスされた?

恥ずかして、まんざらでもないと思う自分がいて、それを否定したい自分もいて逃げようとしたところをぎゅっと手を引かれる。


「僕が側にいますから」


 にこりと微笑んで、逃がさないとでもいうようにしっかりと手を繋ぎ直される。

そうじゃない、ちがうんだけど、いや、えっと………。まぁ、いいかなぁ。


「この子は………そういうのは……もっとこう」


 撫で撫でと思わず頭を撫でる、陽の光に触れているせいなのか、落ち着いているからなのか年の離れた弟という感じ。

それに心の中でなんどか頷く。ふっと頭の隅に蘇る昨日の淫夢というか、実際にあった………あった?

あ………いや、うん考えたら負け。うん負けだよ。


「ふふ、どうしたんですか? 昨日の事でも思い出しましたか?」


 くすりっと笑って小さな、聞き取れるか取れないか。聞き返してとぼけられれば空耳だったんだと思うような声。

それでも聞こえてしまって、顔が熱をもって真っ赤になっていくのがわかる。


「ティセさん、どうしたんですか? 顔真っ赤ですよ?」


 心配そうに見上げながらにこりと微笑む。

おかしい、もっと純粋で小動物みたいでおどおどしてて………こう、初心な感じで可愛かった………かったよね?

知らない間に記憶の改変が………いや、えっと。なんだろうこの、からかわれて反応を楽しまれてる感じ。

朝は、いつものルー君だったのに………。


「えっと、ルー君。あのさ………や、なんていうか………」


 いつのまにこんなに手慣れたのとは聞けず、なんですか? と聞き返されてなんでもないと返してしまう。

ぎゅっと握られた手から体温が伝わってきて温かい。

小さな手だけど、それは男らしいというか………不思議と嫌な気分ではなくて。


「うん、まぁなるようにしかならないかな。ルー君も花びらの採集手伝ってね、ちゃんとご褒美もだすからね」


 ぴくっと反応して嬉しそうに頷くルー君。

やっぱり子供といえば違うけど、ご褒美で喜んでくれると可愛いなぁと思ってしまう。


「あれは馬車ですか?」


 じっとルー君が視線を上げて道の向こうを見つめる。

言われてそっちのほうを見る、分かれ道の1つ南の方角。

遠すぎて土煙が上がっているぐらいしか見えない、遠視スキルを発動させて視力を上げると、かろうじて荷馬車のようなものが見える。

日中のせいで夜間ほど視力補正は働かず、判別しにくい。


「ここに来るなら、たぶん黒騎士か撲殺の関係者じゃないかな? 他にもいくつかあるだろうけど」


「他があるんですか?」


「うん、六十六の魔神が北にはいるんだけど、その伏線みたいなクエストとかイベントはいっぱいあるからね」


「はい、確か魔がはるか昔に侵攻してきた、それに対してこの大地にいた魔族もヒトも対抗したっていう物語ですよね、その過程で北の大地は隔離封印されて、封印に開いた穴がアビスっていうダンジョンですよね」


 うんっと小さく頷く、おおまかなストーリーはゲームのパッケージに書いてあるが、本当にそれだけ。

何をしてもいい、だから逆に言えばチュートリアルで教えられる基礎知識や説明を聞かなければ何も説明されない。

例えば、初めてログインして町中で俺は勇者だ!とか叫べば街のNPCに避けられるし、人の家のタンスやおとしものを取れば評判も下がるし、兵士に連行されたりもする。

知識も知りたければ図書館へいくなり、NPCに聞いたりしなければわからない。NPCでも1人1人によって持っている知識量は全然違うし。

でね、ただ1こだけあるんだよ、初心者に絶対に熟練者が教える事って義務付けられてるクエスト。


「そういうのは規制されたりされないんですか?」


「一番むずかしいクエストってなんだと思う?」


「敵が強いとか、珍しいものを取ってくる、もしくは評判の落ちるものではないんですよね?」


 ふふ、そーだね。ルー君はやっぱり賢いね。

チュートリアルが終わったんだったら、騎士のラヴァートとその主人のアストレアお嬢様には会ったよね?

で、そこでポーションと小銭をもらったよね。

うん、そうだね、いかにも騎士って感じの爽やかなお兄さん、深窓の令嬢のような、まぁこの首都の第4王女のアスト様。

クエストとか色々進めていくと端々で結構登場するんだよ。

それこそ、頼れる兄貴でピンチに駆けつけてくれたり、貴族の腐敗のせいで報酬の支払われないクエストの終わりにお嬢様が謝罪して報酬を出してくれたりね。

クエストを受けていけば彼と彼女の好感度も上がるから、それこそ親友のようになるよ。

実際ファンクラブなんかもあるからね。

でね、よくあるお話だよ。お涙ちょうだいの三文芝居……なんだけどね。

”聖女の堕ちる地”っていうクエストがあってね、クエスト内容は詳しく話せない、口伝のみでって暗黙の了解みたいなのがあるから伏せるけど。

彼らを殺さなきゃいけないって言われたら?

できないよね? ただのNPCならそうでもないけれど、仮想空間で動いてしゃべって、助けてくれたりする人を殺せる?

中にはいるだろうけどね、トラウマになる人もいるから、医学プログラムの名前は覚えてないんだけど

そういう記憶を薄れさせるものも導入されてるぐらいだからね。

その元凶の1つが………


「魔神なんですね」


「うん、堕落した聖騎士ってギルドがあって彼らの目的が全ての魔神を滅ぼす事だから、いるなら間違い無く来ると思うよ、ランカーもだいぶいるはずだし」


「えっと、それなんですけど、響き的にはなんとなくわかるんですが、具体的には何をさすんですか?」


 えっとね、1:1での戦闘とかイベント戦とかでランク付けした各分野上位3000までがランカーだね。専用のサイトがあるよ。

3000っていうと多く感じるけど、全体人口からすれば1%も無いからね。

で、その中で100未満の二桁番台のランカーがトップランカーって言われてるね、なんていうか同じ人間なのかって思う人が多いよ。

あと、そのサイトでアンケート結果があって現実世界で武術をしている人はランカーにはそこそこいるんだけど。

トップランカーは逆なんだってさ、どこかのサイトにも上がっていたけど

何もしたことのない素人がRCOで剣を触り始めて、現実世界でもかなりの腕前になって全国大会? えっと日本の中学校や高校での大会だね。

それに出場するまでになったっていう話があったよ、筋肉とかがついてないからさすがに、優勝はできなかったらしいけど。


「動画もそのサイトにリンクがまとめられてるから見れるよ、他にも名誉ある番外っていって知られていない強い人もいるんだけどね」


「えっと、ティセさんが強いって思う人は?」


「んーーーー、そうだね条件にこだわらずだと、魔王、凶刃、獣王この辺り? あ、あとお父さんも強いね」


「お、お父さんですか?」


 そういう反応になるよね、名だたる2つ名や称号が上がっている中に”お父さん”だもんなぁ。

微妙な表情になっているルー君をみながらくすくすと笑う。


「そう、生産ギルドアースマイトのギルドマスター。見た目はマッチョなお父さん。性格も行動も。だからみんなからそう呼ばれてる」


「強いんですよね?」


「うん、人間やめてると思うよ。本職は職人さんらしくって生産技術もなんかチートがかってるけどね。伯爵の住んでいるドラキュラ城を作ったのもここのギルドだったよ」


 本当に、あんなお城を作ってしまうとは誰も思ってなかったんじゃないだろうか。

ある日湖畔にドラキュラ城建設予定地という立て札が立って、誰もがネタにし始めた頃に

たった1週間でそれはもう立派なお城が立ったのだ。


「すごいですね、今度一緒に行きましょうね」


「ん? うん、行こうね」


 笑顔になってよかったですというルードヴィッヒの小さなつぶやきがティセリアに聞こえる事はなかった。


なんか書いているとイチャイチャメインになって、そしてR-18タグがつきっそうな方向にいきます orz

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