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 首都噴水広場、首都のちょうど中央に作られた石畳の敷き詰められた巨大な噴水広場。

その隅に、黒騎士中隊の詰所は作られている。まるで元からあったような西洋風の建物。

入り口の階段を上り、2階が一階として入り口となっている。元々は倉庫用として作られた一階は混乱時に備えてか

地上一階を無理やり地下扱いにしたもの。

 

 そして、この詰所建築当時は覚えているユーザーこそいたものの、既にβテスト終了時と同時なくなったサービスだけあり

残っていた転送方陣も起動するとさえ思われていなかった。

それを、空間魔法やスキルによる短距離転移はできるのだから試してみる価値はあるということで、一部のプレイヤーが様々な実験と検証を繰り返して

出せた結論が、一部の転送機能は魔力等を代価にすることにより起動するというもの。

転送方陣自体には、使用によるペナルティがあって首都から、北の地点Aへ転送すると首都と北の地点Aが出発も到着も1時間使用できなくなる。


「このような感じでしょうか?」


 黒い軍服に身を包んだ長身の女性、小さなメガネを指先でくっと上げなおして、質問は?と言ったような視線でこちらを見る。

小さく手を上げると、女性の視線がティセリアへと向けられる。


「転送がかぶったら?」


「すでに検証されております、同時ならば魔法能力が総合で上回るほうが優先、それ以外は先着です」


 階段を降りた場所は小さくスペースが取られており、目の前には巨大な鉄の扉。

女性が手をかざすと青白い紋章が浮かび上がり、その身をきしませながら扉が開いていく。


「転送は6人までですので、ここでお待ちになっているもう1人の方と一緒に飛んでいただきます」


 扉の中は普通の首都の石畳、その中央には2m四方の磨かれた巨大な床があり、そこに刻まれた転送方陣があり

4方向それぞれに立った魔法使いの魔力が注がれて青白い光を浮かばせている。


「こんばんわ、アロワ新聞RCO支部支部長のギムレーと申します」


 ダークグレーのやや古風なスーツに身を包んだ男性が右手を胸に当てて頭を下げる。

それに釣られるように慌てて頭を下げるティセリア。

ふっと横を見ると優雅に礼を返すルー君とディアナ。軽く手をあげて答えるルーリ。

わざとなのだろう、普段とは違うぎこちなさげに礼を返すマッセ。


「おや? お久しぶりでございます」


「はい」


 にこりと微笑むギムレーと軽く頭を下げるルー君。

顔見知りなのか、このゲームをされていたんですねとお互いに話している。


「ルー君? 知り合い?」


「はい、以前取材で」


 取材? 初心者のルー君を? 初心者アンケートだっけ? 

けどアレにギムレーさんがわざわざ立ってる事は無かったような??


「ぁ、ティセ。あの……現実世界のほうでです」


「ぇ?」


「はい、RCO支部勤務となるまではスポーツ欄の取材もしておりました故」


 顔に出ていたのようで、にこりと人辺りの良さそうな笑みを浮かべて、ギムレーさんが補足してくれる。

そう言われれば、プレイヤーではなくて企業新聞だったような気がする。


「余り新聞を読まれない方の為のメールサービス等でございますし、プレイヤー主導のものも多いですので………」


 謝ろうとする前に、先にフォローをいれられてしまう。

驚いたように見上げると少し照れたような表情を浮かべるギムレーさん。


「無駄に歳だけ重ねておりますので」


 お昼のHALのアナウンスが終わってから、断続的に繰り返される地鳴りのような音が響く、そして少しだけ地面が揺れたような感触。


「また地鳴り?」


 眉をしかめて、そう呟いた瞬間にドォンっという爆発音のような物と共に大地が揺れる。

いきなりの事に、バランスを崩してコケそうになるところをギムレーさんに抱きとめられ、肩を支えられる。

どこまで紳士なのだろうかこの人は…………というか、こけそうになったのが自分だけとか恥ずかしい。

視線を動かすと中空にモニターのような物がいくつか表示されて、噴水広場の様子が移しだされる。

中央にあったはずの噴水は無残に吹き飛び、水ではなく地下から赤い光のようなものが吹出すように溢れている。


<緊急警報レベル4発令 場所中央広場 レベル60以上の魔物の存在を確認>


 一瞬遅れて警報のようなものが鳴り響き、アナウンスが繰り返し場所と緊急事態だという事を伝えている。

ここまで案内してくれた黒騎士中隊の女性が手に小さな魔道具を展開させ、何かをしゃべっている。

聞こえてくる声から、電話か無線のようなアイテムかもしれない。

何かを喋っていた女性が小さくうなづくとこちらへと振り返り、見えるように手を上げる。


「おう、すまんな。いきなりで悪いが、ティセリア。ここはいいから飛んでくれ」


 女性の手のひらに載せられた小さな球体からウルさんの声が漏れてくる。背後のほうから何かを指示する声等が混じって聞こえるから

予想通り電話か無線のようなアイテムで、システムによる個人通話だと複数人での会話なんかができないからわざわざ作ったのかな?


「ぇ? 飛べって………あれって結構まずいんじゃ?」


 室内に映しだされたモニターに映る噴水広場だった場所。

よくは見えないが、赤い光の中に黒い人影が蠢いているのがわかる。

あの光の色は咎神の神殿でよく見るもの、そこにいる魔物は、いうまでもなく上位種。


「かまわん、想定内だし時間がねえ。それとそこにいるちっちゃいお嬢さんに結界の手間省けて助かったと伝えてくれ。ウチで張るより強固だったしな」


 何の事か理解が追いつかないが、ちっちゃいお嬢さんという言葉に視線をルーリに向けるとこくりとうなづかれる。

褒めてと言わんばかりに(無い)胸を逸らして。


「………………戦い易いように誘導した、噴水広場には張っていない」


 室内のモニターに視線を戻すと赤い光の中から、何かが飛び出してくる。

薄っぺらいまるで影がそのまま立ち上がったかのような、人型の影。


「あれは…やっぱり咎神の…………」


「大丈夫だってんだろ、アレぐらいなんとか出来る戦力はあるからな。ベルカそいつら頼む」


 言い終わるが早いか、ここまで案内してくれたベルカと呼ばれた女性に腕を掴まれて魔法陣へと立たされる。

他のみんなは既に魔法陣の上に移動している。


「あなたのソレは美点なのでしょう、それでもココで時間を取れません。転送方陣の時間のほうが重要なのです」


 ベルカが私の腕を離すと同時にマッセに引き止めるように腕を掴まれる。


「マッセ…………」


「本人らが大丈夫やいうてんねんで? 何が来るか予想済みやのに対応できへんはずあるかいな。信じるのも大事やで? それにティセとアレは相性悪いやん」


 ふわりと下から吹き上がるように魔力の濃度と輝きが増していく。

転送方陣を囲む4人の魔術師が同時に起動ワードを口にすると、まばゆい光が室内を包みこみ光が消えると同時に6人の姿は消えていた。


「やっぱ事前に説明しておいて正解だな」


「上策したのは私ですが?」


「おう、感謝はしてんぜ? それよりアレだ。さっさと片付けるぞ」


 無表情だったベルカの顔に少しだけ笑みが浮かぶ。

光の粒子が集まる演出とともに、黒い制服が鎧に包まれていく。









 噴水広場を囲むように結界が張り巡らされ、その外周をさらに黒騎士中隊の隊員達がぐるりっと取り囲んでいる。

結界の中、広場に残されたのは11人。その前衛の真ん中に鎧も纏わずに、黒い制服姿で腕を組んで立っているウル。


「まったくよぉ、新兵の訓練に、北への物資輸送の警護、治安維持の首都巡回、首都近辺の警戒と敵性生物排除ってぇ戦力がねぇ時にコレはめんどい」


 着地の音すら立てずに光の中から飛び出してくるシャドーテッドマン。

影をそのまま立体化させたソレは、咎神の神殿にでてくる上位の魔物。

予めその存在を予測し、下水道の入り口を結界にて封鎖し一箇所だけを開けておくことにより噴水広場へと誘導。

戦い易い地形と事前準備が可能とはいえ、強化された上位の魔物。

比較的弱い魔物しか居ない為に首都にはそれほど多くの戦力を配置はできず、上位の魔物と戦えるだけの戦力はあまり無い。


「お待たせしました。無事送り出しました」


「おう、ご苦労さん。目の前にあるもん何でもかんでも助けようってのはいいことなんだがな………」


 しゅたんっと装備の割に異常なほどに小さな着地音で、ウルの横に着地するベルカ。

既に黒い大きな両手剣、クレイモアと金属鎧を纏っている。


「しっかし、ベルカ。お前足音と装備重量があってなくねぇ?」


「乙女の秘密です」


 相変わらずの無表情でそう返すベルカに、肩をすくめて大げさに手を広げてみせるウル。

乙女って歳かよっとツッコミかけて、視線の温度が下がった事を敏感に察知して口をつぐむ。

目の前の敵より先に自分がクレイモアの餌食になりたくはない。


「黒騎士中隊の幹部連合がお飾りじゃねぇって事を思い知らせっかねぇ」


「正確にはココにいる幹部は2名。残りは特務2番隊です」


「いいんだよ、こまけぇこたぁよぉ!」


 あーもう、てめーは!と笑って言いながらインベントリから取り出した黒い鋼鉄製のトンファーを両手に装備し、構える。

わずかに左にずれたその場所に大剣を構えながら肩同士をくっつけるように進み出るベルカ。


「んじゃまぁ、一狩りいくぜ」


「上手に焼けましたが先です」


【フレイムボール】


 2人のやや後方に構えた黒騎士中隊の1人が詠唱破棄し、巨大な火球を敵の中央目がけて放つ。

ドォンっと着弾と同時に爆発し、炎が広がりいくつかの影を飲み込み焼き尽くす。

火球が着弾するより早く前へと走りだした敵へと2人は斬り込んでいく。

風すらを薙ぎ払うような轟音をたてて右から左へと水平に振るわれる大剣。

避け残った影人間が両断され、かろうじて盾で受け止めたものも盾ごと吹き飛ばされて転がっていく。

そこへ魔法での追撃が入り、火球が着弾し爆発する。

水平に払われた大剣を飛び上がり、飛び込む事で避けた影人間。

武器をベルカに対して振り上げた瞬間に地面にたたきつけられる。


「おいおい、目ついてんのか?」


 大剣が振るわれると同時にその刃の後ろから踏み込み、跳躍。

一瞬遅れて大剣を避けて飛び込んできた影人間を頭上からトンファーで殴りつけて地面にたたきつけた。


「どうみてもついていませんね」


「いや、だから………ネタにマジレスすんな、頼むから」


 くるりっと手首を返してトンファーの取っ手を回し、棒のようにして叩きつけた影人間に追撃を与える。

石畳を蹴りつけ、後ろに下がった瞬間に、ベルカの大剣が轟音とともに振り下ろされて影人間の1匹が光の粒子となって消えていく。


「おい、俺にもあたんだろが!」


「大丈夫信じてる、だから安心してしん…?」


 変わらずの無表情でぼそりとつぶやかれた一言に、誰が死ぬか!冗談か本気か表情にだしてくれ!と言いながら

突き出される影人間の剣を左手にもった肘までを覆うトンファーで受け止め、取っ手を返して絡めて剣を捨てさせる。

がら空きになった胴をめがけ、踏み込み突き刺すように右手のトンファーを突き出す。

そのまま更に踏み込み、拳で殴りつけるようにしてトンファーで何度も殴りつけて、光の粒子へと変わった瞬間に後ろへと距離を取るために跳躍する。

先ほどまでいた場所のあたりに、シュタシュタっと減った数よりも更に多くの影人間が光の中から飛び出してくる。



 

あいかわらず会話で悪戦苦闘しています。

今回は会話文を書きたいのをぐっとこらえて、描写のほうを多めになるようにがんばりました。

多めになってる………はず……だといいな。



えーっと、ちょこっとシステムの説明を。


武器なら例えば

片手剣という「能力」があって熟練度があります、これをあげると

熟練度1.00でスラッシュという「スキル」を覚えます。


スキルの発動にはいくつか条件がありますが

システムアシストによる発動はよめ決められた動作をするもの。

例えばスラッシュをアシストで発動すれば袈裟切りに勝手に身体が動きます。

自分で発動すれば「斬る」という動作にスラッシュのスキル効果が乗ります。


そして片手剣熟練度が上がると覚えたスラッシュの威力が上がったりなど恩恵もあります。

それとは別にスキルの熟練度が上がります。

これがある程度たまるとスキルのカスタムポイントとしてたまり

カスタムスラッシュスキルを作るか、元のスキルを強化できます。

スラッシュが例えば通常攻撃に5%の補正 消費スタミナ5 クールタイム1.00 キャストタイム1.00。

これに攻撃力に1p振ることで5,1%の威力にしたり強化できます。

カスタムスラッシュ1として登録すると元スキルは強化だけですが

麻痺効果をつけたり、属性を纏わせたりできます。

属性を付加する能力とそれで覚えるスキル(風神剣等)もあります。



1つのスキルに登録できるカスタムスキルは3つまで。

なのでスラッシュ、カスタムスラッシュ1-3となります。

元スラッシュを使えばスラッシュに熟練度が溜まって1pになると

元のスキルか1-3のどれかに触れますが、

カスタム1を使っての熟練度とポイントはカスタム1だけに適応されます。



魔法なら

炎魔法の熟練度1.00でミニマムファイアという「魔法」を覚えます。

ちなみに覚えていなくても、デフォルトで用意されている詠唱分さえ知っていれば

MP消費増大などのペナルティさえ気にしなければ

炎魔法しか覚えてなくても、水魔法を使えます。

詳しい説明は下でもしますが、詠唱破棄、短縮は「覚えて」なければできません。


魔法の場合はカスタム登録できるのは1つまで。


武器のスキルと違うのは詠唱が必要だということ。

これは特定のルールがあってそれを守っていれば自分で好きに変えられます。

そして、詠唱短縮、詠唱破棄を行うと威力が下がったり消費MPが増えます。

これは元の火炎魔法熟練度が上がると威力が上がったり、消費MPが減るので相殺したりできます。

威力でいうならきちんと詠唱したほうが強いのは当たり前です。


他に補助能力もあり、詠唱短縮という「能力」の熟練度が上がると

上でいった、詠唱短縮や詠唱破棄のペナルティが減っていきます。

またこの能力が上がると、特殊スキルというカスタムできないスキル

完全詠唱破棄lv3;次に使う中級魔法lv2以下の魔法の詠唱をペナルティなしで破棄

などを覚えます。



また一定条件を満たすと魔法はカスタムが少ない代わりに

オリジナルの魔法を作ることができます。



条件上戦闘能力を上げるには一部例外の変人プレイでなければできませんが

レベル1での生産能力最大の職人なんかもいます。


で、企業についてですが詳しく書くとボロがでそうですが

現実企業もいくつか運営と開発に料金を払って進出してきています。

ゲーム内に飲食店舗をつくって新製品のモニターにしたりとかね。

もちろんリアルマネーの力で店をRCO内にたくさん立てたりとかはできません。

街に用意された企業地区だけに1箇所でやはり、売上がわるかったり苦情があると強制撤去されます(w


新聞社もRCO内で現実新聞を発行したりとかしています。

これは、現実の通貨を払って買います。

アロワ新聞なら、アロワ新聞を取っていれば、RCO内では無料だったりします。

もちろん、ゲーム内の出来事を載せた新聞もつくったりしています。

なので、このギムレーさんは元々は現実世界の新聞屋ですが

RCO内に転勤?になっています。


ちなみに、そういった店には年齢認証をして、制限を外してないといけません。

ぇ? いえ、何をいっているんですか? お酒とかですよ?


12/23 繋ぎの部分などを修正。



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