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時系列は30話の日の朝となっています。
夜、静かな首都に煌く閃光、そして爆音。そして衝撃。
んぁぅ………。
ベッドの上で伸びをして、起きる。
シーツの上に広がった髪の毛を束ねるようにして後ろにまとめて止める。
身だしなみを整え、台所へ。
階段を降りる時に裏庭を覗くとルー君が真剣な表情で今日も素振りをしている。
さって、朝御飯はどうしよう?
久しぶりにこう、お味噌汁とご飯が食べたいから和食にするかな?
マッセはいいけど、他3人とも日本人じゃないし大丈夫かな?
っと、メッセージ来てる?
《商品在庫照会》 差出人:ゴムル
こんばんわ、いつもお世話になっております。
鉄ノ鬼第3工房責任者のゴムルと申します。
御舟の紹介にてメールをさせていただいております。
申し訳ありませんが、ルナクリスタルの在庫があれば譲っていただけないでしょうか?
《アロワ日報 朝刊》 差出人:ギムレー
本日未明、首都にてギルド鉄ノ鬼の工房にて爆発事故。鉄ノ鬼によると新兵器の実験中の事故との事。
爆発による死者、重傷者は無し。軽傷者は既に治療済み、一般市民の被害は無しとの発表。
イルミナ街道にてシャドウリザード族の砦建築が確認される。
規模、兵装共に充実。中級者未満は迂回されたし。
黒騎士中隊一般公募兵の訓練始まる。
一般公募枠にて入隊した黒騎士中隊のメンバーによる演習が先日より首都南平原地帯にて始まる。
増える首都近郊の魔物被害と侵攻を抑えるための戦力として今後に期待される。
謎の男再び?!
一部ユーザーのご要望にお答えして
先日報道した”蛇”ことネームレスと名乗るユーザーの目撃情報を掲載。
月影の廃墟にて助けられたというユーザー2名。
彼らの証言によるとダガー2本を巧みに操り、同時に3体のハイ・オークを撃退。
隠れたトップランカーか? はたまた職業軍人なのか?
ネームレスという有名なユーザーは過去存在せず、彼の正式なユーザー名は不明。
当社データバンクに類似する人物の登録も無く、みなさんの目撃証言を募集しております。
………………。
ルナクリスタルって何に使うんだろう?
えーっと確か魔力蓄積と放出の補助に使えるから、ビーム兵器を作ろうとしてたのかな?
いやいや、いくらなんでも…けどあの工房の皆ならやりそうだし………エンシェントゴーレムとかはレーザー出すよね………。
そして、もう1個はRCO内の新聞社の発行している新聞だけど、ネームレスってあのネームレス?
たしかに、男気溢れる名無しです!とは名乗れないけどさ?(笑
思わず料理をしながらくすりっと笑ってしまう。
それにしても彼、初心者だったはず………?
掲示板を読んだ限りではネタスキルのネタキャラで遊んでたみたいだし………。
この間ダガーを作った時も、ステータス高くなかったはずなのだけど、まさかあの時ダガーでハイ・オークとやりあって勝った??
しかも、戦闘に慣れてないのに3匹相手に???
ぅーーん、たま~に凄まじくゲーム適性を誇る人が独特の感覚を持ってたりするらしいけど、彼もそういう類なのかな?
けどネームレスって結構居そうな名前ではあるし、うん、まぁ元気そうでなによりだよね。
食卓の上には、真っ白いご飯。卵の浮いた千切り大根のお味噌汁。
中央にはサラダが盛られ、各個人の前には海苔と梅干が小皿に置かれている。
匂いに釣られるようにルーリが降りてきて椅子に座り、つまみ食いをしようと伸ばした手をディアナが叩き、その横に座る。
「…………ちっ」
「お行儀が悪いですよ?」
「すいません、遅くなりました」
キラキラと汗を輝かせ、タオルでぬぐいながらルードヴィッヒが入ってきてルーリの前、ティセリアの隣に座る。
「ん~ええ匂いやわぁ、やっぱ日本人の朝はこれやわ~」
最期にまだ寝間着姿のマッセが降りてきて、鼻を鳴らす。嬉しそうに笑顔を浮かべながら椅子へ腰を降ろし
皆が揃ったところで食事が始まる。
「そういえば、3人は和食平気? 急に食べたくなって作ってみたんだけど?」
「……………日本人だから」
「お、お姉様が作られた物でしたら、例え毒であろうとも!!」
「……………お姉様が毒を飲ませるの?」
少し興奮気味なディアナが長い耳までを赤く染めながら、料理とティセリアを交互に見つめ
ティセリアに熱い視線を注ぎながらそういうと、すかさずツッコミがはいる。
「!! い、いえ、とんでもありませんわ」
「ぇっと、僕は食べるのは初めてですけど、美味しいと思います」
「……………幼気な少年の初めて」
ぶっ、こほっっこほっっ。
ルー君のその、アレな状況を想像してしまい、思わずお茶をつまらせて咽る。大丈夫ですか?っと言いながらルー君が背中を摩ってくれる。いい子だなぁ。
思わず頭を撫で撫でと撫で返してしまう。
「……………ちっ、計算ミス」
ルーリ……恐ろしい娘。
「と・こ・ろ・で。ティセ、うちには聞ーてくれへんの?」
寂しいわぁと言いながら抱きついてティセリアの耳元にふぅっと吐息を吹きかけるマッセ。
「!?」
途端に白い透けるような肌を耳まで真っ赤にして照れて視線を反らすティセリア。
「ちょっ、ま、マッセ? 日本人だって知ってる……からっ」
「あぁん! もうティセは冗談やのに、ほんま可愛いわぁ」
「うぅ、マッセが虐める」
「あははっ、それでティセ? 今日”も”店はするねんやね?」
「うん」
ぎゅっとマッセに抱きしめられて、頭を撫で撫でと撫でられる。
いつも通り甘い匂いと柔らかい感触にドキドキとしながら、首をかしげる。
「嫁が店するんやから、うちは仕入れに行ってくるかなぁって」
「うん、ありがと」
「あらあら? マッセさんお姉様は渡しませんよ?」
バチリっとディアナとマッセの間で火花が………おおぅ。
「ぇぇっと、私の為に争うのはやめて?」
「ぷっ、あかんあかん。棒読みすぎやで?」「お姉様………」
期待通りというか、予定調和どおりにちゃんと言ったのに呆れた様子でため息を吐かれる。
ヒドイ話です、しくしく。
「…………くっ、最期の1つ」
「負けません!」
3人が寸劇をしている間に、お皿にのこったプチトマトを巡り激しい闘いをしているルーリとルー君。
ルー君のフォークがお皿に伸びるとソレを阻むように、ルーリのお箸が割り込み、横へと軌道を反らす。
直ぐ様にフォークを引き、軽くフェイントを混ぜて再度付き出されるフォーク。
カキっと小さな音と共にフォークとお箸が交差し止まる。
「…………甘い、私は両利き」
すっと左の手にもお箸をもって、そのまま手を伸ばすルーリ。悔しそうな表情のルー君。
「甘い甘いで? 戦場で視野狭窄なんてもってのほかやで~?」
ひょいっと横から手を伸ばして、最期の1つのプチトマトを取って口に放りこんでしまうまっせ。
「「あぁ」」
2人のため息が漏れる。
「………ルーリはともかく、貴方まで何をしているのですか」
うん、そうだよね。ルーリはともかくルー君までこんな事するなんて珍しい。
ディアナに注意されてしゅんっとしょげている。
「さて、私とルーリはどうしましょうか? 今日は件の日ですしできればお姉様のお側に居たいのですが………気になることもありますので」
「…………お姉様の側と気になる事……………後ろ髪引かれる」
「ん?あぁ、私もちょっと出かけたら、知り合いと用事があるから………えーっとお昼前に戻ってくるってことでいいかな?」
「ほな、うちもでかける前にっと……」
マッセに抱き寄せられて、頬にちゅっとくちづけられる。
「ちょっっ?!おっ………」
口をパクパクとさせて、真っ赤になりながら何か言おうとしているティセリア。
「ん? どしてんティセ? 女の子同士やったらふつーやで?」
けらけらっと軽い調子で笑いながら真っ赤になったティセの頬を撫でて身体を離し、いってきますと言い残して出かけていくマッセ。
「……………私もする」
「そうです、女の子同士なら普通ですね。さぁ? お姉様?」
えぇっとなぜ美女2人に迫られて………いえ、嬉しいけど………なにか違うような?
むしろ私がされる側? 助けを求めて周りをみる。
ルー君、なんで羨ましいそうにこっちみてんの!? むしろ助けて!
思いが届いたのか椅子から立ち上がるルー君。
「ぇっと………僕はだめですか?」
その後結局3人にその……………。
短くてすいません。
活報にも書きましたが、ステータス状態:瀕死な感じです。
隔週ぐらいには更新できるようにしたいと思いますごめんなさい。
文章の感じがおかしいかもしれません、頑張ります。
次の話は、鉄ノ鬼の工房とヴァンパイアについての話。
その次ぐらいでルーリとディアナの話がかければなと思います。
ルー君はしばらくおやすみです。
アロワ日報は、メールマガジンのようなものと考えてくれればOKです。
発行しているのはプレイヤーギルドです。




