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いつもどおり、気怠い身体、上がらない気分、倒れたい程の何かと戦いながらカウンターで紅茶を飲む。

時折、武器や防具への助言を聞かれて教える以外は、以前からダウンロードしておいた小説を広げて読んでいる。

ギドは手が離せないということで、暇ができ次第店にくるらしい。

マッセは、ツェツィさんに引きずられて行った、心配させて云々と言っていたのでお説教でもされるのかな?

1人で店番というのも結構寂しく感じる

ふぅっと小さくため息を吐く、日中の癖みたいなものだ。起きているだけでもかなり辛い。

けど今日は何か20-30台のプレイヤーがいつもより多い、何かあるのかな?

いつもは9割が初心者、それ以外が1割と言った感じのはず。

それが、3割程度が20-30台のプレイヤーだ。ちらちらとこちらを見てくる視線もあるが、商品を真剣にみている。

状態異常ポーションにはレベル制限は付けなかったのだけど、それにしては話の広がりが速すぎる気がするし

午前の売れているデータを見ると、初心者プレイヤーには解毒ポーション。

これは恐らく毒の出る狩場へ行き始めた為だろう。毒を喰らう代わりに少し効率が良い。

20-30台のプレイヤーには、耐寒と凍傷用のポーションが売れている。

けれど、そのレベル帯で雪系のフィールドや、氷系の魔法を主とする敵はいないはず。

うーん?


「材料とかの買取はしてもらえないんですか?」


考え事をしていると声をかけられる、顔をあげると

ローブに身を包んだ少女、剣と盾を持ったオーソドックスな剣士の少女2人がカウンター前でこちらを見ている。

他に店にいる客の視線もこちらを向いている。

うん?買取している店なら結構あるはずだから

気にしていなかったんだけど……。


「うん?考えてなかったよ。今出しておくからちょっと待ってね」


買取品一覧を表示し、初心者の狩りや採集で手に入る素材の値段を設定していく。

レテ草 3gl

雑鉱石 6gl

甲虫の皮9gl

木片 8gl


「これでいいはずだよ、安かったらゴメンね」


少女2人と店にいる何人かのプレイヤーも買取欄を見ているのだろう。

……………??

ん、誰も売らない。安すぎたかな?

今の買取物価は全然調べてないからなぁ


「これは、どういう事ですか?」


キッっときつい目線でローブの少女がこちらにむかって声を荒げる


「ん?安すぎる?」


「他のもそうですが、レテ草なんかの買取価格が高すぎます!1つ3glでは、ポーション1つで6gl手間賃や失敗分を抜いたとしてもポーションの価格が5glではおかしいです」


たしかに採算が取れる値段じゃないけど、なぜそれをこの子が怒る?

儲かったで終わらせてしまえばいいのに、なんで?

買取価格を2glに訂正すると、結構な数の売却履歴が表示される。


「あなたに取って大した事のない額や物でも、私達には重要な事です」


「うん?けど高く売れるほうが良いんじゃ?ほかの店だともっと高く売れるでしょ?」


「初心者だからと施されるつもりはありません、この価格でポーション等を売ってもらえている事自体ありがたいんです、他の店に売ってもその店の値段に比べれば買取が安すぎます」


「あぁ、なるほど………、けどそれなら別に他で売ってここで買ってもよいんじゃ?」


「だから、見くびらないでください!他で売ってココで買ってもいいでしょう、けどそれじゃ自分の首を締めているのと一緒ですよ?ここの品物が無くなれば他で損して買わなければいけません。あなたがどれほどの財産を持っておられてもです!」


なんというんだろうか、今いる客は全部そうなのかな?

誰1人価格が訂正されるまで売らなかった、というか、何これ。地味に泣きそう。

私なら気にせずに、ちょっとだけココで素材を売って

残りを他の店舗で売ってとか表向き良い事をするとかも考える。

というか、この子に言われた時にまずそれを考えた。

だから考えた相場より大分安い値段設定にした、けどそこまで考えて言ってくれてるとは予想外だ。


「ありがとう」


にこっと微笑んでお礼を言う。

潤んだ瞳、笑顔で返されてローブを着た少女は真っ赤になっていく。


「わかって貰えればいいです。こちらこそ、いつもありがとうございます。ではこれで!」


早口でそれだけいうと逃げるように店を出ていってしまう。


「口はきついが、悪い奴じゃないんだ。ココには感謝してるから貴方にだけ損してほしくないんだと思う」


剣士の少女がお辞儀をしてローブの少女を追いかけて去っていく。

お辞儀をするということは2人とも日本人なんだろうなぁ。

買取を開始したってことは、もうちょっとポーションの在庫増やして置くかな?

買取の素材量で決めようかな、個人の販売上限数も買取が増えれば増やそう。

ぇーっと、

{表示されていない素材も買い取ります。応相談}

と書いて買取欄にコメントを付けておく

あと、他の素材も買取値段付けていかなきゃなぁ………

うぅ、数多いんだよねぇ、しかも素材がかぶってるのだとソレを考えて両方の値段決めなきゃいけないし。

ここでおかしいとボッタクリとか言われるだろうし、

儲けがちょっとでも無いとさっきの子が来たときにまた怒られそう………。


「すいません、防具のカスタムをしてもらえると聞いてるんですが?できれば耐寒強化してもらいたいのですが」


また何かあるんだろうか?声をかけてきた男を見る、ついでにステータスも。

レベル27。軽装の胸甲に毛皮のマントとローブ。靴もご丁寧に毛皮だ。

やはり雪系のフィールド?しかし、雪系フィールドの最低限のレベルは40。

奥のほうへといくと、鉱脈なんかもあったりして適正レベル帯では結構人気の狩場だ。

魔物が強化されているので現在は到底行けるレベルではない。


「ごめん、悪いけど初心者限定なんだよね」


「そうですか、ありがとうございました」


やけにあっさりと引き下がる。なんだろう?

今、答えるまでに一瞬の間があった。

初心者限定でしかできないのか、限定でしかしていないのか聞くと思う、なのに聞いてこない。


「何かあるの?」


「ギルド:ハイファイが、雪結晶なんかの買取をしているんです。なので死に戻りできるうちに少しでもと……」


なるほど、火口へデスゲーム前にと採集へ行ったのと一緒で

死に戻りできるうちに、高価買取でレア鉱石や難所でしか取れない鉱石を買い集めておこうって事か。

で、その買取金額の為にみんな耐寒ポーション買いに来ていたのか。


「そっか、ありがと。死に戻りするなら痛み止め買っていかないと神殿から動けなくなるから気をつけてね」


「ありがとうございます」


うーん、掲示板のチェックが完全じゃないのは仕方がないとして

外にも出ないと情報やなんかが追いつかないなぁ、お客さんとしゃべってもいいんだけど

知らない人と気安く会話できるほどリアルでコミュスキル無いからなぁ………。

それに外にでると、その間補充とか生産できないし、どうしたものだろう?

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