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もうすぐ夜か………。

火山灰と煙で見えない空を見上げながら、ステータス画面で時計を確認する。

17:25

そうしたら鉱石掘りをするかな。

ズズンっっという音と共に地響がする、大地が揺れる。


「やべぇっっ、でたぞ!!!」


「アイアンボールだ!」


通称アイアンボール

黒曜石による装甲を纏った人型のアルマジロ。

火口の頂上付近に現れて丸まり、凄まじい重量と加速を活かして

螺旋通路を転がり下りてくる、このフィールドのボスだ。


「問題無い。すでに結界設置済みだ」


対処方法は至って簡単で、結界石を使用して螺旋通路を加速がつく前に遮るとそこで立ち止まる。

そして火口の入り口へと戻って待っているので、あとは移動アイテムや脱出アイテムででればいい。

そしてしばらくすれば、ボス狩りPT等がきて倒してくれる。

けど、今その脱出アイテム使えないんだけど、どうするんだろうか?火口の外に逃げるのかな?


<<千里眼>>


「いや、不味いっっ。結界破られた!」


弓を背中に背負った男が叫ぶ。

地響は段々と大きくなってきており

跳ね飛ばされたロックゴーレムやワイバーンが破片となって火口へ落ちていく


「は?マジで?嘘だろ???おぃ!」


「死にたくねええええ」


「どうするんだよ!?洞窟はアイテム無いとはいれねぇよ?!」


「けど俺らじゃあの突進とめられねぇよ!下に行くほど威力増えるじゃねぇか、最下層だぞここ!」


護衛メンバーが口々に叫び、混乱しはじめる。


「あんたらええ加減にしぃや!男やろ!」


マッセの一喝でしぃんっとなるが、打開策はない。

周りを伺うように皆が顔を見合わせている。


「では、護衛メンバーは前線を。生産者は死に戻りまでになるべく採集をしてください」


すくりぃむの指示で慌ただしく護衛が動き出す。

補助魔法をかけて、洞窟の前からこちらへ上がってくるが、間に合わない。


(ティセ、どうするん?!)


ゆっくりと盾を出して剣を構える私にマッセから念話が届く。


(一撃だけなら防げるからさ。みんな下がらせて)


(………わかったわ、頼むで?)


(お土産よろしくね)


「皆まちぃ!上にティセがおる。囮をしてくれるさかい、そこで止まれば儲けもんや。下がりぃ!」


こっちの意図を理解したマッセの言葉に、反論もあがるが強くはない。

誰だってこの状況で囮をしたくないし、できるなら死にたくない。

蘇生ポイントで復活できるとは言っても、いつまでも続く保証もないし、痛い。

すくぃりむが指示すると直ぐに前線位置を下げてそこに護衛メンバーが並ぶのが見える。


地響が近づいてくる。

せめて夜だったなら、敵の強化度合いにもよるが勝てたのに

足が震える、怖い。どうしようもなく怖い。

コレほどリアルに感覚が再現されているのだ、痛いだろう。

掲示板によれば傷口もリアルで、腕が飛んだりするとも書いてあった。

火口に落ちたらどうなるのだろうか?一瞬で死ぬのだろうか?

溶岩に焼かれながら悶え苦しんでから死んでもどるのだろうか?

自分だけなら、皆を見捨てれば洞窟へ入れる。自分は通行アイテムを持っている。

怖い、とてつもなく、どうしようもなく怖い、逃げ出したい。

昔の事故を思い出す……あの時の痛みと苦しみは今でも忘れない。

けれど、だからそれをマッセに味合わせたくはない。

一緒に来た皆もそうだ、お腹が空いてない?とか食べ物を出してくれたりした。

熱風もさりげなく火口側にたって少しでも和らぐようにと気遣いもしてくれた。

あの時のアイツラとは違うのだ、良い奴らなんだ。

そして、これはゲームだ。大丈夫だ、ゲームなんだ。


アイアンボールは突進を防いだ場合は、その場で戦闘になる。

突進を止めて戦闘後、もしくは突進で最奥の広場まで行ってからから

アイアンボールは火口の頂上へと歩いて戻る。

だから、突進さえ止めれば後ろの皆は無事ですむ。


「真っ青だよティセリアさん?」


「っな、なんで下がってない?」


思わず怒鳴りそうになるのをなんとか飲み込み、声を返す。

声が震えているのが自分でも分かる

誠一が軽薄な笑みを浮かべながら横に立っていた。


「ん~俺ってさ、こ~んなキャラだけどさ?女の子見捨てて行くほどじゃないんだよねぇ」


くぃっと指を顎にあてられて顔をあげさせられる。

ぱしんっと手で叩き、誠一の手を払う。


「そうそう。それぐらいでないと。真っ青になって震えてさ、それ見て逃げ出せないっしょ?だからさ……無事に帰ったらデート1回ね?」


そういって身体を放すと前に歩いて行く、こんな時でも態度は軽い。

ステータスを見てもLv32、どうにかできるはずはない。


「まったくなぁ、皆して誠しねとか酷いっての。言ったほうは冗談でも言われた方は傷つくんだぜ」


独り言なのだろう、愚痴を言いながら前へ歩いて行く。

こんな場面に似合わない独り言、ごめん、ちょっとだけ思った。

思わず吹き出して笑ってしまう。


「そうそう、笑顔が一番ってね」


振り返って親指をたてて笑う。真面目にしてりゃモテそうなのに、イケメン爆発しろ。

地響、いや、地面が揺れている。もう眼前にまで巨大な真っ黒い球体が転がってきていた。

踏み潰されたロックゴーレムが一瞬で破片と化して消えていく。


「さぁてお立会い、お見せしますわ誠一が起こす奇跡の爆破ショーってなもんで」


パチンっと誠一が指を慣らす。


<<ブラストマイン>>


ドゴンっという爆発音が立て続けに起きる。

爆風に包まれ、炎を纏いながら迫ってくるアイアンボール。


「使えない地雷だけに地雷スキル?否、使いこなせない奴らが地雷なのさ!」


<<クレイモア>>


ドムっと鈍い爆発音と共に爆風に混じった鋼鉄の粒がアイアンボールに当たる。

しかし、固い装甲に阻まれ、外皮にめり込むだけで意味を成さない。


<<アイスマイン>>


バキバキっと凍る音、通路一杯に氷が広がっていく

しかし、超重量の塊は安々と氷塊を打ち砕いて進んでくる。


「いけね、決め台詞考えてねぇや」


<<ブラストマイン>>


ドゴンっと言う音と共に今度は通路の壁が爆発する。


「爆風で表面のトゲを取って鋼鉄の球を埋め込んでより滑るようにする。そしてあとはご覧の有様だよ」


そして、氷の上にいるアイアンボール。

爆発によって横にずれる、通路の端のせりあがった部分のせいで浮かびあがり飛ぶ。

真横を弾丸のように飛んでいき、そして火口の底へと落ちていく。


「ふぅ、いやぁリアルになるとこういう絡め手が使えていいね。女の子を口説くのにもよく絡め手使うけどさ?」


ぽんぽんっと服の埃を払う真似をしてこちらに戻ってくる。

気が抜けたのか、かくんっと膝から力が抜けて座り込んでしまう。

ははは…乾いた笑い。声がでない。震えも止まらない。

声をあげて叫びたいのを必死に堪える、叫ぶだけの気力が残っていないけど……

誠一が近づいてきて、頬を撫でる。

どうやら私は泣いている?そっと指先で涙が拭われる。


「おや、カッコ良すぎる姿に泣いちゃうほどかい?惚れてもいいんだぜ?」


いつの間にこちらまできていたのか、オヤッさんの

ゴツンっとおなじみの拳骨音が響く。


「お前はなぁにしてやがんだ!つうか、ああいう事ができるなら報告あげねぇか!」


「いやぁ、だって実験始めたの例のアナウンスからですよ?すぐに報告できるわけねぇじゃねぇっすか」


追いついてきたオヤッさんに拳骨を喰らいおどける誠一、目が合うと誰にも分からないようにウインクしてくる。

ぞわっと鳥肌がたってしまう。

いや、だから、中身男ですから、残念としか言ってやれない。

むぎゅっと背後からいきなり抱きしめられる。


「ティセ~~あんたはもう~ほんま無茶ばっかりして!!!!」


撫で撫でと頭を撫で回されて、向きを変えて正面から抱きしめなおされる。


「マッセ……その………腰ぬけて立てない」


ぼそぼそと小声でマッセに囁く。

他にも聞こえていたようで、ぴくりと護衛役のプレイヤーが反応している。

ティセリアはそれに気づいていないが。


「しょうがあらへんなぁ」


ひょいっと抱きしめられて抱き上げられる。

お姫様抱っこの格好だ。


「ぇぇぇぇっっっ、マッセ、マッセ。降ろして!恥ずかしいってこれっっ」


「ええやん。立てへんねやろ?しょうがないやん、あきらめぇや、な?」


いやいやいや、男として、いや女でもコレは恥ずかしいだろ!

必死に暴れようとするが、全然力が入らない。

腰が抜けているせいだと自分に言い聞かせて、必死に耐える。


(SSゲット)


(これは良い百合ですね、わかります)


「マッセ、なんか凄く居た堪れない。視線がすごいんだけど……」


「なんや?きにしぃなや?ウチは幸せやで?役得やわぁ」


いい笑顔でそう返すマッセ。

だめだこいつ、早くなんとかしないと。

いつもより推敲が少ないので変な所などあるかもしれません……。



トラウマって結構残りますよね。

作者はスキーが滑れません、怖いです、泣きそうになります。


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