YES!!YES!!!YES!!!!
2次会のレストランですぐ彼女に意識が向かう。
いた。彼女だ!うちの会社の子と話している。
山下が彼女たちのところへ向かっていくのを幸い、俺もその輪に加わった。
挨拶を終えたところで彼女をじっくり見てみる。
本当に好みのタイプだなあ。
俺の言わんとしている冗談を読みとって、優しくからかってくれたり。
打てば響くような事を言うと思いきや、彼女独特のユーモアで斜め上の切りかえしをする。
こんな賑わっている所じゃなくって、静かなところで、二人で話したい。
もっと一緒にいたい。
俺が新郎の辻とのエピソードを話したり、彼女は山下とのエピソードを面白おかしく話してくれる。
どうやら食べ歩きが好きらしい。
――――これは、チャンスじゃないか?
「いつも、二人で?」
「そうですね。
休みの日とかは、二人が多かったですね。
でも、仕事帰りは、辻さんと3人で夕飯一緒に食べたりしていました。」
辻てめえぇぇ!!知らなかったぞ。
誘えよな!!!俺もっ!!
二人は同棲しているから、気晴らしも兼ねて休みの日は女同士で遊んで楽しんでたんだろう。
「でも、ちょっとこれから気を使うね」
「あはははは!そうなんです。――――野暮なことはしたくないですから。新婚さんの邪魔にならないようにします。ちょっと寂しいですけど。」
「恩田さんは、付き合っている人いないの?」
さっき、山下に間接的に聞いたけれど、こう言う事は本人確認する。メアド・番号然り。
一目惚れに近いかたちで彼女に惹かれていた俺は、結婚も考えていた。
その前にお付き合いをして、もっとお互い知る必要がある。
「はい、でも私は一人ラーメンも一人牛丼も平気なので、これからは「俺じゃ駄目かな」
「え?」
失敗した。凄く真面目な子なんだよな。
初めて会った日に告白するって気が早すぎ?
「俺じゃ駄目かな?恩田さんと付き合うのは」
「いえ、そんな。じゃあ、お願いできますか?」
やった!!
マジ、辻感謝!山下感謝!友達でいてくれてありがとう!
Yes!!Yse!!!Yes!!!!
俺たちは晴れて恋人になった。
まだ、彼女は俺に対して距離を置くようなところがあったし、遠慮していることもしばしばあった。
が、一緒にいることに緊張していることはなく、お互いにこの時間を大切にしていると感じていた。
俺は、周りから、世間でいうところの『お金持ちのボンボン』で見られており、親しい友人間では無いが、色々な場面で奢らされる側に立つ人間だった。(時には年齢が上の方達より、多くお金を出すことを強要されていた)
なので、支払いの後にお金を渡させた時は吃驚した。その時は何とかおさめさせたけど、2回目のデートで彼女が伝票を掴んでササッと会計に行ったときは、更に驚いた。(自立している女性なんだな)
それから、時々彼女の方がケーキやお茶を奢ってくれたり、いつも美味しいお菓子や料理(彼女の手作り!感涙)を持たせてくれるのが本当に嬉しくて、嬉しくて、もう絶対に彼女と結婚すると決めていた。
彼女は実家に住んでおり、デートの帰りはいつも玄関まで送るのが暗黙のルールになっていた。
結婚が前提な俺としては、慎重に慎重に進めたかったので、どんなに遅くても22時には、彼女を実家に送り届けてご両親に『誠実さ』アピールをしていた。
それに、比較的早い時間に送り届けた時は、ご挨拶もさせていただいた。
「藤原 武人と申します。貴美子さんとは会社の同僚でして、今後ともよろしくお願い致します。」
「藤原さんは、事業推進課の課長補佐をしている人なんだよ。
今日は、宇都宮までギョーザを食べにいったの。おみやげも買ってきたからね」
「まあ、わざわざ。貴美子の母です。」
「貴美子の父です。」
彼女から、俺のことを聞いているかどうかは分からないけれど、『同じホテル』『30前後で事業推進課 課長補佐』『藤原』で俺の身元保証が少しでも担保できれば良かった。
お義父さんの方は気がついたみたいで、俺をマジマジと見つめていた。
内心ガッツポーズを取りながら、頭を下げておいとました。