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第六百十七話 鷺基の苦悩編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるために西を目指しています。
鷺侘の元を去った鷺基は当てもなく彷徨っていました。
(俺は本当は誰なんだ?)
自分の正体に疑問を感じる鷺基です。
『お懐かしゅうございます、父御』
どこからともなく声が聞こえます。
「何奴!?」
鷺基は周囲を見渡しました。
『貴方の息子、世無蛾屡弩でございます』
「何!?」
鷺基は仰天しました。
『貴方は闇の王なのです。我らと共に光の眷族を討ちましょうぞ』
世無蛾屡弩の声が言います。
「姉上と戦えと言うのか?」
『いえ。欧殿は我らが同志』
世無蛾屡弩の声は更に囁きます。
「欧殿様が同志だと!?」
鷺基は目を見開きました。
『そうです。我らが敵は御徒町樹里一行。倒すべき相手です』
「バカな……」
鷺基は鷺侘が心配になりました。
その頃、孫左京達は確実に欧殿の宮殿に近づいていました。
「面妖だ。これ以上近づかぬ方が良い」
太上老君が言いました。