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第六百十話 欧殿、衝撃の事実を話す編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるために西を目指しています。
欧殿は鷺侘を近くに呼び、声を低くして言いました。
「我を殺めた者は狼の王であるが、その父がわかった」
「父、ですか?」
鷺侘はキョトンとしました。欧殿は更に声を落として、
「狼の王の父は、其方の弟の鷺基だ」
鷺侘は仰天しました。
「何と仰せです、欧殿様?」
鷺侘は何を言われたのかわかりませんでした。
「鷺基は元々お前とは姉弟ではない事は存じておろう?」
欧殿は言いました。鷺侘は頷いて、
「はい。戦場で一人佇んでいた幼子。我が父が家に連れて帰り我が弟となりました」
欧殿も頷いて、
「鷺基は自分の名を覚えていたのみで記憶を失っていた。その理由がわかったのだ」
「理由?」
鷺侘はドキッとします。
「鷺基はその昔、我と戦った巨神族の一人。戦に敗れ幼児化して記憶を失っていたのだ」
欧殿の言葉に唖然とする鷺侘です。
「そんな……」
鷺侘は欧殿の話が信じられません。