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第三十二話 鉄扇公主編
御徒町樹里はありがたい教典を授かるために旅をしています。
樹里達が山岳地帯に入ると辺りが異常に暑くなって来ました。
石猿の左京は暑いのには強いのですが、他の者達が倒れそうです。
「もうダメ、この暑さ……」
河童の蘭は目が虚ろです。
「私もダメ……」
豚の妖怪亜梨沙もフラフラです。
馬の馨もヒーヒー言っています。
「お師匠様は暑くないんですか?」
左京は樹里を見上げました。
「全然暑くないです」
樹里は笑顔です。
「流石お師匠様だ。俺達とは違う」
「そうなんですか」
左京は、
「暑さの原因はあれだな」
と天空を見上げました。
溶岩を噴き出す火焔山が周囲を灼熱地獄にしているのです。
「鉄扇公主が持っている扇であの山を鎮められるらしい」
左京が言うと亜梨沙が、
「だったら早くそれを借りて来てよ、左京」
「でも、相手は牛魔王の女房なんだぜ」
「牛魔王?」
亜梨沙と蘭が驚愕します。
「その牛魔王が頭が上がらないんだからな」
左京は溜息を吐きました。