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第二百四話 部秘模洲の棲む山編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるために西を目指しています。
樹里達は、巨大な魔物である霊媚阿壇と部秘模洲の娘である美子の案内で、湖の反対側にある高い山へと入りました。
「何が何だかわからないんですけど」
霊媚阿壇に操られていた蘭と亜梨沙は事情がわからないまま山を登っています。
「この山の向こうに父がいます」
美子が言いました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開で応じます。
「もう一歩も歩けないにゃん」
リックがフラフラします。
「大丈夫?」
美子が心配して声をかけると、
「気をつけてね。そいつは女と見れば見境なく襲いかかるから」
蘭が警告します。リックが小さく舌打ちしたのを馨は聞き逃しませんでした。
やがて樹里達は尾根に出ました。
山の向こうに更に大きな山が見えます。
「父さん、いる?」
美子が声をかけると、遠くの山が動きました。
「山が動いた!」
亜梨沙が涙ぐんで孫左京に抱きつきます。