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第百九十八話 勝負にならない編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるために西を目指しています。
樹里達の前に遂に湖の魔物である霊媚阿壇が現れました。
「お師匠様を生け贄だと? ふざけるな! 一昨日来やがれ!」
孫左京は如意棒を伸ばし、霊媚阿壇を突きました。
「空の果てまで吹っ飛べ!」
更に如意棒を伸ばします。
「うわわ!」
ところが霊媚阿壇は微動だにせず、左京が如意棒と共に地面にめり込みます。
「ぐ……。バカな……」
左京は慌てて如意棒を縮めます。
「愚か者。我はこの世と同じ重さ。この世を動かせる者にしか我は動かせぬ」
霊媚阿壇がニヤリとしました。鯨の姿なので、その顔は強烈です。
「猿如き我が動くまでもなし。我が僕で十分」
「しもべ?」
左京はギクッとしました。霊媚阿壇の背中にいた亜梨沙と蘭が起き上がったのです。
「行け、我が僕よ」
亜梨沙と蘭は霊媚阿壇から飛び降り、左京に突進します。
「やめろ、二人共!」
左京は蘭と亜梨沙に叫びました。