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第百九十七話 霊媚阿壇現る編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるために西を目指しています。
湖に突然高波が起こり、蘭と亜梨沙が呑まれてしまいました。
「くそ!」
孫左京はリックを救い、
「馨、逃げろ!」
と叫びます。
「水なら任せて下さい!」
馨は樹里を乗せたまま龍に変化し、高波を押し返します。
「あの子がいないにゃん」
リックが言いました。左京がハッとして辺りを見回すと、美子の姿が消えていました。
「波にさらわれたのか?」
左京は訝しそうな顔です。
「さ、左京さん!」
馨の怯えた声を聞き、左京は振り返りました。
そこには、天にも届きそうな巨大な鯨のような魔物がいました。
魔物は湖から浮かび上がり浮遊しています。
その背中で蘭と亜梨沙が気絶しているのが見えました。
「誰だ、てめえは!?」
左京が怒鳴ります。その魔物は、
「我が名は霊媚阿壇。湖の守り神なり。その坊主を我が生け贄として差し出せ」
と言いました。
「そうなんですか」
樹里は笑顔全開です。