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第百四十五話 孫右京再び編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるために西を目指しています。
樹里達は峠を登っている途中で小さな街に入りました。
「これより先、宿屋ありません」
その看板を見て前世の嫌な記憶が甦る孫左京です。
「ボッタクリの店があるぞ、ここ」
彼は亜梨沙に囁きました。それを見てムッとする蘭、更にそれを見て悲しそうな顔になる馨です。
「取り敢えず、良心的な宿を探して来ます」
左京が走り出します。
「ああん、左京、私も行くゥ」
「あんたはここでお師匠様を守るの!」
蘭が引き止めます。
「何よ、無駄に巨乳!」
「あんたに言われたくないわ!」
また醜い罵り合いが始まります。
その時でした。
「おやおや、また仲間同士で喧嘩ですか? いけませんねえ」
非常に穏やかで品のある声がしました。
「声に貧がありますね」
樹里が言います。
「貧ではなく品ですよ、お坊様」
現れたのは虎大王をあっさりと始末した孫右京と名乗った猿です。
右京は感情不明の笑みを浮かべています。