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第百十話 羊の妖怪編
御徒町樹里はありがたい経典を授かるために西を目指しています。
樹里達が訪れたのは山の麓に長閑な牧草地が広がる国です。
「ペーターは元気ですかね」
樹里が笑顔で言います。
「それ、お話が違います」
孫左京は仕方なく突っ込みます。
先日の「事故」以来左京は樹里をまともに見られないのです。
そのせいで亜梨沙はご機嫌斜めです。
「左京め!」
猫のリックは亜梨沙の八つ当たりでボコボコです。
「酷いにゃん」
でもMっ気があるリックは快感を覚え始めています。
「お坊様」
そこへ男が走って来ました。
「何者!?」
蘭が前に出て尋ねます。その男は、
「羊の化け物が出るんです。お助け下せえ」
と泣きながら言いました。
男は村の青年団の団長です。
夜になると羊の妖怪が現れて家畜を逃がしてしまうそうです。
「夜を待って妖怪退治だ」
左京は樹里を見ないで言いました。
「クロちゃんは元気ですか?」
樹里が尋ねます。
「その団長じゃないです!」
団長はムッとしました。