夫4
「飲み会があるんだけど、来ない?」
俺は酒が苦手なのだが、由里子に誘われて嫌とは言えない。
雅樹と共に居酒屋での飲み会に参加した。
「ビール頼んだ人ー!」
「唐揚げ来たよ!」
由里子はよく気が付く女だ。
彼女の周りには、男も女も寄って来る。
少し嫉妬しながら由里子の横顔を見ていると、不意に目が合い慌てる。
「おかわりは?」
「あ、じゃあ、ウーロン茶を―――――」
「駄目よ、飲み会なのにお茶ばっかり!ちょっとだけ飲も」
そう言って、由里子は勝手に酒を注文した。
「甘ーいカクテルなら、飲めるよ。社会人になったら、お付き合いで飲む事もあるんだから、練習、練習!」
由里子がコップを俺の唇に当てる。
流れてくる甘い匂いと味、それと由里子の笑顔に、俺はクラクラとした。
「飲めるじゃない!ほらほら、もっと飲・ん・で」
由里子も酔っているのだろうか?
いつもより更に明るい様子に、俺もなんだか笑いがこみあげてきた。
「やだ!笑い上戸?」
由里子のケラケラと笑う声を最後に、俺の記憶は無くなった・・・。
小さな話し声で目が覚めた。
頭がガンガンと痛む。
朦朧としながら辺りを見回すと、ワンルームの狭い部屋の床に、俺は寝ていた。
ここは見覚えがある・・・。
ああ、そうか、由里子の部屋だ。
酔った俺を、雅樹が運んでくれたんだな。
そういえば先程から聞こえる声も、雅樹と由里子のものだ。
痛む頭に眉を顰めながら起き上がろうとした時、二人の会話がはっきりと耳に入った。
「ねえ、早く。もう我慢出来ない」
「でもなあ、篤が居るだろ。今日はマズいって」
「大丈夫よ。起きないって。それにバレたら別れるからいいよ。そろそろ純情ごっこも飽きてたし」
「おい・・・」
「三年近くも付き合ってあげたんだから、感謝して欲しいな。それより早くぅ」
・・・二人は何を話している?
俺の寝ている横の、ベッドの上で、二人は何をしている・・・?
由里子の喘ぐ声と、雅樹の荒い息遣い。
俺は身動き一つ、する事が出来なかった。