表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錯覚  作者: 手絞り薬味
6/47

夫4

「飲み会があるんだけど、来ない?」


 俺は酒が苦手なのだが、由里子に誘われて嫌とは言えない。

 雅樹と共に居酒屋での飲み会に参加した。


「ビール頼んだ人ー!」

「唐揚げ来たよ!」


 由里子はよく気が付く女だ。

 彼女の周りには、男も女も寄って来る。

 少し嫉妬しながら由里子の横顔を見ていると、不意に目が合い慌てる。

「おかわりは?」

「あ、じゃあ、ウーロン茶を―――――」

「駄目よ、飲み会なのにお茶ばっかり!ちょっとだけ飲も」

 そう言って、由里子は勝手に酒を注文した。

「甘ーいカクテルなら、飲めるよ。社会人になったら、お付き合いで飲む事もあるんだから、練習、練習!」

 由里子がコップを俺の唇に当てる。

 流れてくる甘い匂いと味、それと由里子の笑顔に、俺はクラクラとした。

「飲めるじゃない!ほらほら、もっと飲・ん・で」

 由里子も酔っているのだろうか?

 いつもより更に明るい様子に、俺もなんだか笑いがこみあげてきた。

「やだ!笑い上戸?」

 由里子のケラケラと笑う声を最後に、俺の記憶は無くなった・・・。





 小さな話し声で目が覚めた。

 頭がガンガンと痛む。

 朦朧としながら辺りを見回すと、ワンルームの狭い部屋の床に、俺は寝ていた。

 ここは見覚えがある・・・。

 ああ、そうか、由里子の部屋だ。

 酔った俺を、雅樹が運んでくれたんだな。

 そういえば先程から聞こえる声も、雅樹と由里子のものだ。

 痛む頭に眉を顰めながら起き上がろうとした時、二人の会話がはっきりと耳に入った。


「ねえ、早く。もう我慢出来ない」

「でもなあ、篤が居るだろ。今日はマズいって」

「大丈夫よ。起きないって。それにバレたら別れるからいいよ。そろそろ純情ごっこも飽きてたし」

「おい・・・」

「三年近くも付き合ってあげたんだから、感謝して欲しいな。それより早くぅ」


 ・・・二人は何を話している?

 俺の寝ている横の、ベッドの上で、二人は何をしている・・・?


 由里子の喘ぐ声と、雅樹の荒い息遣い。


 俺は身動き一つ、する事が出来なかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ