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錯覚  作者: 手絞り薬味
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夫最終話

 思えばこんなふうに由香里とデートした事は無かったな。

 週末の観光スポットは人で溢れていた。

 由香里と手を繋ぎ、ゆっくりと歩く。

 昨日、俺の目の前で由香里は写真を破った。

 細かく、細かく。

 由香里の嫉妬の深さがよく分かり、小さなゴミの山を見ていると言い知れぬ快感が身体を突き抜けた。

 由香里が繋ぐ手に力を込める。

 ああ、そうだ。


「由香里、写真撮ろうか」


「写真・・・?」

 ズボンのポケットからカメラを取り出す。

「それ・・・」

「ん?カメラがどうかしたか?」

 由香里が首を横に振ったので、俺は近くにいた人にカメラを渡して写真を撮って欲しいと頼んだ。

「由香里」

 並んで立ち、肩を抱く。


「撮りますよー!」


 カメラを構えた若い男が大きな声で言う。

 撮り終えた写真を確認して、俺は男にお礼を言った。

 笑う俺と由香里が綺麗に撮れている。

「ねぇ」

 由香里は俺の腕に自分の腕を絡ませる。

「その写真、部屋に飾りたいな」

 可愛いおねだり。 

「ああ」

 勿論いいよ、由香里。




 大型スーパーで買い物をして、俺達は家に帰る。

 買ってきた物を鼻歌まじりに次々に冷蔵庫に詰め込む可愛い由香里。

 俺は由香里を後ろから抱きしめた。


「由香里・・・」


 ベッドに行こうか。


 由香里の口元が綻ぶ。

 寝室に行き、俺達は見つめ合う。


「愛してる」


「私も・・・愛してる」


 由香里は俺の首に腕を絡ませ顔を寄せる。

 明るい日差しの下、俺達は愛し合った。





 由香里が熟睡しているのを確認し、俺はそっとベッドから出る。

 掛け布団を捲って由香里の全裸を見える状態にして、先程脱いだズボンのポケットからデジカメを取り出した。


 パシャ、パシャ。


 数枚写真を撮ると、由香里に掛け布団をかけて俺は自室へと向かう。

 椅子に座ってパソコンの電源を入れ、パスワードを入力する。


 現れる、ランドセルを背負った少女―――――まだあどけない小学生の由香里。


 なんて可愛い俺の妻。

 俺は保存してあった画像を表示していく。

 友達と遊ぶ由香里、スクール水着の由香里、運動会、セーラー服、合唱コンクール、卒業式、受験、学園祭、遠足に修学旅行、笑う由香里、落ち込む由香里、初めて・・・初めて俺と繋がった日の由香里。

 可愛い由香里から綺麗な由香里まで沢山の由香里―――――。

 由里子の写真が無くなってしまったのは少し残念に思うが、写真なんていくらでも撮れる。


 由香里と由香里の中の由里子と俺との写真が。


 デジカメからパソコンにデータを移し、俺は寝室に戻る。

 ベッドの中に潜り込むと由香里が薄く目を開けた。


「あなた・・・?」


 抱きしめると微笑み、再び眠る無防備な由香里。

 ああ、俺が守るよ。


 愛してる。由香里、由里子。


 俺は由香里の温もりを感じながら目を閉じた。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


お気に入り登録・評価して下さった方々ありがとうございました。


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